哲学

木村敏『関係としての自己』を読む

木村敏『関係としての自己』(みすず書房)を読む。木村は精神病理学者。木村の『人と人との間』(弘文堂)を読んだのはもう45年も前になる。それがとても気に入って友人にも勧めた。木村の『時間と自己』(中公新書)を刊行後しばらくして買って、読まない…

菅原潤『京都学派』を読む

菅原潤『京都学派』(講談社現代新書)を読む。 京都学派は、西田幾多郎が独自の思索で提示した哲学に、田辺元が西洋哲学史の全体を見渡した上での位置づけを試みたことによって成立した。具体的に言えば、西田がほぼ独自の道具立てで「純粋経験」「自覚」お…

小林昌人・編『廣松渉 哲学小品集』を読む

小林昌人・編『廣松渉 哲学小品集』(岩波同時代ライブラリー)を読む。廣松は難解な哲学者だが、これは雑誌などに掲載した小論を集めたもの。題名が硬いが、エッセイ集とした方が内容を表しているだろう。 「一度かいてみたい序文」という項で、ショーペン…

小林敏明 編『哲学者廣松渉の告白的回想録』を読む

小林敏明 編『哲学者廣松渉の告白的回想録』(河出書房新社)を読む。廣松渉は西田幾多郎と並んで日本で最も難解な哲学者だ。編者の小林敏明は廣松が名古屋大学で教えていたときの弟子で、もう一人東大で教えていたときの弟子が熊野純彦だ。本書は廣松が虎ノ…

瀬戸賢一『時間の言語学』を読む

瀬戸賢一『時間の言語学』(ちくま新書)を読む。「はじめに」より、 本書は小著だが、一般に世にある時間論とは一線を画する。私たちが頭の中で時間をどのように考えるのかを、数多くの実際のことばの分析によって明らかにし、無意識的に使われるメタファー…

山口拓夢『短歌で読む哲学史』を読む

山口拓夢『短歌で読む哲学史』(田畑ブックレット)を読む。田畑書店が新しく始めた叢書でその第1号。かなり力を入れているらしく価格がたったの1,300円+税。136ぺージとはいえ、1万部くらい刷っているのではないか。帯の文句が「短歌を手がかりに、たった1…

『基礎講座 哲学』を読む

木田元/須田朗 編著『基礎講座 哲学』(ちくま学芸文庫)を読む。編者の2名のほか、財津理、村岡晋一、福田収、後藤嘉也、滝浦静雄が分担執筆している。 第1部が「哲学とは何か」と題して、西洋哲学の歴史が古代ギリシア哲学から、現代の現象学、実存主義、…

竹田青嗣『哲学は資本主義を変えられるか』を読む

竹田青嗣『哲学は資本主義を変えられるか』(角川ソフィア文庫)を読む。副題が「ヘーゲル哲学再考」とある。角川ソフィア文庫の解説から、 大量生産、大量消費、大量廃棄を特徴とする現行の資本主義は、格差の拡大、資源と環境の限界を生んだ。この矛盾を克…

『ほんとうの法華経』を読む

橋爪大三郎/植木雅俊『ほんとうの法華経』(ちくま新書)を読む。478ページと新書としては分厚いがその割にはあまり高くない(本体1100円)。昨年の毎日新聞に張競の書評が載って大変ほめていた(2015年11月1日)。 日本の仏教の多くは『法華経』を最高の…

『西田哲学を開く』を読む

小林敏明『西田哲学を開く』(岩波現代文庫)を読む。副題が「〈永遠の今〉をめぐって」とある。小林は廣松渉の弟子筋にあたる哲学者で、『廣松渉――近代の超克』(講談社)という著書がある。私も今まで、『廣松渉――近代の超克』のほかに『〈主体〉のゆくえ…

藤田正勝『西田幾多郎』を読む

藤田正勝『西田幾多郎』(岩波新書)を読む。西田の簡単な伝記から始めて、最初の著作『善の研究』を解説する。西田のこの難解な哲学書がなぜ多くの人によって読み継がれてきたのか。それは倉田百三が本書の序文を読み、そこに「個人あって経験あるにあらず…

國分功一郎『近代政治哲学』を読む

國分功一郎『近代政治哲学』(ちくま新書)を読む。とても刺激的な読書だった。現在われわれが生きているこの政治体制は、近代の政治哲学が構想したものだと、本書カバーの袖の惹句は言う。「〈主権〉の概念が政治哲学の中心のおかれる中で、見落とされたの…

