「ぼくはなぜ今ここに存在しているのだろう」に対するGPT4の回答

 須藤靖が『P』に連載している「注文(ちゅうぶん)の多い雑文 その64」で「今ここにある宇宙とぼくの存在について」と題するエッセイを書いている(2023年12月号)。須藤靖は東大の宇宙論・太陽系惑星を専門とする研究者なのだ、

 

「ぼくはなぜ今ここに存在しているのだろう。

 

 最初にこう問いを立てる。これは「物心ついた頃からずっと、頭の奥に浮かんでは消えることを繰り返していた」という。そして今回「この宇宙」について種々論じて、最後にこう書く。

 

(……)今回は、いつものように宇宙から出発するのではなく、逆に「ぼくはなぜ今ここに存在しているのだろう」というボトムアップ的考察から、マルチバース人間原理という世界観を導いてみた。

 この世界観にたてば、「今から138億年以前の宇宙は一体どうなっていたのですか」に対する私の個人的回答は、以下のようになる。

 「この宇宙」は今から138億年前に誕生したので、それ以前には存在しません。しかし、「この宇宙」を産む元となった「親宇宙」ならば、それ以前にも存在しているかもしれません。それどころか、その「親宇宙」から「この宇宙」とは異なる性質をもつ無数の「あの宇宙」が次々と誕生した可能性もまた否定できません。それらは決して直接観測し検証することはできませんが、「この宇宙」の今を起点として、1兆年前、1京年前に誕生したものから、逆に1兆年先、1京年先に誕生するであろうものまで、ありとあらゆる多様性をもっていると考えるほうが自然です。そしてその「親宇宙」もまた、さらに「親親宇宙」と続く無数の階層の中の一階層にすぎないものと考えられます。合掌。

 この個人的回答に賛同してもらえるとまでは思わないが(注10)、宇宙におけるすべての天体の存在を相対化してきたのが現代宇宙論の歴史であることを思い起こせば、「この私」そして「この宇宙」の存在もまた相対化されるべきではないか。

 

(注10) GPT4に聞いてみた:私の個人的回答だけを『UP』誌に掲載することにコンプライアンス的不安を覚えたT嬢(編集者)から、「ChatGPTの回答はどうなのでしょうね?」というコメントを頂いた。そこで、GPT4のアカウントをもっている知り合いに頼んで聞いてもらったところ、(聞くという表現には、GPT4を人間と同列においている私の価値観が表れている)、以下の回答を得た。

 「現在の科学的理解によれば、宇宙は約138億年前にビッグバンと呼ばれる大爆発で始まったと考えられています。ビッグバンの前に宇宙がどのような状態であったのか、または「何があったのか」については、正確な答えはまだ分かっていません。ビッグバン以前の状態やそれを引き起こした原因については、さまざまな理論や仮説が提案されていますが、これにはまだ確固とした証拠は得られていません。一部の理論では、宇宙はサイクリック(周期的)に拡大と収縮を繰り返しているとされ、ビッグバンはそのサイクルの一環として発生したと考えられています。他の理論では、ビッグバンは多元宇宙の一つの「バブル」として発生したと考えられています。しかしながら、ビッグバン以前の宇宙の状態や性質にいついての確定的な答えは、現在のところ存在しないと言えます。」

 うーん、私の回答よりもずっと明快で正確やないかい! GPT4恐るべし(定年が目の前で本当に良かった)。ついでに、本稿の発端である質問「ぼくはなぜ今ここに存在しているのだろう」には次のように教えて頂いた(この表現は、GPT4を自分よりも上の存在であると認めざるを得なくなった私の価値観がにじみ出ている)。

 「この質問は、科学的、哲学的、宗教的、文化的な観点から多様な答えが考えられます。科学的観点:進化の結果として、私たちは地球上の生命の中で現代人として存在しています。生命の起源、細胞の進化、多細胞生物の出現、そして最終的にヒトの進化という一連の過程を経て、あなたはここに存在しています。哲学的観点:存在の意味や目的についての答えは人それぞれ異なります。一部の哲学者は、人は自分自身の意味や目的を見つけ出すために存在すると考えます。宗教的観点:多くの宗教には、人間の存在や目的に関する教えが含まれています。例えば、ある宗教では神の意志によって人は存在するとされ、別の宗教では再生や業の循環の中での人の役割が説明されている場合があります。文化的観点:社会や文化は、個人の存在の意味や目的を形成する上で重要な役割を果たしています。家族、友人、職業など、あなたの周囲の環境やコミュニティは、あなたの存在の意味を定義する要因の一部になっているかもしれません。」

 ぐうの音もでません。

 

 いやはや、生成AI恐るべし!