2013-11-01から1ヶ月間の記事一覧

アフリカ文学『やし酒飲み』を読む

アフリカのナイジェリア出身作家エイモス・チュツオーラの『やし酒飲み』(岩波文庫)を読む。文庫本の表紙の惹句に「アフリカ文学の最高傑作」とある。チュツオーラはナイジェリア出身の作家だ。いままでアフリカ人の書いた本はハムザ・エルディーンの『ナ…

丸谷才一『星のあひびき』を読む

丸谷才一『星のあひびき』(集英社文庫)を読む。いつものエッセイ集。書評35本、評論(的気分)13本、随筆(的気分)12本、推薦および追悼9本、解説(する)6本、計75篇からなっている。書評は1本を除いてすべて毎日新聞に掲載されたもの。 井上ひさしの…

なびす画廊の瀧田亜子展、また少し変化した

東京銀座一丁目のなびす画廊で瀧田亜子展が開かれている(11月30日まで)。瀧田は1972年東京都生まれ。なびす画廊での個展は今年の4月に続いて今回で15回目になる。最近は春秋と年に2回も個展を行っている。作品は紙に顔料で描いている。 大きな作品が3点…

ギャラリーQの和田裕美子展がおもしろい

東京銀座のギャラリーQで和田裕美子展が開かれている(11月30日まで)。和田は1981年神奈川県生まれ、2005年に多摩美術大学美術学部彫刻学科を卒業している。今回が初個展となる。 和田の作品はユニークだ。女の子が座っていたり、腰かけていたりするが、表…

高橋昌一郎『小林秀雄の哲学』を読む

高橋昌一郎『小林秀雄の哲学』(朝日新書)を読む。新刊案内で本書の発行を知っても興味を惹かれなかった。それが読売新聞に須藤靖が書評を書いている(11月10日)のを読んで早速購入した。須藤は雑誌『UP』にエッセイを連載していて、それがとてもしゃれて…

浅草のギャラリーアビアントの「古茂田杏子 郡司宏 中佐藤滋−−人生模様・三人展−−」を見る

浅草のギャラリーアビアントで「古茂田杏子 郡司宏 中佐藤滋−−人生模様・三人展−−」が開かれている(11月29日まで)。浅草と書いたが、正確には吾妻橋を渡ってすぐの墨田区吾妻橋一丁目になる。東京スカイツリーにもとても近い。展覧会の主旨を企画した御子…

俳優座劇場プロデュース公演『もし、終電に乗り遅れたら…』を見る

俳優座劇場プロデュース公演『もし、終電に乗り遅れたら…』を俳優座劇場で見る。作=アレクサンドル・ヴァムピーロフ、演出=菊池准、出演=浅野雅博、小田伸泰、外山誠二、逢笠恵祐、若井なおみ、米倉紀之子ら。 戦後ソ連の劇作家ヴァムピーロフの戯曲。終…

吉岡徳仁展と高柳恵里の雑巾作品

東京都現代美術館の『吉岡徳仁−クリスタライズ』を見た。ちらしによると、 吉岡の公立館初の大規模個展として開催される本展では、新作として、音楽を聴かせながら結晶化させた絵画「Swan Lake」、結晶化した薔薇の彫刻「Rose」、7つの糸から生み出される椅…

人間原理が語られている!

青木薫『宇宙はなぜこのような宇宙なのか』(講談社現代新書)を読む。副題が「人間原理と宇宙論」、つまり人間原理を語った本だ。人間原理の主張については「まえがき」に、次のように書かれている。 宇宙がなぜこのような宇宙であるのかを理解するためには…

みゆき画廊の大沢昌助展がすばらしい

東京銀座のみゆき画廊で大沢昌助展が開かれている(11月30日まで)。DM葉書にみゆき画廊主の牛尾京美のあいさつが書かれている。 生誕110年に際し ご家族のご厚意により展覧会が出来る事を大変嬉しく思います。 1980年代の作品を中心に展示いたします…

ギャラリー現の近藤あき子展「遐想----distant thought----」を見る

東京銀座のギャラリー現で近藤あき子展「遐想----distant thought----」が開かれている(11月23日まで)。近藤は1948年新潟県生まれ。1966〜1972年、早稲田大学および同大学院でロシア文学を専攻する。1976〜1986年、新起流美術研究所等にて油絵を学ぶ。1987…

コバヤシ画廊の西成田洋子展「記憶の領域2013」を見る

東京銀座のコバヤシ画廊で西成田洋子展「記憶の領域2013」が開かれている(11月23日まで)。西成田は1953年茨城県生まれ、1987年より東京、水戸、ニューヨークなどでもう30回以上も個展を開いている。作品は大きな奇妙な立体で、古着などを縫い合わせて造形…

筒井康隆『聖痕』を読む

筒井康隆『聖痕』(新潮社)を読む。私が尊敬する評論家三浦雅士が毎日新聞の書評でほとんど絶賛していた(8月11日)。では読まない訳にはいかない。その書評から、 ……頭脳明晰にして眉目秀麗なる葉月貴夫の物語。そのあまりの美しさに幻惑された変質者に幼…

牛脂注入肉のニュースで思い出した

牛脂注入肉という加工肉の記事が朝日新聞に載っていた(11月14日)。 ほとんど脂のない赤身の肉が、剣山のような機械を通り抜けると、霜降り肉のような姿に変わっていた。その間、わずか1、2分。(中略) 赤身肉の塊がベルトコンベヤーを流れていく。主に…

鴎座公演『しあわせ日和』と『森の直前の夜』を見る

鴎座第II期上演活動4 『しあわせ日和』と『森の直前の夜』を中野のテルプシコールで見た。『しあわせ日和』はサミュエル・ベケットの台本、それを今回演出の佐藤信が大幅に改変して上演した。ベケットの台本は登場人物が2人、50歳くらいの女ウィニーと60歳…

