哲学
熊野純彦『哲学史にしおりをはさむ』(青土社)を読む。熊野純彦は現在最も優れた哲学者の一人。その熊野の哲学論文ではないエッセイを集めたもの。とはいうものの熊野によれば論文とあまり区別されていないという。事実「ハイデガーとマルクス主義」とか、…
出口顕『ほんとうの構造主義』(NHKブックス)を読む。フランスの戦後の思潮、構造主義の四銃士と呼ばれた文化人類学のレヴィ=ストロース、思想史家ミシェル・フーコー、文芸批評のロラン・バルト、精神分析家のジャック・ラカンの思想を取り上げて構造主義…
北川東子『ハイデガー』(NHK出版)を読む。「シリーズ・哲学のエッセンス」の1冊。小さな本で、わずか110ページ。取り上げた哲学者の大枠を紹介する入門書という位置づけか。 北川はハイデガーの哲学を語っている。ハイデガーは「存在そのもの」、「存在の…
小堀鴎一郎『死を生きる』(朝日新聞出版)を読む。副題が「訪問診療医がみた709人の生老病死」。著者の祖父は森鴎外で、母は小堀杏奴、父は画家の小堀四郎である。 小堀鴎一郎は長く食道外科医として勤務した。国立国際医療センターを65歳で定年退職した後…
サルトル『シチュアシオン X』(人文書院)を読む。「X」すなわち10巻。『シチュアシオン』はサルトルの評論集で日本ではこの10巻まで出版されている。内容は時事的な評論が多いが、哲学や文学にも及んでいる。 1巻 フォークナーやドス・パソス、ニザン、ナ…
熊野純彦『サルトル』(講談社選書メチエ)を読む。熊野純彦は廣松渉門下の優れた哲学者、サルトルは若い頃夢中になって読んだ哲学者、では読まずばなるまい。それにしても熊野純彦はドイツ哲学が専門でレヴィナスの研究者なのに、サルトルに対するこの理解…
伊藤直『戦後フランス思想』(中公新書)を読む。副題が「サルトル、カミュからバタイユまで」となっていて、サルトル、カミュ、ボーヴォワール、メルロ=ポンティ、バタイユがそれぞれ1章を与えられて紹介されている。さらに2章を当てて、サルトルとバタ…
木田元『現象学の思想』(ちくま学芸文庫)を読む。発行が2000年といささか古く、「ちくま学芸文庫」のために編集したものだとある。内容は現象学に関する6篇の論文を集めたもの。一番古いのは1964年に発表したもので、新しいのも1980年といささか古いのは…
伊藤邦武『物語 哲学の歴史』(中公新書)を読む。新書という小冊子で哲学史を紹介するという難しい仕事を試している。結果的にそれは成功している。 古代・中世の哲学から、近代の哲学=意識の哲学はデカルトから経験論とカントが語られ、20世紀哲学=言語…
須藤靖が『P』に連載している「注文(ちゅうぶん)の多い雑文 その64」で「今ここにある宇宙とぼくの存在について」と題するエッセイを書いている(2023年12月号)。須藤靖は東大の宇宙論・太陽系惑星を専門とする研究者なのだ、 「ぼくはなぜ今ここに存在し…
村上靖彦『客観性の落とし穴』(ちくまプリマ―ブックス)を読む。 大学の授業で学生から「先生の言っていることに客観的な妥当性はあるのか」と質問されることがあるという。村上は、「客観性」「数値的なエビデンス」は、現代の社会では真理とみなされてい…
慎改康之『ミシェル・フーコー』(岩波新書)を読む。フーコーは現代フランスの哲学者、難解な哲学で知られている(1984年に亡くなっているが)。主著は『言葉と物』、『知の考古学』、『監獄の誕生』、『性の歴史(1~4巻)』など。私も『言葉と物』や『…
濵田恂子『入門 近代日本思想史』(ちくま学芸文庫)を読む。「本書は国内外の状況が目まぐるしく変わっていく時代、19世紀後半から20世紀末にいたる歴史に足跡を残した哲学者・思想家たちの主要著作と思索のエッセンスを紹介。(……)日本の哲学思想史を概観…
牧野雅彦『ハンナ・アレント』(講談社現代新書)を読む。本書は「現代新書100(ハンドレッド)」という新しいシリーズで、帯には次のように書かれている。 ①それは、どんな思想なのか(概論) ②なぜ、その思想が生まれたのか(時代背景) ③なぜ、その思想が…
木村敏『異常の構造』(講談社学術文庫)を読む。本書は50年前に講談社現代新書として発行されていたもの。木村は本書で精神分裂病(現在の呼称では「統合失調症」)について分析している。統合失調症を単なる精神障害の病気として扱うのではなく、それが人…
