中目黒のギャラリー7℃で作間敏宏展「治癒」を見る


 東京中目黒のギャラリー7℃で作間敏宏展「治癒」が開かれている(10月13日まで)。
 ちょっと薄暗いギャラリーに入ると、家型の立体が大小いくつも並んでいる。まず手前から高い位置に持ち上げられた家型の立体がある。その向こうにそれをもっと大きくした家が置かれている。さらに周囲の壁面には同じ家型のミニチュアが何個も取り付けられている。いずれも製法は同じで、細い針金の枠に、丸い模様を切り抜いた紙が貼られて家の形を作っている。家の中はいずれも空っぽだ。空洞の家が大中小3種類並べられている。



 次に天井から細く短い針金を組み合わせた樹状の立体が吊り下げられている。その前の壁にたくさんの線が絡まり合ったドローイングが置かれている。
 ギャラリーは「コ」の字形をしていて、奥の空間にたくさんの電灯が灯っている。電灯は四角い箱の中に入れられている。その箱が上下9段に積み重ねられていて、全体が台形になっている。この形はどこかで見たことがある。マンションにこんな形があったことを思い出す。箱の中の電灯は1個から5個まで様々だ。中には消えている電灯もある。3個ある電灯が2個消えている箱もあるし、1個だけしかないのに、それも消えてしまっている箱もある。この全体がマンションなら、ひとつの箱は家族だろうか。消えている電灯は死者だろうか。家族は死者を抱えている、いや死者も含めて家族なのだと言っているのだろうか。

 では、最初に見た空洞の家は家族がすでに巣立ったのだろうか。空洞の家が白く輝いて明るく、夜景のようなマンション型の立体が暗く、しかし暖かくひっそりと存在している。
 作間の作品はいつも家族とか命とかを考えさせる。というか、作間の作品を見ると、ふだん日常に取り紛れて忘れていた家族や命についての意識が顕在化するのだ。不思議な力を持った作品だと思う。
 ギャラリー7℃は中目黒駅から徒歩5分のところにある。作間の作品は展示空間に合わせて構築されているので、同じものの再現は原則不可能だ。ぜひギャラリーへ足を運んで、実際にこの空間を体験してほしい。ここに書いたのは私の解釈にすぎない。作品は謎解きではない。見た人の数だけ様々な見方が生まれるだろう。
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作間敏宏展「治癒」
2013年10月4日(金)−10月13日(日)
12:00−19:00(会期中無休)
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ギャラリー7℃
東京都目黒区上目黒2-43-3 N.M.7th B-1
電話03-3710-8450
http://www.h7.dion.ne.jp/~gallery7/
中目黒商店街を真っ直ぐ進み、大空電気店の前を右折してすぐの左側