生物

大町文衛『日本昆虫記』を読む

大町文衛『日本昆虫記』(角川ソフィア文庫)を読む。大町文衛は大町桂月の次男の由。本書は元は大阪朝日新聞に昭和16年に連載されたもの。戦後角川文庫に収録されるにあたり少し手を加えているという。しかしながら昆虫学の進展は甚だしく、本書が古びてい…

本多久夫『形の生物学』を読む

本多久夫『形の生物学』(NHKブックス)を読む。カバーの内側の惹句を引く。 単細胞のゾウリムシから多細胞のヒトまで、生物は、今あるこの多様な形に、どうやってたどり着いたのか。本書では、多細胞生物の「袋」に着目し、生物体の内と外の境目について考…

浅間茂『虫や鳥が見ている世界』を読む

浅間茂『虫や鳥が見ている世界』(中公新書)を読む。副題が「紫外線写真が明かす生存戦略」で、植物や虫などを紫外線が写るカメラと可視光のカメラで撮り、並べて掲載している。各ページにすべてカラー写真が載っているから総数何百枚にもなるだろう。 普通…

須藤斎『海と陸をつなぐ進化論』を読む

須藤斎『海と陸をつなぐ進化論』(ブルーバックス)を読む。題名の進化論に惹かれて読んだのだが、海の植物プランクトンの話だった。まったく知らない世界でそれはそれとして面白かったが、植物プランクトンの一種珪藻類の歴史が延々とつづられる。たいてい…

上村佳孝『昆虫の交尾は、味わい深い…。』を読む

上村佳孝『昆虫の交尾は、味わい深い…。』(岩波科学ライブラリー)を読む。昆虫の交尾器を中心に研究を行っている昆虫学者が、ある意味専門的な内容を面白く書いている。交尾をしている昆虫を液体窒素で瞬間凍結し、解剖して調べている。昆虫の交尾といって…

前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』を読む

前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社新書)を読む。アフリカ北西部のモーリタニアへバッタの研究に行った昆虫学者の記録だ。アフリカやアジアにはlocustという恐ろしいバッタが生息する。サバクトビバッタと言うが、時にものすごく大量に…

早坂暁『公園通りの猫たち』を読んで

早坂暁『公園通りの猫たち』(ネスコ/講談社)を読む。先月脚本家の早坂暁が亡くなった。『夢千代日記』の脚本が代表作だったが、早坂の映画は見たことがなかったと思う。しかし早坂の猫に関するエッセイはとても優れたものだった。訃報を聞いて『公園通り…

『ネコ学入門』を読む

クレア・ベサント『ネコ学入門』(築地書館)を読む。副題が「猫言語・幼猫体験・尿スプレー」となっている。カバーの惹句が、 人や犬と違い、群れない動物である猫は、多様なコミュニケーション手段をもっている。 猫は人に飼われても野性を失わない生きも…

ロイヤル島のヘラジカ

竹内久美子が朝日新聞に「生物界なら1強ありえぬ」というエッセイを書いている(2013年7月24日)。参院選で圧勝した自民党に対し、メディアが「大きすぎる与党」への懸念を表明しているのを読んで、自然界のこんなエピソードを思い出したとて、ロイヤル島…

長嶺ヤス子の飼う153匹の猫

舞踏家 長嶺ヤス子へのインタビューが朝日新聞で連載されていた。その最終回から。(2010年2月12日夕刊) 私が踊る意味は「命」にあります。公演は赤字なんです。4月に東京・新宿や調布などで公演をしますが、スペインから9人も踊り手や歌手、演奏者が来…

「孫の力」という本

島泰三の「孫の力」(中公新書)がなかなか面白い。机の上に置いておいた本書の題名を見て、娘がソフトバンクの社長の話かと思ったという。いや違うんだ。これは猿学者による自分の孫の成長の生態観察記なのだ。副題が「−誰もしたことのない観察の記録」とあ…

「ザ・リンク」で教えられたちょっと変な話

コリン・タッジの「ザ・リンク」(早川書房)は面白かった。副題が「人とサルをつなぐ最古の生物の発見」といい、ドイツで発見された4700万年前の霊長類の化石を巡って、その化石がいかにすばらしいものか、どのように霊長類の進化を解明するのに役立つか縷…

「人イヌにあう」を読んで、個性ということ

コンラート・ローレンツ「人イヌにあう」(ハヤカワ文庫)はノーベル賞を受賞した動物生態学者が動物の生態を描いた作品で、同じ著者の「ソロモンの指輪」には一歩を譲るもののきわめて面白い。その犬の個性を論じているところ、 個性を誇大にいわれる人類に…