コバヤシ画廊の野沢二郎展「Grayish Dreams」が始まっている

東京銀座のコバヤシ画廊で野沢二郎展「Grayish Dreams」が始まっている(11月16日まで)。野沢は茨城県生まれ、今年55歳になる。1982年に筑波大学大学院を修了している。これまで「VOCA展'97」や同年の「バングラディシュ.アジア美術ビエンエーレ」に参加し…

飯島耕一が亡くなった

飯島耕一が10月14日に亡くなった。83歳だった。飯島耕一はシュールレアリスムの詩人。1953年、詩集『他人の空』を書肆ユリイカから発行する。その後何冊もの詩集を出すが、私にとって第一詩集の中の「他人の空」が忘れられない。 他人の空 鳥たちが帰って来…

ギャラリー現の野中英和展が難しいけれど魅力的だ

東京銀座のギャラリー現で野中英和展「存在の不可能性 無限への渇望としてのII」が開かれている(11月16日まで)。略歴によると、野中は1947年横浜生まれ、20歳の頃哲学者の信太正三ゼミに参加してニーチェを研究したとある。1970年横浜芸術研究所でデッサン…

豊島区立目白庭園へ行った

池袋と目白の間にあるギャラリーを訪ねていったとき、白壁の長屋門があった。よく見ると「豊島区立目白庭園」とあって、入場無料とある。早速入ってみた。門の内側に受付があり、案内パンフが置かれている。それによると、開設が平成2年と新しい。敷地面積…

金井美恵子『小さいもの、大きいこと』を読む

金井美恵子『小さいもの、大きいこと』(朝日新聞出版)を読む。「目白雑録5」と副題があり、朝日新聞出版のPR誌『一冊の本』に連載されていたものをまとめたエッセイ集で、本書が5冊目となる。いつもチョー辛口の時評が書かれているが、本書は大震災後の2…

森美術館の「六本木クロッシング」で柳幸典を見る

六本木の森美術館で「六本木クロッシング〔アウト・オブ・ダウト〕展」が開かれている(2014年1月13日まで)。展覧会のちらしより、 日本のアートシーンを総覧する3年に一度の展覧会シリーズ「六本木クロッシング」。4回目となる本展では、東日本大震災以…

いりや画廊の姫野亜也展「隠沼」がとても良い

東京台東区の入谷駅近く、いりや画廊で姫野亜也展「隠沼(こもりぬ)」が開かれている(11月16日まで)。姫野は1990年大分県生まれ、2012年に武蔵野美術大学彫刻科を卒業し、現在同大学大学院に在籍し来春卒業見込みという。今までグループ展やアートプログ…

自費出版の売られ方

以前、自費種出版について書いたことがあったが、そこで自費出版の本は書店には並ばないと書いた。ところが最近都内の中型書店で、自費出版の本が書店の棚に並んでいるのを見つけた。写真がそれだが、この書店では新潮選書や講談社選書メチエ、中公叢書、NHK…

芸術院会員選挙をテーマにした『蒼煌』を読む

黒川博行『蒼煌』(文藝春秋)を読む。日本芸術院会員の選挙を巡る話。先日、日展の書の入選選考に関して、実は日展顧問から各会派に入選者の割り当てがあったというニュースを聞いて、そのあたりのことを書いた小説がこれだと紹介されていたので読んだ。 日…

お宝:1967年版のスタニスワフ・レム『泰平ヨンの航星日記』

SF

1970年に翻訳発行された偉大なポーランドのSF作家スタニスワフ・レムの『泰平ヨンの航星日記』(ハヤカワ・SF・シリーズ)である。表紙を見るとスタニスラフ・レムとなっている。昔はスタニス「ラ」フと思われていたのだ。訳者は袋一平、明治30年生まれのロ…

今年も楽しい新井コー児展が始まった

東京銀座1丁目のなびす画廊で恒例の楽しい新井コー児展「そろそろ時合い?」が始まった(11月9日まで)。新井は1973年群馬県高崎市生まれ、1996年に多摩美術大学油画専攻を卒業している。なびす画廊では2004年から今回で10回の個展を開いている。 新井はい…

秋の花々と実

秋の花々が咲き果物が実っている。銀木犀や菊、石蕗にシュウメイギク、木瓜、イモカタバミは秋の花だっけ? ムベと花梨、ピラカンサなど。 銀木犀 (参考)金木犀 菊 石蕗(ツワブキ) シュウメイギク、名前と異なりアネモネの仲間 木瓜(ボケ) イモカタバ…

ポルトリブレの林晃久展がおもしろい

東京新宿2丁目のfree art space ポルトリブレで林晃久展「erotica 9-XII − 魅惑の・・・。 −」が開かれている(11月11日まで)。林はどこで何年に生まれたか明かしてくれない。ただ、このポルトリブレでも何回も個展をしているし、横浜や銀座、高輪台のギャ…

先輩作家の影響について

あるアートフェアで映像作品を見た。小さなモニターに映し出された映像はぼんやりした若い女性の顔を示している。そのぼんやりした顔ですぐに、この映像がどのようにして作られたか分かった。たくさんの顔写真を顔の1点を中心にして合成したのだろう。 昨年…

ギャラリーテムズの北崎洋子展がすばらしい

東京小金井市のギャラリーテムズで北崎洋子展が開かれている(11月3日まで)。北崎は1960年女子美術短期大学美術科卒業、個展は、ぎゃるり しらの、ギャラリー汲美、ギャラリー砂翁、中和ギャラリー、K'sギャラリーなどで行ってきた。ここギャラリーテムズ…