宇フォーラム美術館の「visual-lines」を見る

 東京国立の宇フォーラム美術館で「visual-lines」が開かれている(6月4日まで)。3人の作家のいずれもインスタレーションで、望月厚介、清野耕一、作間敏宏が参加している。望月は1948年静岡県生まれ。清野は1957年東京都目黒区生まれ。作間は1957年宮城県生まれだ。
 1階の暗くしたスペースに望月の作品が置かれている。黄色い箱が9個並べられている。望月によると、自分の手の掌紋を撮影したものを拡大し、シルクスクリーンで刷ってプラスチックの箱に貼り、中から黄色い光を当てている。手前の箱5個が今年撮影した掌紋、奥の4個が10年前のもので、新しいのは模様が薄くなっていて老化がみられるという。棺桶を連想もしたが、同時に神秘的でもあり、コンセプチュアルでありながら美しい作品になっている。撮影しなかったが、壁面には同じシルクスクリーンの平面作品が展示されていた。




 2階に行くと清野のインスタレーションが部屋いっぱいに展示されていた。傘のようでもありコマにも見えた。3人の中で清野だけが初めて見る作家だった。

 清野の部屋の横、暗幕の向こうが作間の部屋だった。部屋の中央にたくさんの仄暗い電球が土俵のような形を作って光っている。いや、円を描くように生えるきのこのフェアリーリングによく似ている。正面の壁にはこれまた仄暗い映像が映されていて、これは雨だろうか。暗い夜に降り続ける雨の中で、縄紋人やアイヌ、またはアメリカインディアンとかアボリジニが輪になって座り込んでいる情景が浮かんできた。なんだか部族の行く末を相談しているような、目の前の困難に打ちひしがれて押し黙っているようにも見えた。


 宇フォーラム美術館へ来たのは今回が初めてだった。以前、国立駅前の画廊を何軒か見たことはあったが、一ツ橋大学の方まで足を延ばしたのは初めてだ。宇フォーラムは一ツ橋大学の裏手にある。途中昔ながらの丸いポストがあって、まだ使われているのかと驚いた。
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「visual-lines」
2017年5月11日(木)−6月4日(日)
12:00−18:00(休館=月・火・水)
入館料=300円
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宇フォーラム美術館
東京都国立市東4-21-10
電話042-580-1557
http://kunstverein.jp/
JR中央線国立駅南口から徒歩20分
JR南武線谷保駅北口から徒歩15分