2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ショーペンハウアー『読書について』を読んで

ショーペンハウアー/鈴木芳子・訳『読書について』(光文社古典新訳文庫)を読む。詩人の荒川洋治が高く評価していたから(毎日新聞 2013年8月11日)。荒川の書評より、 「本を読むとは、自分の頭ではなく、他人の頭で考えることだ。たえず本を読んでいる…

コバヤシ画廊の飯嶋桃代展が興味深い

東京銀座のコバヤシ画廊で飯嶋桃代展「fomat-B」が開かれている(11月2日まで)。飯嶋は1982年、神奈川県生まれ。2006年に女子美術大学美術学科立体アート専攻を卒業。2008年に同大学大学院修士課程美術専攻立体芸術研究領域を修了し、2011年に同大学大学院…

ギャルリー東京ユマニテbisの都丸志帆美展「ごちゃごちゃした表面から内側へ8mm」が楽しい

東京京橋のギャルリー東京ユマニテbisの都丸志帆美展「ごちゃごちゃした表面から内側へ8mm」が楽しい(11月2日まで)。都丸は1977年群馬県渋川市生まれ、2002年創形美術学校ファインアート科卒業している。個展は2006年ギャラリー坂巻、2008年下北沢の現代…

eitoeikoの江川純太展「選択が迫る。後ろはみえない。僕は掴んだ右手を眺める。」がとても良い

新宿区矢来町のギャラリーeitoeikoで江川純太展「選択が迫る。後ろはみえない。僕は掴んだ右手を眺める。」が開かれている(11月9日まで)。江川は1978年神奈川県生まれ。2003年に多摩美術大学絵画学科日本画専攻を卒業している。2008年シェル美術賞入選、2…

梅野記念絵画館の「私の愛する一点展」を見る

長野県東御市にある東御市梅野記念絵画館で「私の愛する一点展」が開かれている(2014年1月13日まで)。ここは東京京橋でギャラリー藝林を経営していた梅野隆を記念して作られた小さな美術館だ。この絵画館友の会の会員が年1回、自分のコレクションを持ち…

吉田秀和を読む楽しみ

吉田秀和『名曲のたのしみ、吉田秀和 第1巻』(学研)を読む。副題が「ピアニストききくらべ」、これはNHKFMで42年近く続いた放送から、吉田による語りの部分をほぼそのまま活字に起こしたもの。主に、毎月月末に放送していた「私の試聴室」から選んでいる…

林忠彦『文士の時代』が興味深い

林忠彦『文士の時代』(朝日文庫)が興味深い。戦後の昭和の作家120人ほどを取り上げている。林忠彦は著名人を多く撮っている写真家で、本書も作家の肖像写真を掲載し、ほとんどの作家について、1ページ分の短い文章が書かれている。ちょっと短すぎる印象だ…

遺作画集『堀内康司の遺したもの』が見事な出来栄えだ

芝野敬通 責任編集『堀内康司の遺したもの』(求龍堂)が発行された。一昨年78歳で亡くなった画家堀内康司はあまり知られていないが、1932年生まれ、14歳で草間彌生とともに松本市で開かれた「若き世代12人」展に出品し、19歳で松本市で初個展、19歳と20歳の…

みゆき画廊の井上敬一展が今年もすばらしい

銀座6丁目のみゆき画廊で井上敬一展が開かれている(10月26日まで)。井上は1947年香川県生まれ、1980年に福岡教育大学美術研究科を修了している。 人の顔をいくつも重ねて不思議な画面を作っている。みな変な顔なのだが、なぜかそれらが魅力的だ。小品の「…

『カッパ・ブックスの時代』を読む

新海均『カッパ・ブックスの時代』(河出ブックス)を読む。新海は1975年早稲田大学を卒業して光文社に入社し、カッパ・ブックス編集部に配属される。その後月刊誌『宝石』編集部に移り、再び1999年から2005年の終刊までカッパ・ブックスの編集に携わる、と…

『色彩持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』とモーリス・ルイス

村上春樹の『色彩持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』の表紙カバーにモーリス・ルイスの作品が使われている。それは村上が選んだのだろうという人がいたが、あれを選んだのはブックデザイナーなのではないか。村上春樹は落田洋子のコレクターだという。事…

街中で見られる彫刻作品(2)

街の公園や広場、建物の内外、中でも美術館の庭などに彫刻作品が置かれている。街を歩いていて、それらの彫刻に遭遇したときに撮影したものがだいぶ溜まってきた。昨日に続いて、その2。 エミリオ・グレコ(埼玉県北浦和公園) ザッキン(新お茶の水ビルデ…

街中で見られる彫刻作品(1)

街の公園や広場、建物の内外、中でも美術館の庭などに彫刻作品が置かれている。街を歩いていて、それらの彫刻に遭遇したときに撮影したものがだいぶ溜まってきた。 掛井五郎(東京芸術劇場) 関根伸夫(埼玉県立近代美術館)もの派の代表作家、「位相−大地」…

丸谷才一『文学のレッスン』を読んで

丸谷才一『文学のレッスン』(新潮文庫)を読む。読みながら、何カ所か以前読んだ記憶があると思ったけれど、これはもともと雑誌『考える人』に掲載されていた湯川豊との対談をまとめたもので、その雑誌で読んだ記憶だと思っていた。読み終わって、念のため…

ギャラリー椿の尾関立子展「The Doll's House」が興味深い

東京京橋のギャラリー椿で尾関立子展「The Doll's House」が開かれている(10月26日まで)。尾関は1971年岐阜県生まれ、1994年に武蔵野美術大学造形学部を卒業し、1996年に同大学大学院造形研究科を卒業している。今まで東京の麻布霞町画廊や新潟の羊画廊、…