赤瀬川原平『四角形の歴史』という不思議な本

赤瀬川原平『四角形の歴史』(毎日新聞社)を読む。毎日新聞の書評欄のコラム「この3冊」で、美術評論家の山下裕二がこの本を「あまり知られていないけれど、極めつきの名著だ」と絶賛していた(2月1日)。 自筆のイラストとごく短い文章による絵本という…

細見和之『フランクフルト学派』を読んで

細見和之『フランクフルト学派』(中公新書)を読む。ドイツのワイマール時代にフランクフルトに設立された社会研究所、そこに結集したホルクハイマー、アドルノ、ベンヤミン、フロム、マルクーゼたちをフランクフルト学派といった。多くがユダヤ人知識人で…

中沢新一『はじまりのレーニン』を読む

中沢新一『はじまりのレーニン』(岩波書店)を読む。本書はソ連崩壊3年後の1994年に発行されている。もうレーニンなんか過去の思想家だと思っていたが、本書を読んで考え方を改めた。 レーニンの著作というと『唯物論と経験批判論』を思い出す。昔購入した…

木田元『マッハとニーチェ』を読む

木田元『マッハとニーチェ』(講談社学術文庫)を読む。副題が「世紀転換期思想史」というもの。これが意外におもしろかった。ニーチェはともかく、マッハなんてすでに過去の哲学者だと思っていたのは私の無知だった。転換期における重要な存在だった。 雑誌…

赤瀬川原平を読んで

先日千葉市美術館の「赤瀬川原平の芸術原論」を見たのをきっかけに尾辻克彦(=赤瀬川原平)の『東京路上探検記』(新潮文庫)を読んだ。そこに東京の中心として皇居を捉える考察があった。 東京の中心を環状の山手線が回っている。黄緑色の電車がぐるぐる回…

ショーペンハウアー『読書について』を読んで

ショーペンハウアー/鈴木芳子・訳『読書について』(光文社古典新訳文庫)を読む。詩人の荒川洋治が高く評価していたから(毎日新聞 2013年8月11日)。荒川の書評より、 「本を読むとは、自分の頭ではなく、他人の頭で考えることだ。たえず本を読んでいる…

鉄斎のきつい言葉

37年前に『日本の名画 富岡鉄斎』(中央公論社)という画集を買った。そこに鉄斎の写真が載っていた。記念写真のようで、鉄斎たち5人の老人が並んでいる。写真の上に鉄斎の字で彼らの名前が書かれていて、右から内藤湖南、鉄斎、羅雪堂、犬飼木堂、長尾雨山…

長谷川宏『いまこそ読みたい哲学の名著』を読む

長谷川宏『いまこそ読みたい哲学の名著』(光文社文庫)を読む。長谷川はヘーゲルの翻訳で評価の高い哲学者だ。本書で選ばれている哲学書12冊。 アラン『幸福論』 シェイクスピア『リア王』 デカルト『方法序説』 プラトン『饗宴』 『論語』 マックス・ヴェ…

木田元『ハイデガー拾い読み』を読む

木田元『ハイデガー拾い読み』(新潮文庫)を読む。これは「ニーチェの言葉」とか「ブッダの言葉」のような、著者が適当な文章を選び出し自分に引きつけて勝手な解説を加えたクソ本(失礼)とは断固違う。本書は正確には「ハイデガー講義録拾い読み」だとい…

宮岡伯人「エスキモー 極北の文化誌」を読む

千野栄一が「ことばの樹海」(青土社)で、青木晴夫「滅びゆくことばを追って」(岩波同時代ライブラリー)が面白いと推薦していたので読んだら実に面白かった。そのことは私も先日(3月4日)紹介した。千野はもう1冊、宮岡伯人の「エスキモー 極北の文化…

木田元へのインタビュー

朝日新聞夕刊に「人生の贈りもの」というコラムがあり、毎週著名人へのインタビューが5回シリーズで掲載されている。先週が哲学者の木田元だった。インタビューなのできわめてやさしい言葉で哲学が語られている。 ーー(ハイデガーは)どんな人物だったので…

未完の大作「カラマーゾフの兄弟」と「存在と時間」

ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」を読んだ。いま話題の亀山郁夫訳の光文社古典新訳文庫版だ。全5巻、4部構成の1部を文庫1冊にあて、エピソードを1冊にあてて5巻としている。しかしエピソードはたった60ページほどなので、そこに「ドストエフス…