柄谷行人『柄谷行人対話篇Ⅱ 1984-88』(講談社文芸文庫)を読む。柄谷が対談の相手に選んでいるのは、木村敏、小林登、岩井克人、大岡昇平、子安宣邦、リービ英雄の6人。いずれも極めて高度な内容で、対談ながら読み進むのが大変だった。 木村敏との対談、 …
筒井康隆『誰にもわかるハイデガー』(河出文庫)を読む。副題が「文学部唯野教授・最終講義」で、32年前の1990年に池袋西武スタジオで講演した講演録。それに大澤真幸が長い解説を付けている。 いや、筒井康隆のハイデガーなんてどうせ面白エッセイの類だろ…
8年ほど前に書いた《佐藤文隆の『「科学にすがるな!」』を読んで》をたまたま読み直したら、我ながらとても興味深い内容だと思ったので、ここに再録する。 ・ 艸場よしみが佐藤文隆にインタビューした『「科学にすがるな!」』(岩波書店)を読む。副題が「…
熊野純彦『戦後思想の一断面』(ナカニシヤ出版)を読む。副題が「哲学者廣松渉の軌跡」というもの。マルクス主義哲学者で、マルクス、エンゲルスの『ドイツ・イデオロギー』に関する新編集をまとめ、マルクスの後期思想「物象化論」を重視し、マッハ研究と…
西研『ヘーゲル・大人のなりかた』(NHKブックス)を読む。第1刷が1995年、もう25年前になる。翌年購入して今まで読まないで積んでいた。自分がヘーゲルを読んで来なかったことに気が付いた。岩波文庫の『小論理学』を読んだだけだったと思う。それは40年以…
木村敏『関係としての自己』(みすず書房)を読む。木村は精神病理学者。木村の『人と人との間』(弘文堂)を読んだのはもう45年も前になる。それがとても気に入って友人にも勧めた。木村の『時間と自己』(中公新書)を刊行後しばらくして買って、読まない…
菅原潤『京都学派』(講談社現代新書)を読む。 京都学派は、西田幾多郎が独自の思索で提示した哲学に、田辺元が西洋哲学史の全体を見渡した上での位置づけを試みたことによって成立した。具体的に言えば、西田がほぼ独自の道具立てで「純粋経験」「自覚」お…
小林昌人・編『廣松渉 哲学小品集』(岩波同時代ライブラリー)を読む。廣松は難解な哲学者だが、これは雑誌などに掲載した小論を集めたもの。題名が硬いが、エッセイ集とした方が内容を表しているだろう。 「一度かいてみたい序文」という項で、ショーペン…
小林敏明 編『哲学者廣松渉の告白的回想録』(河出書房新社)を読む。廣松渉は西田幾多郎と並んで日本で最も難解な哲学者だ。編者の小林敏明は廣松が名古屋大学で教えていたときの弟子で、もう一人東大で教えていたときの弟子が熊野純彦だ。本書は廣松が虎ノ…
瀬戸賢一『時間の言語学』(ちくま新書)を読む。「はじめに」より、 本書は小著だが、一般に世にある時間論とは一線を画する。私たちが頭の中で時間をどのように考えるのかを、数多くの実際のことばの分析によって明らかにし、無意識的に使われるメタファー…
山口拓夢『短歌で読む哲学史』(田畑ブックレット)を読む。田畑書店が新しく始めた叢書でその第1号。かなり力を入れているらしく価格がたったの1,300円+税。136ぺージとはいえ、1万部くらい刷っているのではないか。帯の文句が「短歌を手がかりに、たった1…
木田元/須田朗 編著『基礎講座 哲学』(ちくま学芸文庫)を読む。編者の2名のほか、財津理、村岡晋一、福田収、後藤嘉也、滝浦静雄が分担執筆している。 第1部が「哲学とは何か」と題して、西洋哲学の歴史が古代ギリシア哲学から、現代の現象学、実存主義、…
竹田青嗣『哲学は資本主義を変えられるか』(角川ソフィア文庫)を読む。副題が「ヘーゲル哲学再考」とある。角川ソフィア文庫の解説から、 大量生産、大量消費、大量廃棄を特徴とする現行の資本主義は、格差の拡大、資源と環境の限界を生んだ。この矛盾を克…
橋爪大三郎/植木雅俊『ほんとうの法華経』(ちくま新書)を読む。478ページと新書としては分厚いがその割にはあまり高くない(本体1100円)。昨年の毎日新聞に張競の書評が載って大変ほめていた(2015年11月1日)。 日本の仏教の多くは『法華経』を最高の…
小林敏明『西田哲学を開く』(岩波現代文庫)を読む。副題が「〈永遠の今〉をめぐって」とある。小林は廣松渉の弟子筋にあたる哲学者で、『廣松渉――近代の超克』(講談社)という著書がある。私も今まで、『廣松渉――近代の超克』のほかに『〈主体〉のゆくえ…