2021-04-01から1ヶ月間の記事一覧

過疎の村、大平集落

新潮社の「とんぼの本」シリーズに『信州かくれ里 伊那谷を行く』という本があり、そこに「大平峠」という項目がある。大平峠は長野県の飯田市と木曽を結ぶ大平街道の途中にあり、そこに大平集落があった。それについて、 なまこ壁のある大きな土蔵、太さ40…

「この土地は売り物ではありません」

東京渋谷区松濤に「この土地は売り物ではありません」と看板がでている割合広い駐車場(間口12m、奥行25m)がある。こんな高級市街地なのにもう何年も駐車場のままだ。なぜだろう。「本駐車場の所有者は、本駐車場を売却処分する意思はありません」と続けてい…

シューマンが「赤とんぼ」

吉行淳之介のエッセイ「赤とんぼ騒動」に、山田耕筰の「赤とんぼ」のメロディがシューマンの曲から流れてきたというエピソードが紹介されている。シューマンの「ピアノと管弦楽のための序奏と協奏的アレグロ ニ短調作品134」から赤とんぼが飛びだしてきたと…

吉行淳之介「みどり色の板の道」

吉行淳之介の家の前が上野毛通りで、道を隔てた反対側に上野毛自然公園がある。そこに「細い板の道が、何本にも別れて奥のほうへ伸びている」、「坂の上へ伸びている板の道も一つあって」、その板の道=階段は102段もあった。その公園のことを「みどり色の板…

松濤美術館の「フランシス・ベーコン/リース・ミューズ7番地、アトリエからのドローイング、ドキュメント」を見る

東京渋谷の松濤美術館で「フランシス・ベーコン/リース・ミューズ7番地、アトリエからのドローイング、ドキュメント」が開かれている(6月13日まで)。副題が「バリー・ジュール・コレクションによる」とある。 美術館のホームページに展覧会の主旨が掲載さ…

ときどき、不思議な軀がある

吉行淳之介『鞄の中味』(講談社文芸文庫)を読む。吉行38歳から51歳にかけて書かれた短篇20篇を収めている。これらがとても完成度が高い。昔本書の単行本が出版されたとき、購入した記憶がある。瀟洒な箱に入っていた。 さて、本書中の「百メートルの樹木」…

山本容朗『人間・吉行淳之介』を読む

山本容朗『人間・吉行淳之介』(文藝春秋)を読む。吉行が亡くなったとき、山本は吉行と40年近くつきあってきたことになると書く。国学院大学を卒業して角川書店に入って編集者となり、吉行の著書を担当する。角川を辞めてフリーの文筆業を始める。略歴には…

小池正博 編著『はじめまして現代川柳』を読む

小池正博 編著『はじめまして現代川柳』(侃侃房)を読む。現在書かれている川柳の場合、よく目にするのは新聞川柳・時事川柳・サラリーマン川柳などだと言う。それに対して現代川柳は、文芸としての川柳を志向する作品だ。文学性が高く、塚本邦雄や岡井隆の…

ギャラリーJyの染谷玲子展「なんちゃくりく」を見る

東京北青山のギャラリーJyで染谷玲子展「なんちゃくりく」が開かれている(5月9日まで)。今回がこのギャラリー Jyでおそらく20回を超えたくらいの個展になる。私の好きな写真家だ。いつも若い女性のポートレートをフィルムカメラで撮っている。 染谷は素…

カロリーナ・コルホネン『フィンランドの不思議なことわざ』を読む

カロリーナ・コルホネン『フィンランドの不思議なことわざ』(草思社)を読む。文字通りフィンランドの諺を紹介している。なるほど、国が違えば諺も変わる。【 】内はことわざの意味。 「頭を第三の足にして走る」 → 【猛ダッシュする】 「レンズにやすりを…

コバヤシ画廊の野沢二郎展「風をふくむ、断章」を見る

東京銀座のコバヤシ画廊で野沢二郎展「風をふくむ、断章」が開かれている(4月24日まで)。野沢は茨城県生まれ、1982年に筑波大学大学院を修了している。これまで「VOCA展'97」や同年の「バングラデシュ. アジア美術ビエンエーレ」に参加し、2012年はDIC川…

『坪内稔典自筆百句』を読む

『坪内稔典自筆百句』(沖積舎)を読む。2016年、坪内の編著書が100冊を超えたことを機に、沖積舎の舎主から100句の色紙展を提案され、それをまとめて本書となった。ただ、坪内は「自慢じゃないが字が下手である。その証拠がこの本だが……」と書く。 坪内は俳…

ベストセラー作家の一覧

Wikipediaにベストセラー作家の一覧というページがあり、これが興味深い。 作家名の次に、売り上げ部数が「推定売り上げ部数(最低)と推定売り上げ部数(最高)」とあり、ついで「言語」「ジャンル・タイトル」「出版数」「国籍」となっている。ここには興…

劇作家の清水邦夫が亡くなった

劇作家の清水邦夫が亡くなった。84歳だった。早稲田大学文学部演劇科在学中の1958年、戯曲『署名人』でデビュー。岩波映画社を経てフリーに。劇団「青俳」で劇作家として活動していた68年、演出家の蜷川幸雄さんや俳優の蟹江敬三さん、石橋蓮司さんらと劇団…

吉行淳之介『私の東京物語』を読む

吉行淳之介『私の東京物語』(文春文庫)を読む。編集が山本容朗となっている。単行本の出版が1993年だから吉行が亡くなる1年前だ。すると吉行の監修というか了承を得ているのだろう。 東京を舞台にした短篇小説とやはり東京を舞台にしたエッセイを集めてい…

