娘と駅ビルで待ち合わせ、家を出たらマンションの通路にゴミが落ちていた。よく見ると死んだツバメの雛だった。実はその日の朝も同じ場所で死んでいたツバメの雛を見た。通路の上にツバメの巣があるのだった。娘に少し遅れると連絡して家に戻りティッシュとシャベルを取って戻ってみると、さっきからまた悲惨な姿になっていて、通行人に踏まれたようだった。先の雛と並べて公園の植え込みの奥に穴を掘って埋葬した。
娘に事の次第を話した。生きていたら巣に戻してやればと言う。ただ巣は高いところにあり、通路はコンクリートで硬いから落ちれば即死だろう。
翌日の朝、掃除のおじさんに昨日のことを話すと、今朝も1匹死んでいて片づけたのだという。この時期になると親が育てられなくなるので落として殺すんだとまでいう。巣の真下には糞除けの箱が設置してあるので、雛が落ちたのなら箱に入るはずだ。だからこれは親が落として殺しているのだという。美容院の前の巣もそうだったけど、ちょくちょくこんなことがあるんだよ。僕は8年この仕事をしているから何度も見てきたんだよ。
娘にこのことをメールすると、殺すくらいなら孵化させなければいいのに、という。人も昔は出産をコントロールできなかったじゃん、ツバメには避妊はできないから、と答えると、「なる。」という返事だった。
しばらくしてまた娘からメールで、「ツバメ観察全国ネットワーク」の記事が送られてきた。その内容、
ツバメの巣は無傷のまま、中の卵や雛が消えてしまうことがあります。ヘビ、ツミ、モズ、イソヒヨドリなどがヒナや卵をさらうこともありますが、その巣の親とは別のツバメがヒナを巣の外に捨てているケースが少なくありません。この行動を「ツバメの子殺し」と言います。
子殺しは、結婚相手の見つからないオスが、すでにペアになっているメスを奪おうとするために起こります。独身オスは、子育て中のペアのオスとケンカをして追い払い、その巣にいるヒナや卵をくちばしにくわえて巣の外に放り出します。巣が空になるとメスが再び発情するので、そのときメスと交尾して、自分の子孫を残します。子殺し はツバメだけでなく、いろいろな鳥類と哺乳類に見られる行動です。
https://sites.google.com/view/tsubame-map/tsubame-zukan/kogoroshi
そうか、あれは別の独身オスに殺されたのだったか。先日見たNHKの動物番組でも、ゲラダヒヒのはぐれオスがファミリーを率いるオスのボスに挑戦し、ボスの攻撃で敗退した姿を紹介していた。負けたオスは左の牙が折られていた。2頭のオスは兄弟だったが、ボスが負けたら子供たちは新しいボスに殺されるのかもしれない。ライオンがそうだというから。
人間も含めて実は動物は残酷な生態から逃れられなくて、それを含んで原罪というのかもしれない。