ツバメが巣をかけた

近所のマンションの防犯カメラの上にツバメが巣をかけた。雛が孵り親が忙しく餌を運んでいる。ここはちょうど通路の真上になるので糞が落ちてくる。それを注意する貼り紙があった。 ツバメの数が減っているようだ。農作物の害虫を捕食してくれていたので益鳥…

蝶の道

長谷川櫂「麦の穂ーー四季のうた2008」(中公新書)に近藤沙羅の句が紹介されている。 高々と紫苑の花や蝶の道 北鎌倉の東慶寺は草花の美しい寺。今ごろ、花畑では高く伸びた紫苑の花が風に揺れているはず。どこからともなく現れた蝶を眺めているうちに、紫…

「世界は分けてもわからない」の面白さ

渡辺剛の写真展は何回か見た。ギャラリー山口や資生堂ギャラリー、九美洞ギャラリーでもやったのではなかったか。先月の秋山画廊での個展は見逃してしまったけれど。 渡辺はアメリカとメキシコなどの国境を撮影している。それぞれの国へ入国し、国境の同じ場…

種内変異

小学校5、6年生の時の担任が宮嶋光男先生だった。植物学が専門のようだった。たくさんの植物の名前を教わったし、時々花や野菜の種、樹木の苗木などを分けてくれた。もらったオオイボタの苗は数年後花を咲かせ、それが臭くて閉口した。学校の裏庭に死んで…

早坂暁が「公園通りの猫たち」で語るいい話

一昨日紹介した早坂暁「公園通りの猫たち」には、人を救助した猫のエピソードが語られている。猫って想像以上に賢いのかもしれない。 ある日、ブーツ(という名前の猫)が珍しく、私の足もとにぶつかってくる。ブーツは、これまたホルモン異常のせいか、鳴き…

早坂暁「公園通りの猫たち」を読んで

「夢千代日記」などの脚本を書いている早坂暁の「公園通りの猫たち」(ネスコ)を読む。これが大変面白く、また猫の生態についても知らなかったことを教えられた。公園通りとは東京渋谷のNHKに続いている通りのことだ。 まず猫の喧嘩の実態が詳しく語られて…

読売農学賞を湯川淳一さんが受賞

第46回読売農学賞を九州大学名誉教授の湯川淳一さんが受賞された。受賞理由は「害虫および天敵タマバエ類の分類と生態に関する一連の研究」だ。 以前、湯川さんの作られた「日本原色虫えい図鑑」の編集のお手伝いをしたのでとても感慨深い。山梨県の昇仙峡へ…

福岡伸一「できそこないの男たち」

「生物と無生物のあいだ」が好評だった福岡伸一の新刊「できそこないの男たち」(光文社新書)は興奮するくらい面白かった。それはどうしてか? 教科書はなぜつまらないのか。それは、なぜ、そのとき、そのような知識がもとめられたのかという切実さが記述さ…

福岡伸一が語る食品添加物ソルビン酸

「生物と無生物のあいだ」(講談社現代新書)の福岡伸一が、講談社のPR誌「本」に「世界は分けても分からない」というタイトルでエッセイを連載している。9月号の第4回はソルビン酸について語っている。 福岡伸一は最初に「コンビニのサンドイッチはなぜ長…

ものすごい快感を知ったネズミ

いま評判の池谷裕二「進化しすぎた脳」(ブルーバックス)に面白いエピソードが紹介されていた。 〈報酬系〉というのはやっぱり脳の部位なんだけど、これをはじめて見つけた経緯というのが面白いんだ。ケージ(飼い籠)のなかでネズミを入れて、そこにレバー…

雑誌は見開き、そしてソロモンの指輪

ここに写真で紹介する植物図鑑が使いにくかった。左ページ上段がクロヅル(ニシキギ科)だが、矢印Aの写真もクロヅルなのだ。左ページ下段の左半分がミツバウツギ(ミツバウツギ科)で、右ページ上段がショウベンノキ(ミツバウツギ科)、右ページ下段がゴン…

「もう牛を食べても安心か」が教えること

福岡伸一「もう牛を食べても安全か」(文春新書)は狂牛病発生に合わせて企画された本かもしれないが、実に重要なことが書かれている。著者は分子生物学が専攻の青山学院大学教授。 狂牛病に感染する原理や臓器移植の危険を指摘しているが、それらの主張の前…