東京画廊の小清水漸「垂線」展を見る

DM葉書 東京銀座の東京画廊で小清水漸「垂線」展が開かれている(4月17日まで)。ギャラリーが配布しているちらしから、 小清水漸は1944年愛媛県宇和島生まれ。1966年から1971年まで多摩美術大学彫刻科在籍。(……)1960年代後半から木、石、紙、土、鉄など…

うしお画廊の井上敬一展を見る

東京銀座のうしお画廊で井上敬一展が開かれている(4月17日まで)。井上は1947年、福岡県田川市生まれ。1980年に福岡教育大学美術研究科を修了している。井上は銀座のみゆき画廊で個展をしていたが、みゆき画廊が閉じてからはうしお画廊で個展を開いている…

ギャラリーなつかの瀧田亜子展を見る

東京京橋のギャラリーなつかで瀧田亜子展が開かれている(4月17日まで)。瀧田は1972年東京都生まれ。2年間ほど中国へ留学し書を学んできた。毎年ほぼ2回の個展を繰り返してきて、旺盛な制作意欲を示している。 今回大きな作品は左右5メートルもある。今ま…

半藤一利『日本のいちばん長い日 決定版』を読む

半藤一利『日本のいちばん長い日 決定版』(文春文庫)を読む。昭和20年8月15日の前日8月14日の正午から15日の正午の玉音放送までの24時間を1時間刻みで描いている。およそ300人にもの当事者たちにインタビューを重ねて、大臣たちや軍人たちが終戦を巡って…

吉行淳之介『ダンディな食卓』を読む

吉行淳之介『ダンディな食卓』(グルメ文庫)を読む。グルメ文庫というのは角川春樹事務所が発行している文庫。吉行が亡くなって12年後に出版されている。内容は昔『夕刊フジ』に連載した食べ物に関する短いエッセイをまとめた『偽食物誌』(新潮文庫)に、…

酒村ゆっけ、『無職、ときどきハイボール』が面白そう

東大教授で、宇宙論・地球系外惑星の専門家須藤靖が朝日新聞の書評欄に、酒村ゆっけ、『無職、ときどきハイボール』(ダイヤモンド社)を紹介している。(4月10日付) 須藤はテレビ番組「孤独のグルメ」が好きだが、酒抜きである点がやや残念と書き、本書は…

√kコンテンポラリーとスペース√kの堀江栞展を見る

東京神楽坂の√kコンテンポラリーとスペース√kで堀江栞展「声よりも近い位置」が開かれている(5月15日まで=コンテンポラリー、4月17日まで=スペース)。堀江は1992年生まれ、2014年多摩美術大学美術学部日本画専攻を卒業している。2014年に加島美術で初個…

山本弘の作品解説(101)「どんど」

山本弘「どんど」、油彩、F4号(24.2cm×33.3cm) 制作年不詳。実は30年近く前買ってくれた人がいて、それ以来見る機会を失った。これも古い写真からスキャンしているが、色はかなり濃くなっているのではないか。 「どんど」はどんど焼きのこと。正月明けに…

司馬遼太郎『この国のかたち 三』を読む

司馬遼太郎『この国のかたち 三』(文春文庫)を読む。司馬のエッセイは優れていて好きだ。司馬の小説はほとんど読んでこなかったけれど、『街道をゆく』は全43巻を2回通読したくらい好きなのだ。 『この国のかたち』は雑誌『文藝春秋』の巻頭言として連載し…

小川敦生『美術の経済』を読む

小川敦生『美術の経済』(インプレス)を読む。小川は多摩美大学教授、美術ジャーナリスト、元『日経アート』編集長。 本書は7つの章からなり、「1枚の絵から見えてくる経済の成り立ち」「浮世絵に見る商業アート」「時代とともに変わる美術の価値観」「「…

白取千夏雄『「ガロ」に人生を捧げた男』を読む

白取千夏雄『「ガロ」に人生を捧げた男』(興陽館)を読む。数日前、高野慎三『神保町「ガロ編集室」界隈』(ちくま書房)を読み、「高野が退職したあと、何年かして青林堂は人手に渡る。そのあたりのことを高野ははっきりとは書いてくれない」とブログに書…

澁谷知美『日本の包茎』の書評を読んで

澁谷知美『日本の包茎』(筑摩選書)の書評を渡邊十絲子が書いている(毎日新聞4月3日付)。本書の副題が「男の体の200年史」というもの。渡辺は書く。 ……多くの男性は包茎を恥と感じるが、その価値観は男性だけのもので、女性は全然気にしていない。包茎…

橋本治『そして、みんなバカになった』を読む

橋本治『そして、みんなバカになった』(河出新書9を読む。橋本治の対談集というかインタビュー集。橋本は『桃尻娘』でデビューした作家だが、あまり注目してこなかった。でもきわめてユニークな作家で、『枕草子』や『源氏物語』、『平家物語』などを現代…

ジェームス・W・ヤング『アイデアのつくり方』を読む

ジェームス・W・ヤング『アイデアのつくり方』(CCCメディアハウス)を読む。毎日新聞書評欄の「なつかしい一冊」というコラムに田中里沙が紹介していた(3月20日付け)。 そして先輩から紹介されて出会った一冊が『アイデアのつくり方』だった。米国の広告…

コバヤシ画廊の坂本太郎展を見る

東京銀座のコバヤシ画廊で坂本太郎展が開かれている(4月3日まで)。坂本太郎は1970年、埼玉県生まれ、2000年に愛知県立芸術大学大学院修士課程を修了している。都内では2000年に当時早稲田にあったガルリSOL、2001年以降銀座のフタバ画廊や小野画廊、ギャ…