2007-08-01から1ヶ月間の記事一覧

大阪のお好み焼き屋「ぼてぢゅう」と森村泰昌

昔から時々、と言っても年に1,2回、ぼてぢゅうへ行ってお好み焼きを食べる。なかなかうまい物だと思っていた。それを大阪出身のやつに話すと、東京のぼてぢゅうは本物のぼてぢゅうじゃないと言う。「ぼてぢゅう」は大阪のお好み焼き屋だ。看板が一緒なの…

インドで私も考えた

ずいぶん昔になるが、アジア太平洋雑草学会がインドのバンガロールで開かれ出席したことがある。2週間の出張と言うことで、カミさんは生まれたばかりの娘を連れて遠くの実家へ帰ってしまった。やむなく50〜60鉢あった盆栽は2鉢を残して処分した。 インドで…

進化すると見えなくなる

昔カラヤンが来日してサントリーホールで公演をしたとき、NHKFMで生中継された。ムソルグスキーの「展覧会の絵」が始まってすぐトランペットが音を外してしばらく変な音程が鳴り響いた。しかしカラヤンは演奏をやめることなく最後まで指揮をした。この時の演…

現代美術の新しい流れ

6月に東京都現代美術館で東京都が主宰するトーキョーワンダーウォール公募2007入選作品展を見た。80人前後の若い才能が並んでいた。驚いたのは抽象画がほとんどないことだった。皆マルレーネ・デュマスやゲルハルト・リヒター、ルシアン・フロイドの類なの…

「気まぐれ美術館」の洲之内徹と若栗玄という画家

「気まぐれ美術館」は長年「芸術新潮」に連載された人気エッセイだった。著者は洲之内徹で銀座のギャラリー「現代画廊」のオーナーだった。若いころ芥川賞候補にもなった人で文章がうまかった。「気まぐれ美術館」は絵を巡るエッセイで、絵についてはもちろ…

静岡市井川地区の雑穀畑、満州帰りの農民

静岡市から北へ井川線という鉄道にそって30kmほど山道を登ると井川湖というダム湖に着く。この辺りは標高700m近い井川という地名の集落だ。われわれはここにアザミウマの採集に来た。アザミウマはアザミウマ目(総翅目)の微細昆虫、体長1mmほどしかない。…

池田満寿夫のピアノの絵

池田満寿夫にピアノの版画がある。鍵盤が描かれているが、白鍵と黒鍵の位置がでたらめなのだ。池田の奥さんはバイオリニストの佐藤陽子だ。彼女がこのピアノの鍵盤の位置についてクレームをつけたが画家は取り合わなかったという。 自分の絵は写実ではないの…

肉体の衰弱について

40歳前後の頃、性的能力の衰えを自覚した。こんなはずではないと1、2年じたばたした。そんな記憶があるが、どのようにじたばたしたかもう憶えていない。しかし結局これでいいのだと了解した。いつまでも若いときのようであっては恥ずかしいことではないか…

「河童のクゥと夏休み」は21世紀日本映画のベストワン! という評価

演劇評、映画評で最も信頼するぼのぼのさんのブログ「Badlands」に「河童のクゥと夏休み」が紹介された。21世紀に入って作られた日本映画のベストワンだという。ここまで言われたら見ないわけにはいかない。 原恵一が脚本・監督を手がけたアニメーション『河…

野見山暁治が紹介するマドモアゼル・セスネイという魅力的な女性

野見山暁治「遠ざかる風景」(筑摩書房)にパリに住むマドモアゼル・セスネイという魅力的な女性が紹介されている。私は彼女のファンだ。練馬区美術館で野見山暁治回顧展が開かれた折りに、画家が自分の絵について語るという日があった。質問はないかと言わ…

雑誌は見開き、そしてソロモンの指輪

ここに写真で紹介する植物図鑑が使いにくかった。左ページ上段がクロヅル(ニシキギ科)だが、矢印Aの写真もクロヅルなのだ。左ページ下段の左半分がミツバウツギ(ミツバウツギ科)で、右ページ上段がショウベンノキ(ミツバウツギ科)、右ページ下段がゴン…

必見! 練馬区立美術館の山口晃展「今度は武者絵だ!」

東京の練馬区立美術館で山口晃展「今度は武者絵だ!」が始まった(8月17日ー9月17日、月曜日休み)。初日の昼頃に行ったががらがらだった。美術館の人に聞くと宣伝してないからじゃないですかという。もったいないことだ。 山口晃は一昨年日本橋三越がリニ…

遺伝

毎月集まって飲む仲間がいる。中の一人が、俺たちの子どもってどうしてみんな出来が悪いんだろう? と問いを発した。 私が即答した。それはカミさんの血が入っているからだよ。躊躇なくこのことを書けるのは、われわれのカミさんたちが誰もこのブログを読ん…

サラリーマン生活を諺で乗り切ってきた

サラリーマン生活は理不尽なことが多い。私は34年間という長いサラリーマン生活を次の二つの諺(ことわざ)を反芻することによって乗り切ってきた。 「蟹は己の甲羅に似せてその穴を掘る」 自分の大きさでしか相手を理解できないということ。 「愚かを相手の…

「既視の街」の写真家・渡辺兼人

渡辺兼人を知ったのは1980年に出版された金井美恵子との共著「既視の街」(新潮社)を買ったときだ。金井美恵子が同名の中編小説を書き、渡辺が白黒写真を提供している。その写真が印象的だった。こんな写真をそれまで見たことがなかった。人が写っていない…

