2022-01-01から1年間の記事一覧
今年1年間で読んだ本は125冊と少な目だった。とても良かったと思った本が22冊、こりゃ駄目だと思ったのが4冊。駄目な本が4冊と少ないのは、元々良さそうな本を選んで読んでいるからだ。それらを読んだ順に挙げてみる。 まずとても良かった本を、 『この国…
大岡昇平『成城だより』(中公文庫)を読む。「作家の日記」が併録されている。「成城だより」は1979年11月から1980年10月までの1年間の日記。「作家の日記」は1957年11月から1958年4月までの日記。『成城だより』はこの後も『成城だよりⅡ』『成城だよりⅢ』…
山本弘「ばら」、油彩、F8号(45.5cm×37.8cm) 1966年5月制作、山本34歳のときの作品。やや初期に属する。裏面に名刺が貼付されていて、¥16,000とあるから16,000円で販売したらしい。現在の貨幣価値では5倍として8万円になる。 晩年の作品と違って分かり…
筑摩書房のPR誌『ちくま』に「優れた建築家は優れた人間観察者」というタイトルのエッセイで、藤山和久が自著の『建築家は住まいの何を設計しているのか』(筑摩書房)を紹介している。 電力会社各社は膨大な広告費を投じて、オール電化住宅の普及キャンペー…
東京六本木の国立新美術館で「DOMAN・明日展 2022-23」が開かれている(2023年1月29日まで)。私は半月前に見てきた。今年のDOMANI・明日展は総じて低調であまり評価できるものではなかった。全体に平面作品がふるわなくて、立体作品に良いものが多かった。…
読売新聞年末恒例の“書評委員が選ぶ「2022年の3冊」”が掲載されている(12月25日付け)。書評委員20人が今年出合った「これぞと思う3冊」を挙げている。その中から気になったものを拾ってみる。 *春暮康一『法治の獣』(ハヤカワ文庫) 小川哲・選 本書は…
年末恒例の朝日新聞書評委員が選ぶ「今年の3点」から、気になったものを拾った。 毎日新聞の今年の「この3点」でも2人の書評委員が選んでいた『地図と拳』、朝日新聞でも2人が選んでいる。 *小川哲『地図と拳』(集英社) 澤田瞳子・選 歴史上、十数年だ…
大岡昇平『成城だより』(中公文庫)を読んでいると、表題の言葉があった。 伊藤堅吉編著『河口湖周辺の伝説と民俗』(緑星社)から引用している。 なお浅川には姥捨伝説あり。60歳以上の老人は、進んで山へ行くという。深沢氏の『楢山節考』を想起す。 婚姻…
三島由紀夫『作家論』(中公文庫)を読む。三島が『日本の文學』『日本文学全集』『新潮日本文学』『川端康成全集』『現代の文學』の解説として書いたもの。ただ林房雄論のみ雑誌『新潮』に掲載したもので最も力が入っている。本文庫の3分の1、80ページを…
東京高円寺のポルトリブレ デ・ノーヴォで「歳末蚤の市2022」が開かれている(12月27日まで)。ポルトリブレは高円寺の住宅街の中にある小さなギャラリーである。画廊主の版画家・画家である平井勝正さんの自宅を兼ねている。一見普通の住宅のたたずまいなの…
北村皆雄が「金子兜太の語った井月と、山頭火、一茶」で金子兜太の山頭火への厳しい評価を紹介している(『図書』2022年12月号)。 俳人井月(せいげつ、1822-1887)と言っても知らない人の方が多いだろう。信州では北の一茶、南の井月と言われてきたが、知…
毎日新聞年末恒例の今年の「この3冊」が発表された。書評委員が年間で最も良かったと挙げた3冊だ。その内私が印象に残ったものを拾ってみた。 *鷲見洋一『編集者ディドロ:仲間と歩く「百科全書」の森』(平凡社) 本書は3人が選んでいる。 辻原登・選 …
1976年9月の山本弘個展にカミさんと二人で参加した。その時、山本さんが奥さんの愛子さんにDVを働いた。東京へ帰ったあと、カミさんが愛子さんに手紙を書き、弘さんのDVを批難した。間もなく弘さんから手紙が来て、それはカミさんへの絶交状だった。 人間と…
東京亀戸の亀戸石井神社を10年ぶりに再訪した。この石井神社は小さな神社だが、実は東京でも最も古い神社に属する。もともとは石棒を祀っていたが、早くに石棒は失われて今はもうない。 地元では、おしゃもじ稲荷と呼び、咳を直す神として知られている。昔神…
東京京橋のギャラリーなつかとクロスビューアーツで高浜利也展「いえあつめ」が開かれている(12月24日まで)。高浜は1966年兵庫県姫路市生まれ、1988年武蔵野美術大学を卒業し、1990年に武蔵野美術大学大学院修士課程を修了している。1998年からタイ国立大…
