2015-02-01から1ヶ月間の記事一覧

織田作之助『夫婦善哉』を読んで、そして河野多恵子

ドナルド・キーン『日本文学史 近代現代篇五』(中公文庫)の「太宰治と無頼派」の項で、キーンが織田作之助について書いていた。 『堕落論』で知られる坂口安吾は、太宰ほど広く信奉者を持たなかったが、やはり同じ系統の読者達に受けた。織田作之助は、太…

前衛歌人の岡井隆が転向について語っている

朝日新聞夕刊の連載コラム「人生の贈りもの」で岡井隆が自分の転向について語っている(2月26日)。この連載コラムは著名人に自伝的なことを語らせるというもので、この日は岡井隆の9回目の語りになる。 (前略) −−かつてのマルキストが、どのようにして…

深沢七郎『言わなければよかったのに日記』を読む

深沢七郎『言わなければよかったのに日記』(中公文庫)を読む。はじめ、こんなに面白そうな作品をどうして今まで読まなかったんだろうと思った。読み始めて2ページ目で以前読んだことを思い出した。読んだことは思い出したが、内容は思い出せなかった。調…

「K392 アートマーケットVol.3」が始まった

東京京橋のK392ギャラリーでアートマーケットが開かれている(3月6日まで)。この企画はK'sギャラリーが主催して、作家やコレクターに呼びかけ、現代アートやあまり知られていない作家の作品、また人気作家の作品が手頃な価格で購入できることを目的として…

ギャラリー銀座フォレストの立澤香織個展「Portrait5」を見る

東京銀座のギャラリー銀座フォレストで立澤香織個展「Portrait5」が開かれている(2月28日まで)。立澤は1986年福島県生まれ、女子美術大学を卒業している。2011年にギャラリー銀座フォレスト・ミニで初個展をしている。その後このフォレストでの個展は今回…

「K392 アートマーケットVol.3」が始まる

東京京橋のK392ギャラリーのアートマーケットが明日24日から始まる(3月6日まで)。この企画はK'sギャラリーが主催して、作家やコレクターに呼びかけ、現代アートやあまり知られていない作家の作品、また人気作家の作品が手頃な価格で購入できることを目的…

シロバナタンポポの開花と二日月

2月16日にベランダの鉢植えのシロバナタンポポが咲いた。10年以上前にどこかの庭園の株から勝手に採種して播種し、それが毎年花を咲かせている。シロバナタンポポは露地で環境が良いと根が深く地中に伸び、太いものでは根の直径が5センチにもなるという。…

ポーラ ミュージアム アネックスで山本基展を見る

東京銀座のポーラ ミュージアム アネックスで山本基展が開かれている(3月1日まで)。山本は1966年広島県尾道市生まれ。1995年金沢美術工芸大学を卒業している。 ギャラリーで配布されるちらしから、 浄化や清めを喚起させる「塩」を用いてインスタレーシ…

金井美恵子のエッセイ『待つこと、忘れること?』を読んで

金井美恵子『待つこと、忘れること?』(平凡社)を読む。平凡社発行のいくつかの雑誌に連載した料理に関するエッセイをまとめたもの。いくつかの雑誌というのは、『ヴィオラ』『太陽』『月刊百科』などで、それぞれが休刊(=廃刊)になったため別の雑誌に…

吉行淳之介『女をめぐる断想』と『私の東京物語』を読む

吉行淳之介『女をめぐる断想』(角川春樹事務所)と『私の東京物語』(実業の日本社)を続けて読む。前者は吉行が亡くなったあと編集された。後者は存命中に山本容朗によって編集され、有楽出版社が発行し実業の日本社が発売している。 『女をめぐる断想』は…

『言葉なんかおぼえるんじゃなかった』を読んで

田村隆一(語り)・長薗安浩(文)『言葉なんかおぼえるんじゃなかった』(ちくま文庫)を読む。雑誌『ダ・ヴィンチ』に連載したものをメディアファクトリーから『詩人からの伝言』として単行本化し、それに田村隆一の詩を加えて文庫化したものだという。同…

『斜陽』と『エーゲ海に捧ぐ』を読んで

太宰治『斜陽』(新潮文庫)を読む。これはどこかで読んだ作品に似ていると考えて、それは池田満寿夫だった。付き合って捨てた女がくどくど訴えかける構図が似ているような気がした。それで池田満寿夫『エーゲ海に捧ぐ』(中公文庫)を読み直した。単行本の…

資生堂ギャラリーの飯嶋桃代展

東京銀座の資生堂ギャラリーで飯嶋桃代展が開かれている(3月1日まで)。これは第9回shiseido art eggという公募制のプログラムだ。今年は340件の応募があり、その中から選ばれた3人が個展形式で発表している、飯嶋はその2人めだ。 飯嶋は1982年、神奈…

ようやくシモバシラに霜柱が発生した

先日ようやくシモバシラの霜柱が発生して撮影することができた。前夜の天気予報で、翌日2月9日の最低気温が東京23区で−1℃と発表された。その朝、期待して公園へ向かった。もう小父さんたちが来ている。小さいが霜柱ができていた。仲間に入れてもらって交…

