京橋の加島美術で堀江栞展「生・静」を見る


 東京京橋の加島美術で堀江栞展「生・静」が開かれている(6月4日まで)。堀江は1992年生まれ、2014年多摩美術大学美術学部日本画専攻を卒業している。今回が初個展となる。
 久しぶりに優れた若い画家の個展を見た。堀江は年老いたキリンや老婆のヌード、オオサンショウウオの顔やハシビロコウ、深海魚の顔などを大きな画面に描いている。その取り上げたテーマのユニークさに驚き、それを描ききる技術の高さに驚く。展示は2010年の作品から最近のものまで並んでいるが、2010年の作品の完成度の高さに圧倒される。堀江はこのとき大学の1年生だったはずだ。彼女には習作の時期があったのだろうか。
 個展をしている加島美術は、書画骨董が専門のいわば高級美術作品を扱っている画廊だ。今回から若手の作家の扱いも始めたのだという。その加島美術が若手作家の一番手として堀江栞を選んでいる。それは十分納得のいくことだ。加島美術にとって、この作家なら不満はないはずだし、堀江の初個展に相応しい画廊と言えるだろう。
 加島美術のホームページのテキストから、

(……)本展示会の作家である堀江栞氏の作品にはその年齢以上の思想と深さを感じ、その由来に思いを馳せると、失われつつある年月を重ねた中で生み出される独特の美しさ、やさしさ、温かさの存在があることに気がつきます。本展示はご来館いただく皆様のオアシスとなることを願っています。それは失われつつある現代における自己の感覚を触発するきっかけとしての体験でもあるかもしれません。
もう一つの魅力は、堀江栞氏の想像力です。それは自己との絶え間ない葛藤と反復から生み出されるどこか非現実的な美しさ。観る人を不思議な、時にはどこか優しさ、温かさを感じさせる作品。一人の作家が織り出す想像力が現実と幻想の間で見る人の感覚を触発する機会になればと考えております。(後略)


「時間の軌跡」(2011年)1167×910mm

「わたしは誰でもない」(2012年)606×910mm

「おまえに話しつづけた」(2012年)1940×970mm
※冒頭に掲げたDM葉書の作品は、「そっと」(2011年)970×1620mm
 ここでDM葉書に書かれた言葉も引用すれば、

(……)本展示の作家である堀江栞氏の想像力は、自己との絶え間ない葛藤と反復から生み出される非現実的な美しさを内包しており、どこか不可思議な気持ちにならざるを得ない。どこか無重力のような空間の中で、いつの間にか出会っていた生物。そこに投影された生物は他者ではなく、静かな自己であり、本来の自己の姿でもあるのかも知れない。

 堀江は今春大学を卒業している。しかし個展で会った画家はむしろ年齢より幼い印象だ。それが老いた人間や動物を好んでテーマにしている。オオサンショウウオハシビロコウもその見かけは老いた印象が強いだろう。そのことも不思議だった。
 私はふだん闇雲に歩いて画廊を回っている。すると突然こんな優れた画家に出会うことができるのだ。だから画廊回りはやめられない。
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堀江栞展「生・静」
2014年5月24日(土)−6月4日(水)
10:00−18:00(会期中無休)
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加島美術
東京都中央区京橋3-3-2(東京スクエアガーデン脇)
電話03-3276-0700
http://www.kashima-arts.co.jp
地下鉄銀座線 「京橋駅」出口3 徒歩1分
地下鉄有楽町線銀座一丁目駅」出口7 徒歩2分
JR東京駅 八重洲南口 徒歩6分