唐沢孝一『都会の鳥の生態学』を読む

 唐沢孝一『都会の鳥の生態学』(中公新書)を読む。副題が「カラス、ツバメ、スズメ、水鳥、猛禽の栄枯盛衰」というもの。唐沢は都会の鳥=都市鳥について半世紀以上にわって観察してきたという。その長年の研究実績から具体的なエピソードが満載されている。新書という形式には収まり切れないほどの情報量だ。それらがとにかく面白い。

 上野不忍池では手乗りのスズメが見られると、その写真が掲載されているが、これは私も見たことがある。

 ツバメの営巣場所の変転を長年観察して、街の再開発によってどのように移り変わっていったか報告している。こんなに変わっていったのかと驚いた。営巣地に集中してコロニー状態になると、本来一夫一婦のつがいだが、浮気をし婚外子が生まれるという。さらにメスをめぐってオスの子殺しが行なわれる。

 唐沢が設置したエサ台を観察したところによると、スズメの寿命は最長7年半だったという。日比谷濠の近くにある楠木正成像の馬の尾の中にスズメが巣作りしていることも確認している。

 カラスに関しても詳しい。唐沢には『カラスはどれほど賢いか』(中公新書)という著書もあるのだ。一時期都会のカラスは生ごみをあさるなど、社会問題化したことがあった。しかし2000年をピークにカラスは減少する。生ごみの減少がその原因だという。

 猛禽類では、都心にハヤブサチョウゲンボウが増えている。オオタカも増加しているという。

 都市鳥生態学なんて地味な内容かと思ったが、面白くて一気に読んでしまった。