コバヤシ画廊で坂本太郎展「Voice」を見る

 東京銀座のコバヤシ画廊で坂本太郎展「Voice」が開かれている(10月12日まで)。坂本太郎は1970年、埼玉県生まれ、2000年に愛知県立芸術大学大学院修士課程を修了している。都内では2000年に当時早稲田にあったガルリSOL、2001年以降銀座のフタバ画廊や小野画廊、ギャラリーアートポイント、ギャラリー山口などで毎年個展を続けてきた。コバヤシ画廊では昨年に続いて2回目となる。いずれも木彫作品を展示している。
 フタバ画廊などではギャラリーの空間いっぱいに実物大かと思えるほどの大きな象の頭を展示していた。それが個展を重ねるにつれて具象的なかたちが消えていった。前々回のギャラリー山口では2mを超える「月守」と題された棒状の立像だったが、昨年のコバヤシ画廊の展示では、屹立する石柱のようにも、中国桂林にそびえる山のようにも見える立体を作っていた。
 今回の作品は大きな木彫作品が一つだけ。表面にノミの跡が付けられていて黒く塗られている。また鉄のボルトとナットも大きなものが使われていて、いくつものピースをそれらで留めている。形はやはり険しい山を思わせる。坂本の作品から具象的な形が消えていったと書いた。その形が険しい山を思わせると書いたが、具象的な形を残しているわけではない。かと言って抽象的な作品ではない。遠く具象の気配を残している象徴的な作品と言ったらよいのだろうか。非具象でありながら、拒絶的な印象は与えない。ノミ跡の表情が暖かく、有機的な形態とも相まって、どこか親しみやすい感じがする。



 複雑な形態でありながら全体に一体感があり、存在感が強い。いままでの坂本の作品の中でも、最も完成度が高いのではないだろうか。
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坂本太郎展「Voice」
2013年10月7日(月)−10月12日(土)
11:30−19:00(最終日17:00まで)
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コバヤシ画廊
東京都中央区銀座3-8-12 ヤマトビルB1F
電話03-3561-0515
http://www.gallerykobayashi.jp/