須藤靖『不自然な宇宙』を読む

 須藤靖『不自然な宇宙』(ブルーバックス)を読む。須藤は東京大学大学院物理学専攻教授とある。専門は宇宙物理学、特に宇宙線太陽系外惑星の理論的および観測的研究とある。私は東京大学出版会のPR誌『UP』に不定期に連載されている須藤のエッセイ「注文の多い雑文」のファンで、雑誌が届くと山口晃のマンガの次に須藤のエッセイを探して(載っていれば)読むのを楽しみにしている。
 須藤の単行本では以前『主役はダーク』(毎日新聞社)を読んだことがある。このブログにも「ちょっと怪しい本」として紹介している。ダークというのはダークマターダークエネルギーのことで、宇宙に偏在していて物質の何倍もある未知の存在だ。
 さて、『不自然な宇宙』は副題が「宇宙はひとつだけなのか?」とあり、マルチバースを紹介している。われわれが住むユニバースの外に複数のユニバースがあり、多数のユニバースを含めた世界をマルチバースという。われわれの住むユニバースの外の世界は当然認識することができない。須藤はマルチバースの存在を理論的に探っていく。
 須藤は「人間原理」を持ち出して、マルチバースの存在を主張する。しかし、そもそも「我々が観測できる宇宙の外にあるはずのマルチバースは原理的に観測不可能です」と書いている。やはりマルチバースのことを考えるのは虚しいことではないだろうか。

 

 

 

不自然な宇宙 宇宙はひとつだけなのか? (ブルーバックス)

不自然な宇宙 宇宙はひとつだけなのか? (ブルーバックス)