ラッセンとファンが同じと言われて奈良美智が怒っている

ネットのニュースによれば、ラッセンに関する本をテーマにした講義イベントがあり、現代美術家・中ザワヒデキ、編集者の原田裕規、ギャラリーセラーのディレクター武田美和子との鼎談で、武田が「奈良さん好きな人とラッセン好きな人は同じだと思う、私は」…

アキバタマビ21の吉田理沙

東京外神田の3331アーツ千代田のアキバタマビ21で、グループ展「そこまでは おぼえている」が開かれている(10月27日まで)。このスペースは多摩美術大学の学外展示スペースで、今回の企画では池田拓馬、濱田路子、吉田理沙の3人が発表している。 彼らの中…

秋の花と俳句

植物園にフヨウが咲いていた。フヨウはアオイの仲間。ほかにハイビスカス、オクラ、ワタなども。フヨウの句。 夢 に 見 し 人 の お と ろ へ 芙 蓉 咲 く 久保田万太郎 松 が 根 に な ま め き た て る 芙 蓉 か な 正岡子規 人 妻 を 恋 へ ば 芙 蓉 に …

「作曲家の個展 2013」権代敦彦を聴く

サントリーホールで「作曲家の個展 2013」権代敦彦を聴いた(10月11日)。権代は1965年生まれ、12歳の頃聴いたメシアンの音楽に惹かれ、作曲を志す。メシアンの音楽を通じ、カトリックへの関心が深まり、洗礼を受け、教会オルガニストも努める。 サントリー…

バーネット・ニューマン「アンナの光」売却

DIC(旧・大日本インキ)は、同社が運営するDIC川村記念美術館が所蔵するバーネット・ニューマン「アンナの光」を、海外企業に103億円で売却したと発表した。バーネット・ニューマンはアメリカ抽象表現主義のトップに位置する画家。「その「アンナの光」はニ…

ギャラリートモスで野澤義宣展を見る

東京日本橋本町のギャラリートモスで野澤義宣展が開かれている(10月12日まで)。野澤は1947年生まれ。数年前から具象的な作品を描いているが、それ以前の10年間ほどは真っ黒な画面を作っていた。画面がただ黒一色だった。なぜ現在の作風に変わったんですか…

ゆう画廊の吉田絢乃展が興味深い

東京銀座のゆう画廊で吉田絢乃展が開かれている(10月12日まで)。吉田は1987年東京生まれ。2011年多摩美術大学造形表現学部造形学科を卒業し、今年同大学大学院修士課程油画領域を修了している。大学在学中からグループ展に参加し、卒業後は藍画廊の2人展…

コバヤシ画廊で坂本太郎展「Voice」を見る

東京銀座のコバヤシ画廊で坂本太郎展「Voice」が開かれている(10月12日まで)。坂本太郎は1970年、埼玉県生まれ、2000年に愛知県立芸術大学大学院修士課程を修了している。都内では2000年に当時早稲田にあったガルリSOL、2001年以降銀座のフタバ画廊や小野…

中目黒のギャラリー7℃で作間敏宏展「治癒」を見る

東京中目黒のギャラリー7℃で作間敏宏展「治癒」が開かれている(10月13日まで)。 ちょっと薄暗いギャラリーに入ると、家型の立体が大小いくつも並んでいる。まず手前から高い位置に持ち上げられた家型の立体がある。その向こうにそれをもっと大きくした家…

内的なモティーフが弱すぎる詩は……

寺山修司『戦後詩』(講談社文芸文庫)に「役に立つ」ことを目的として書かれたキャンペーン用の詩が紹介されている。吉展ちゃん誘拐事件に際して、誘拐犯に呼びかけるために作られた詩だ。藤田敏雄が詩を書き、ピーナッツやボニー・ジャックスが歌ったとい…

寺山修司の『戦後詩』を読む。

寺山修司『戦後詩』(講談社文芸文庫)を読む。これは最初、50年近く前の1965年に紀伊國屋書店から発行されたもの。当時寺山は29歳だった。天井桟敷を主催した寺山については、その『奴婢訓』を見たくらいで、映画は『草迷宮』『さらば箱舟』を見た程度か。…

プラス思考とマイナス思考

朝日新聞の「耕論」のテーマが「居場所を求めて」だった。むかし「たのきんトリオ」というアイドルグループで活躍していた野村義男が「大ヒットなくて良かった」と語っている(10月1日)。 1990年、バンド(たのきんトリオ)が活動休止になり、ジャニーズ事…

『日本の10大庭園』を読む

重森千青『日本の10大庭園』(祥伝社新書)を読む。著者は名庭師と言われる重森三玲の孫にあたる。本人も庭園設計研究室代表であり、作庭家で庭園研究家である。副題が「何を見ればいいのか」とあり、まさに日本庭園の見方、名庭園の所以を教えてくれる。 取…

『現代美術 夢 むだ話』を読む

実川暢宏・寺田侑『現代美術 夢 むだ話』(冬青社)を読む。実川は現代美術の草分け画廊である自由が丘画廊を長く経営してきた人。その実川の語りを寺田が原稿に起こしている。 実川は1968年、世田谷区自由が丘に実川美術を立ちあげ、最初に親交のあった有島…

ギャラリーなつかの「たまびやき」がおもしろい

東京京橋のギャラリーなつかで「たまびやき」展が開かれている(10月5日まで)。「たまびやき」は、多摩美術大学工芸学科/陶/選抜作品展というのが副題で、今回が第5回になる。 市川哲也:1989年福岡県生まれ、2010年多摩美術大学工芸学科入学、現在陶専…