東京神楽坂の√kコンテンポラリーとスペース√kで堀江栞展「声よりも近い位置」が開かれている(5月15日まで=コンテンポラリー、4月17日まで=スペース)。堀江は1992年生まれ、2014年多摩美術大学美術学部日本画専攻を卒業している。2014年に加島美術で初個展、その後第26回五島記念文化賞を受賞し、そのため2016年の1年間パリに滞在した。地下のスペース√kでは初期の動物を描いた作品が、1,2階の√kコンテンポラリーでは最新作の主に人物画が展示されている。堀江の言葉がちらしに印刷されている。
心から好きなものを描き、その芯を確かな形として表したいとの思いで、制作してきました。描くことで見えてきたのは、傷つけられ、痛みを負い、哀しさや辛さを抱えた存在たちです。小さな声は蔑ろにされ、異を唱えるものは居場所を奪われてきました。
私が彼等を描こうとしているのは、単なる共感からだけではなく、その抗いの姿勢を継承するためでもあります。
今はもういない彼らとこれから来る彼らに、寄り添い続けていきたいと思っています。
人物画は若者たちを描いている。フランスでデッサンした人物像だ。みな不思議な表情をしている。嬉しそうではもちろんないし、かと言って単純に悲しそうだったり怒っている顔とも違っている。幸福そうな感じはそもそもない。何かに戸惑ったり、理不尽さに耐えている表情なのだろうか。
堀江は初個展では老婆や年老いたような動物などを描いてきた。ハシビロコウや死体に見える恐竜などをモチーフに作品を作ってきた。その視線は今回の人物像を描くにあたっても変わらないように見える。傷ついたもの、虐げられたものへの共感が、しかしストレートにではなく作品化することで示されているようだ。
日本画がこんな表現をできるのなら、日本画も悪くないとそっと思ったのだった。
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堀江栞展「声よりも近い位置」
2021年4月3日(土)―4月17日(土)=スペース√k
2021年4月3日(土)―5月15日(土)=√コンテンポラリー
11:00-19:00(日曜・月曜休廊)
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√コンテンポラリー、スペース√k(共通して)
東京都新宿区南町6
電話03-6280-8808