東京京橋のギャラリーなつかとクロスビューアーツで高浜利也展「いえあつめ」が開かれている(12月24日まで)。高浜は1966年兵庫県姫路市生まれ、1988年武蔵野美術大学を卒業し、1990年に武蔵野美術大学大学院修士課程を修了している。1998年からタイ国立大学に脚韻研究員として滞在した。
今回の展示についてなつかのホームページにテキストが載っている。
毎夏、継続してきたもののコロナ禍以降、実現出来ていない落石(おちいし)計画でのサイトスペシフィックなインスタレーション、『対話空間(=銅版の茶室)』の現地制作で積み上げられるはずであった石膏刷り銅版画(10cm角の立方体)を、紙に刷るという通常の手法で制作したうえで、ギャラリー空間に構成、展示する。
今回、北海道根室市落石岬の現地に石膏キューブを積み上げて朽ちさせるのではなく、ギャラリーというホワイトキューブにそれらの銅版画を展開するにあたって、多色刷りによるイリュージョンに依拠し、辺境の霧の中で銅が豊かに朽ちていくありさまを版画工房で想像、感応しながら制作した。来夏、落石計画は再開予定であり、これら紙に刷った銅版画作品も現地に展示する予定。
高浜は北海道の落石地区で落石(おちいし)計画を実行している。そのことについて、4年前のなつかの個展で書いている。
すべてのものは朽ちてゆく。旧落石無線送信所跡で毎夏、『銅版の茶室』として積み上げられた銅版画(石膏キューブ)は年間を通して落石岬の過酷な気象条件に晒され、つくるそばから朽ちはじめ風化が始まる。その現実を受け入れながら、さらに石膏キューブを積み上げる。つくる、くちる、つくる、の繰り返し。強酸性の腐食液によって強制的に銅を朽ちさせながら絵をつくっていく銅版画のプロセス同様、この地では塩分を含んだ深い霧に包まれながらすべてのものが等しく、加速度的に朽ちてゆくのである。風化した銅版画の上に、さらに積み上げ続けられる新たな銅版画。本展は朽ちることの象徴としての銅版画をテーマに、2012年に開催された『落石計画第5期 銅版画試論―つくること、ゆだねること― 』の続編として位置づけ、現場でつくりながら、あらためてふたりにとっての銅版画の在り方を問うものである。
高浜の落石計画は10年以上続いているのではないか。持続する志という言葉を思い出す。
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高浜利也展‐いえあつめ‐
2022年12月5日(月)-12月24日(土)
11:30-18:30(土曜日17:00まで)日曜休廊
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ギャラリーなつか
クロスビューアーツ
東京都中央区京橋3-4-2 フォーチュンビル1F
電話03-6265-1889