必見! 練馬区立美術館の山口晃展「今度は武者絵だ!」


 東京の練馬区立美術館で山口晃展「今度は武者絵だ!」が始まった(8月17日ー9月17日、月曜日休み)。初日の昼頃に行ったががらがらだった。美術館の人に聞くと宣伝してないからじゃないですかという。もったいないことだ。
 山口晃は一昨年日本橋三越がリニューアルした時にポスターの原画を描いた画家。公共広告の原画も描いている。分かりにくい現代美術と違って具象だから誰でも楽しめる。1969年生まれだからまだ38歳と若いのに、ミヅマ・アートギャラリーを中心に何回も個展を開いているし、三越山口晃展も開催されている。今年の5〜6月には上野の森美術館で「会田誠山口晃展」も開かれた。なぜかお堅い東京大学出版会から画集も発行されている。同出版会のPR誌「UP」にはもう2年以上「すずしろ日記」というマンガも連載されている。これが奥さんとの日常を綴っていて楽しいのだ。8月号のマンガでは共働きの奥さんのパンツを洗っていて、干すときにどっちが上か分からんなんてやっている。
 さて、具象と紹介したが、これがかなり変わっている。三越のポスターもそうだったが、時代を混ぜ合わせてしまうのだ。武士の時代に現代人が入り込んでいる。バスと駕籠が同居する。合戦図なのにノートパソコンを持ったサラリーマンや起重機なんかも活躍する。騎馬武者が乗っている馬の脚はオートバイになっている。
 源頼朝公図を油彩で極めて正確に模写したりしている。着色された合戦図に墨一色の下絵が並んでいても、実は下絵の方が後から描かれたという茶目っ気がある。以前東京芸術大学美術館で中西夏之回顧展が行われた折り、御大中西大先生がインスタレーションを公開制作された。山口晃はその模様を逐一絵巻物風に仕立てたりした。ト書き付きで。
 山口をデビューさせたのは芸大で4年先輩の会田誠だ。会田と山口は二人とも極めて巧い具象画を描くことで共通している。山口が茶目っ気もありながら礼儀正しい上品な画家なのに、会田は私生活でちょっとばかり変なところがある。会田誠が書いた小説「青春と変態」(ABC出版)は全編便所覗きの話だし、「ミュータント花子」(ABC出版)は強烈なエロマンガだ。しかし二人とも個展をすれば作品が完売するという売れっ子だ。そして私はこの二人の画家のファンなのだ。
 会田誠の絵のモデルもするChim Pomのエリイのブログに会田のことが「家の近所の人に変態だッてきずかれてるらしぃょ/誰ピカみてから、先生ッて言われてるらしぃょッ/ぅけるー」って紹介されてる。
 さて、練馬区立美術館の山口晃展必見です! 西武池袋線中村橋駅徒歩3分、入場料500円とチョー安い。9月2日には作家のトークもあります。