名文の秘密ーー野見山暁治の文章修業

画家の野見山暁治は文章の巧さでも傑出している。1920年に福岡県に生まれ、小学校のときから絵を描き、東京美術学校(現東京芸大)に入学する。陸軍に入隊したがまもなく肋膜で入院、傷痍軍人療養所で終戦を迎える。1952年31歳のときフランス政府私費留学生…

人前で語るには恥ずかしい言葉を乱発して(大山鳴動)

こんな当たり前のことをわざわざ書くのもどうかと思うが、自分では気が付いていなくてそれなりに新鮮だったので、同じ人もいるのではないかとあえて書いてみる。 普通の状態のペニスを刺激しても快感は感じられない。ペニスが勃起して初めて快感を感じる神経…

自己評価はなぜ難しいのだろう

40年ぶりに小学校の同級会に出席した女性が、当時同級生たちが見ていた自分の姿と、自己認識とがあまりに違っていて驚いたと言う。 彼女は女ばかりの5人姉妹の末っ子で、優秀な姉たちに比べて自分は出来が悪く、それでなくても5人姉妹でお金がかかるので、…

中小企業は皆すきま産業だ、そして社長の教養

勤めていた会社が東京都債券市場構想のCBOに選ばれた。CBO=社債担保証券(Collateralized Bond Obligation)は中小企業が発行する社債を束ねて証券化し、投資家から資金調達を図るもの。一応業績が良好な企業から選ばれる。 幹事銀行であるみずほ銀行が、各…

マテ茶と交差いとこ婚

若いころレヴィ=ストロースの「悲しき南回帰線」を読んで、南米インディオがマテ茶なるものを飲んでいることを知った。一度飲んでみたいと探したがなかなか見つからなかった。いまから35年も前なのだ。ようやく新宿小田急デパートで見つけたが、大袋しかな…

未完の大作「カラマーゾフの兄弟」と「存在と時間」

ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」を読んだ。いま話題の亀山郁夫訳の光文社古典新訳文庫版だ。全5巻、4部構成の1部を文庫1冊にあて、エピソードを1冊にあてて5巻としている。しかしエピソードはたった60ページほどなので、そこに「ドストエフス…

伝説の歌手、山崎ハコ

桐野夏生「OUT」は弁当工場に働く主婦たちの物語だ。彼女たちの労働環境は過酷だ。ベルトコンベヤーで何千食も作らされている。私も若いころゴーンさんが赴任してくる前の自動車工場で働いたことがあるから少しは分かるつもりだ。弁当工場の方が大変そうだけ…

絶倫のロシア人、淡泊な日本人

手嶋龍一・佐藤優「インテリジェンス 武器なき戦争」(玄冬舎新書)に次のようなエピソードが紹介されている。 佐藤 そのハルピン学院出身の人たちが、よくわれわれ若い連中をつかまえて、「君たちな、ロシア娘と遊ぶのはいい。しかし結婚だけはやめたほうが…

トリストラム・シャンディと中西夏之、そして山猫

イギリスの作家ロレンス・スターンの「トリストラム・シャンディ」(岩波文庫)と現代美術の画家中西夏之には1点だけかすかな共通項がある。夏目漱石も愛読したスターンのこの小説は奇妙な作品で、トリストラム・シャンディが生まれる前から書き始められて…

誠実の行方、詩「天山」から

私たちは小さいときからお話を聞いたり本を読んだりして、誠実なこと、誠意を持つことが大切なんだと教わってきた。誠実であれば心は届くのだと。 私たちはやがて青年になる。好きな女の子ができる。通学の途中で、通勤の途中で彼女のことを目で追っている。…

オーディオ比べ、あるいは辛い恋も5年経てば忘れられる

オーディオ趣味は難しいものがある。わが家へ友人二人が別々の日に遊びに来た。二人ともいいオーディオセットを持っている。一人はスタジオでモニターに使うでかいダイヤトーンのスピーカー、もう一人はJBLのこれまたでかいスピーカーだ。ダイヤトーンはクラ…

無人島プロダクションのChim Pom 「オーマイゴッド」展が面白かった

高円寺の無人島プロダクションで開かれている展覧会Chim Pom 「オーマイゴッド」展が面白かった。若い6人の作家たちの共作だという。 ギャラリーの一画に大きな赤いバルーンがおいてある。天井からはたくさんの小さな風船が吊り下げられている、大きな赤い…

流行の活字

パソコンが普及してきて書体に影響が出てきた。モニター上では見やすさからゴチックが多く使われている。縦線と横線が共に太いので見やすいのだ。 紙媒体では違っている。ダントツに多いのが明朝体だ。縦線が太く横線が細くてきれいだと思う。ゴチックだと紙…

コンセプトとしての「白いクラウン」

会社の若手社員にコピーライター養成講座に通わせた時、彼女の持ち帰ったテキストを見て驚いた。「コンセプト」という考え方の例としてトヨタの「白いクラウン」が挙げられていたのだ。35年前私も同じ講座(私は通信教育)で学んだのだが、その時も同じ「白…

門田秀雄氏による瀧口修造試論「批評も思想ぬきで成り立つ」

去る7月28日、東京京橋にあるギャラリイKで開かれている企画展《日本コラージュ2007》に関連してギャラリートークが行われた。ゲストは美術作家でもあり川崎市民ミュージアムの学芸員でもある仲野泰生さんと、同じく美術作家でもあり美術評論家でもあ…