国立新美術館の蔡國強展を見る

 東京六本木の国立新美術館で蔡國強展が開かれている(8月21日まで)。蔡は1957年中国生まれ、1986年から9年間日本で過ごし、1995年からはニューヨークで活動している。蔡について、美術館のホームページには、つぎのように解説されている。

 

1957年末に中国に生まれ育った蔡は、1986年末に日本に移り住み、1995年にアメリカに渡るまでの約9年の間に、火薬を用いた独自のスタイルを開拓しました。

蔡は数十年にわたり、東洋古来の哲学や思想に立脚しつつ、風水や占星術にもつながる宇宙、そして目に見えない世界に魅了されてきました。同時に、そうした果てしない世界への現代的アプローチとしての科学技術への興味や、現代の社会問題への感受性と省察を原動力に制作しています。蔡の芸術の大きな特徴は、火薬を創造的に用いて作品を生み出してきたことです。神話的で人類学的な壮大な世界観を表明した火薬ドローイングやインスタレーション、屋外爆発イベントなど、スケールの大きな制作は国際的に高く評価されてきました。

 

 さらに今回の展示について、

 

国立新美術館の柱も壁もない2000㎡の大きな企画展示室1Eの、広場のような悠々とした空間で、一方には、歴史的なインスタレーション〈原初火球〉が再現され、その中には、ガラスと鏡を使った新作の火薬絵画3作品も含まれます。隣り合ったもうひとつの核は、LEDを使った大規模なキネティック・ライト・インスタレーション未知との遭遇》であり、観客は作品の中を自由に歩きながら体感することができます。



 むかし日本で発表していたのは、火薬を用いた平面作品で、そのような展示かと思っていたら、LEDを点滅させた派手なインスタレーションも展示していた。大変規模の大きな個展でちょっと度肝を抜かされた。

 しかし、火薬を用いた平面作品は、やはり自由自在に描ける方法ではないので、最初の驚きが収まれば、いささか大味な印象を受けるのはやむを得ない。LEDのインスタレーションもどこか子供だましという言葉が連想された。LEDを点滅させるのは、そうでもしないとあまりに単調で「場が持たない」からだろう。

 そんなわけで、私には物足りない個展だった。

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蔡國強展「宇宙遊-〈原初火球〉から始まる」

2023年6月29日(木)-8月21日(月)

10:00-18:00(金・土曜は20:00まで)火曜日休館

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国立新美術館

東京都港区六本木7-22-2

ハローダイヤル050-5541-8600

https://www.nact.jp