朝日新聞に連載コラム「かあさんのせなか」があって、今日は浅田次郎だった。「タフで恋多き永遠の神秘」となっている。記者の聞き書きのようだ。
浅田次郎のお母さんは美しい人だったという。浅田の小説が映画化されて女優さんと会う機会があったが、おふくろみたいだと思ったという。おしゃれで気位が高くタフで毅然として姿勢が良くて健脚だったと。
青梅の御嶽山頂の由緒ある神社の代々神主を務める家の出、大勢の人を使っている裕福な家だった。女学校を卒業後泊り客だった復員兵のお父さんと駆け落ち同然で結婚した。
戦後闇市で成功した父親が没落して離婚、母は夜の客商売につく。一つの店に何百人とホステスがいたが、母はどの店でもナンバー1だった。
おしゃべりでものすごく作り話がうまかった。宇宙人にさらわれたことがあるとか平気で言っていた。74歳で亡くなったとき、葬式に親族ではない知らない男性がたくさん来たと浅田は書く。
大きなキャバレーでナンバー1だったというのは本当にきれいな人だったんだろう。浅田次郎は父親似なのかな。ただお母さん、こじんまりしたクラブでトップに立てたかどうか。野見山暁治の奥さんは博多のクラブのママで日本3大ママの一人と言われた。でも特に美人ではなかった。野見山によると、一度会った人のことはどんなことでも憶えていて、2度目に会ったときには黙ってその人の好みのものを出すことができた。
浅田次郎のお母さんのエピソードを読んで連想したのが宇野千代のことだった。宇野も美人で恋多き女だった。宇野が亡くなったとき瀬戸内寂聴が読んだ弔辞。
男と女の話をなさる時は、芋や大根の話をするようにサバサバした口調でした。
「同時に何人愛したっていいんです。寝る時はひとりひとりですからね」
私が笑い出す前に厳粛な表情で、
「男と女のことは、所詮オス・メス、動物のことですよ。それを昇華してすばらしい愛にするのは、ごく稀(まれ)な選ばれた人にしか訪れない」
とつづけられました。
また美輪明宏の、浮気についての読者からの質問への回答も、
そもそも浮気をしない男は「無形文化財」だと思ってください。希少な存在です。
女の人だって、心の中で「ああ、あの人ステキだわ」と思うことはいくらでもあるはず。浮気をしない女性もまた珍しいものです。事は行動に移すかどうか、だけです。
それでも軽い浮気というのは、よそのお手洗いを借りているだけぐらいに思ってください。セックスはたいへんに道徳的なものだと考えられがちですが、実際には単なる排泄です。糞尿と同じように、「たまったら出す」だけなのです。
おしっこをするのに、精神的なものは伴わないでしょう? それと同じように、性欲だって本能的なもので、精神を伴わない場合が多いのです。浮気は性的なリビドー(衝動)だけなんです。(後略)
私はすでにバツイチで卒業生だからこのあたりの話題で誰に遠慮する必要もない。また娘からは父さんブサ面でよく結婚できたねと言われている。結婚もできたし何度か浮気をする僥倖にも恵まれた。ま、振られたことの方が多かったけれども。
本来一夫一妻制が不自然だと思う。モテる人は男女とも恋や性愛を繰り返して良いのだと思う。昔は金持ちは多くの愛人を養ったし、イスラムは奥さんを4人まで認めている。恋多き友人のI君のお父さんも愛人が2人いたという。I君曰く、昔はそれが不潔だと思ったけど、今ではオヤジも奥さん一人では足りなかったことがよく分かると。
岡本かの子も家庭内に自分の愛人2人を夫岡本一平と同居させていた。
それらを禁じるのは道徳にすぎなくて、道徳は体制からの要請による。体制は時代的なもので、絶対的な合理性は持たないだろう。ボノボの生態は乱婚だが、社会は保たれている。
いや極論をぶってしまったかもしれない。