6月に東京都現代美術館で東京都が主宰するトーキョーワンダーウォール公募2007入選作品展を見た。80人前後の若い才能が並んでいた。驚いたのは抽象画がほとんどないことだった。皆マルレーネ・デュマスやゲルハルト・リヒター、ルシアン・フロイドの類なのだ。ニューペインティングとかその仲間だ。抽象や抽象表現主義が一挙になくなってしまった。彼らは大きく括れば具象と言える。若者は具象に移ったのだ。少なからずショックだった。
個人的には抽象表現主義が好きだった。亀山尚子、沓澤貴子、葛生裕子、久保理恵子、渡邊野子などだ。しかし市場は亀山尚子の夫である加藤泉や、すぐれた抽象を描く平埜佐絵子の夫である日野之彦を選んで個展初日で完売とした。加藤はデュマスとの類縁を言われているし、日野はブリーフ1枚の若い男が口を開け眼を見開いている気持ち悪い(キモカワイイ)絵を描いていて、奈良美智を連想させる。
戦後の作家では山口長男、野見山暁治、晩年の村井正誠、晩年の猪熊弦一郎、齋藤義重あたりを評価していたが、ここに来て時代が急変しているらしい。