千野栄一『ビールと古本のプラハ』(白水社uブックス)を読む。千野は先日読んだ『言語学を学ぶ』https://mmpolo.hatenadiary.com/entry/2022/12/04/205950 の著者。若いころチェコスロバキアに9年間留学している。そのチェコの首都プラハの美味しいビール…
東京銀座のギャラリーゴトウで森本秀樹展「冬めく景」が開かれている(12月17日まで)。森本は1951年、愛媛県宇和島出身。ギャラリー汲美をはじめ、ギャラリーゴトウ、小田急デパートなどで数多くの個展を行っている。今年5月にもここで個展を開いたばかり…
濵田恂子『入門 近代日本思想史』(ちくま学芸文庫)を読む。「本書は国内外の状況が目まぐるしく変わっていく時代、19世紀後半から20世紀末にいたる歴史に足跡を残した哲学者・思想家たちの主要著作と思索のエッセンスを紹介。(……)日本の哲学思想史を概観…
東京吾妻橋のギャラリーアビアントで山崎万亀子展が開かれている(12月17日まで)。山崎は70代後半のベテラン画家。ギャラリー汲美の磯良氏に気に入られて汲美で何度も個展を開いてきた。ここアビアントではコロナもあって5年ぶりになる。もっとも住んでいる…
東京目白のギャラリールヴァンで若宮綾子×タナベルン展が開かれている(12月10日まで)。若宮とタナベは母娘だと知った。若宮は神奈川県横浜生まれ、1989年女子美術大学芸術学部洋画科油絵専攻卒業、1990年同大学芸術学部研究課程を修了している。1993年に藍…
上野公園の一角に著名人の手形がある。人によって大きさや形が違っている。 渥美清 サインは何か素朴っぽい 衣笠祥雄 指も太くさすが立派な手だ 王貞治 きれいな形だ 九重貢(千代の富士) しっかりした手だ 古賀政男 指が短い 高橋尚子 親指の位置がずれて…
本間ひろむ「日本のピアニスト」(光文社新書)を読む。類書に多い日本のピアニストを紹介するのではなく、明治以降の日本人によるピアノ開発の歴史を描き、それと関連して日本人のピアニストの歴史が語られている。 最初の日本人ピアニストは幸田露伴の妹の…
東京京橋のギャラリー檜Fでシマヅヨウ彫刻展「鎖の感じ」が開かれている(12月10日まで)。シマヅは1962年兵庫県生まれ、1986年に武蔵野美術短期大学専攻科を修了している。1986年より個展を続けているという。最近は毎年ここギャラリー檜Fで開いている。 今…
東京京橋のギャラリー川船で「歳末入札展示会」が始まった(12月10日まで)。 入札の方式は「二枚札方式」、これは入札カードに上値(上限)と下値(下限)の二つの価格を書いて入札するもの。他に入札者のない場合は下値で落札する。上値が同額の場合には下…
千野栄一『言語学を学ぶ』(ちくま学芸文庫)を読む。本書は「言語学へのいざない」と「近代言語学を築いた人々」からなっている。その「言語学へのいざない」は三省堂のPR誌『ぶっくれっと』に1984年から1986年に連載されたもの。当時『ぶっくれっと』を愛…
布施英利『現代アートはすごい』(ポプラ新書)を読む。副題が「デュシャンから最果タヒまで」というもの。実際は現代アート入門書といったところか。初心者に対してはよくできている。 デュシャンの便器の作品「泉」について。小学校の図工の授業で先生が「…
東京両国のアート トレース ギャラリーで中谷真理子展「#1つしかない答えなんかない」が開かれている(12月11日まで)。中谷は神奈川県出身、1992年東京藝術大学美術学部デザイン科卒業、2020年にもこのギャラリーで個展を開いている。 ギャラリーのホーム…
群馬県安中市のミュゼ MATSUIDAで柴田和展が始まった(12月15日まで)。柴田は1934年生まれ、帝国美術学校(武蔵野美術大学の前身)を卒業。1960年代、美術グループ乱立の時代はネオ・ダダのメンバーらとも一緒に活動していた。1963年、最後の読売アンデパン…
東京銀座の養清堂画廊で渋谷和良展が開かれている(12月10日まで)。渋谷は1958年東京生まれ、1981年に東京藝術大学美術学部油画科を卒業し、1983年に同大学大学院美術研究科版画専攻修士課程を修了している。2002年から1年間、文化庁在外派遣研修員としてド…
東京京橋のギャラリーなつかで胡羽恬展「花の遊吟」が開かれている(12月3日まで)。胡羽恬は1994年中国浙江省杭州市生まれ、2016年に景徳鎮陶磁大学陶芸コースを卒業し、現在金沢美術工芸大学大学院博士後期課程陶磁分野に在学中。2021年ギャラリーQで初個…