中小企業は皆すきま産業だ、そして社長の教養

 勤めていた会社が東京都債券市場構想のCBOに選ばれた。CBO社債担保証券(Collateralized Bond Obligation)は中小企業が発行する社債を束ねて証券化し、投資家から資金調達を図るもの。一応業績が良好な企業から選ばれる。
 幹事銀行であるみずほ銀行が、各中小企業の社長を集めて懇親会を開いた。数人の社長たちと話しただけだが、中小企業とは皆すきま産業だと知った。パチンコ屋専門のコンサルタント会社とか、ホテル専門の照明設備会社、中国で何か機械部品を作っている会社など。
 この中小企業の社長たちがお粗末だった。特に中国で工場を経営しているというオッサンは、中国人は皆泥棒だ、金庫の金をもう3回盗まれた、ガードマンを雇ってもガードマンを買収して盗んでしまうと言いたい放題だった。こんなオッサンと接している中国人は、日本人て何てがさつな連中だろうと思っているに違いない。
 もっとも中小企業だけでなく、大企業の社長だって皆が立派なわけではない。日本を代表する商社の社長と会長に会ったことがある。その商社がアメリカの大会社と日本に合弁会社を作るにあたって、契約書の調印式を行った。その調印式の撮影を頼まれたのだ。予算がないので撮影代は払えないけれど、調印式のあとのパーティーに呼んであげるよ。ケチなパーティーに出てもしょうがないが、得意先からの要請では断れない。
 アメリカの社長が来る前に商社の社長と会長が雑談をしていた。社長室のビュッフェの絵は風水的に見て良くないから変えた方がいいと秘書に言ったのだ。そうか、ここは社長室にビュッフェを飾っているのか。ビュッフェなんて若いころの作品の自己模倣ばかりしている画家だ。模倣=コピーがオリジナルより良い訳がない。
 この社長はアメリカの社長が来たときも、ビル最上階の応接室から見下ろす皇居を指して、これはサムライの城だなんて説明をしていた。当然ここでは、これがロラン・バルトの言う東京の空虚な中心です、と言うべきなのだ。