浅間茂『虫や鳥が見ている世界』を読む

 浅間茂『虫や鳥が見ている世界』(中公新書)を読む。副題が「紫外線写真が明かす生存戦略」で、植物や虫などを紫外線が写るカメラと可視光のカメラで撮り、並べて掲載している。各ページにすべてカラー写真が載っているから総数何百枚にもなるだろう。
 普通のカメラは赤外線・紫外線をカットするフィルターが入っていて、レンズも紫外線を通さないようにできているというから著者の準備は大変だったろう。本書には可視光で撮った通常のカラー写真と紫外線写真が並べられている。紫外線写真は白黒で表現されている。可視光では赤かったのが紫外線では白かったり黒かったりしている。著者はそれを、紫外線を反射したり吸収したりしていると説く。真っ黒なカラスも紫外線では斑紋が現れて個体識別できるとか、黄色い菜の花も紫外線で見ると蜜のある場所を示すネクターガイドが黒く見えてチョウがそれを判別している、とか。
 そんな事例が何百と紹介されている。ただ、それ以上の展開が乏しい印象がある。何百の事例が文字通りデータの集積に留まって、そこから有意義な結論が読み取れていない印象が強い。70近い小項目は2~3ページずつで完結し、全体から何を読み取ったらいいのか、読者は消化不良を起こしてしまうのではないか。