『その女アレックス』に圧倒される

ミステリ好きの友人がピエール・ルメートル『その女アレックス』(文春文庫)を面白いからと貸してくれた。帯の惹句を読むと、「1位全制覇。史上初の6冠」と謳っている。その6冠を具体的に見ると、 「このミステリーがすごい! 2015年版」(宝島社) 「週…

ギャラリイKの「1985−90年の作品による・内海信彦展」がすばらしい

東京京橋のギャラリイKで「1985−90年の作品による・内海信彦展」が開かれている(2月14日まで)。内海は1953年、東京都出身。1974年慶応義塾大学法学部政治学科中退、1975年美学校中村宏油彩画工房修了、1981年多摩美術大学絵画科油画専攻卒業。ペルー国立…

みゆき画廊の酒匂譲個展は見逃せない

東京銀座のみゆき画廊で酒匂譲個展が開かれている(2月14日まで)。酒匂は1930年鹿児島県生まれ、1953年に東京藝術大学油絵科を卒業し、1955年に同専攻科を終了している。はじめサヱグサ画廊で個展を開いた後、パリで個展をし、1976年からはこのみゆき画廊…

ギャラリーQの八木緑日里展が興味深い

東京銀座のギャラリーQで八木緑日里展が開かれている(2月14日まで)。八木は1989年東京都生まれ、現在女子美術大学大学院修士課程工芸〔陶〕研究領域に在籍中。今回が初個展となる。緑日里は「みかり」と読む。 八木は陶で大きな山羊を作っている。メイン…

秋山画廊の遠藤利克展「空洞説−円い沼」を見る

東京千駄ヶ谷の秋山画廊で遠藤利克展「空洞説−円い沼」が開かれている(2月28日まで)。遠藤は1950年岐阜県高山市生まれ、1972年名古屋造形芸術短期大学彫刻科卒業。今までドクメンタやベネチア・ビエンナーレに出品している。1975年ルナミ画廊で初個展、そ…

山口晃と和田誠の描写力を比較する

毎日新聞の日曜日書評欄に「この3冊」という連載がある。毎回別の評者が、一つのテーマについて3冊の本を推薦するという企画だ。2月1日は美術評論家の山下裕二が先に亡くなった美術家赤瀬川原平を知るための3冊を挙げている。「(……)驚くほど多面的な…

金井美恵子自選短篇集『砂の粒・孤独な場所で』を読む

金井美恵子自選短篇集『砂の粒・孤独な場所で』(講談社文芸文庫)を読む。金井の短篇はストーリー性があまりない。句点の少ない長い構文で複雑で詳しい描写が続く。物語性が希薄だ。解説の磯崎憲一郎が書いている。 磯崎は、「ここ二、三年というもの、自分…

タリオン・ギャラリーで友政麻理子作品「近づきすぎてはいけない」を見る

東京目白のタリオン・ギャラリーTALION/GALLERYで友政麻理子の映像作品「近づきすぎてはいけない」が公開されている(2月8日まで)。友政は1981年東京生まれ、2004年に東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻を卒業し、2007年に同大学大学院美術絵画専攻を修…

会田誠の尾形光琳論

会田誠が『ギャラリー』の巻頭インタビューで光琳について興味深いことを語っている(2015年2月号)。 −− 2月にはMOA美術館で開催される「光琳アート −光琳と現代美術−」に、旧作が3点展示されます。尾形光琳も作品の参考にしたことはあるのでしょうか。 …

細見和之『フランクフルト学派』を読んで

細見和之『フランクフルト学派』(中公新書)を読む。ドイツのワイマール時代にフランクフルトに設立された社会研究所、そこに結集したホルクハイマー、アドルノ、ベンヤミン、フロム、マルクーゼたちをフランクフルト学派といった。多くがユダヤ人知識人で…

ギャルリー東京ユマニテで小笠原森展を見る

東京京橋のギャルリー東京ユマニテで小笠原森展が開かれている(2月7日まで)。これがとても良かった。小笠原は1978年東京都生まれ、2003年に多摩美術大学工芸学科陶プログラムを卒業し、2005年に同大学大学院美術研究科工芸を修了、2009年まで同大学陶研…

巷房2の中川るな展「無境界の棚」を見る

東京銀座のギャラリー巷房2で中川るな展「無境界の棚」が開かれている(2月7日まで)。中川は1981年女子美術大学を卒業し、1993年には多摩美術大学大学院を修了している。1989年に銀座のGアートギャラリーで初個展、以後ギャラリー山口やギャラリーアリエ…

ドナルド・キーン『日本文学史 近代・現代篇五』を読む

ドナルド・キーン『日本文学史 近代・現代篇五』(中公文庫)を読む。本書は「私小説・戦争文学・太宰治と無頼派」を扱っている。キーンが英文で書いた日本文学史、つまり英米の読者を対象にしている。だから記述はていねいで、とても分かりやすい。 私小説…