いりや画廊の姫野亜也展「隠沼」がとても良い


 東京台東区入谷駅近く、いりや画廊で姫野亜也展「隠沼(こもりぬ)」が開かれている(11月16日まで)。姫野は1990年大分県生まれ、2012年に武蔵野美術大学彫刻科を卒業し、現在同大学大学院に在籍し来春卒業見込みという。今までグループ展やアートプログラムなどには参加しているが、今回が初個展となる。私は昨年のアートプログラム青梅「地への雫」の、乗願寺の境内に置かれていた小松石の立体作品「雨垂れ」で初めて知った。石彫の作家だ。
 姫野は今回御影石を彫っている。DMの写真について、葉書には次のように書かれている。

表面と内面の両局面から彫ることで、石という固体に内部を形成し、表層に残る行為跡によって、作品に動きを感じさせ石に変化を及ぼしています。

 これは姫野の言葉なのだろうか、作品の見事な解説になっている。姫野の作品は形が美しい。





 小品は直方体の上面の背をちょっと持ち上げたり、上部に溝を切ったりして、矩形の塊に少し表情をつけている。
 大きな作品ではDMの言葉のように内部が作られている。器のように内部を穿ち、それに蓋を付けている作品もある。DMの写真はその蓋をずらして構造を見せている。
 蓋のない大きな器のような作品は、形に微妙な歪みというか崩しが与えられていて、それが作品の美しさを作っている。端正な形とは真逆と言ってもよく、どこか楽の茶碗を思い出す。
 石を使って柔らかい表情の作品を作っている。姫野の作品は端的に美しい。優れた作家の誕生を喜びたい。大学では丸山富之に師事していると画廊のオーナーが語っていた。小品に丸山の影響が感じられた。
 初めて行ったいりや画廊についてひと言。東京メトロ日比谷線入谷駅すぐ近くの新しい画廊で、80平方メートルという広さがあり、入口も広く路面店であるので、大型の彫刻作品の搬入も楽にできるという。天井には吊り下げる装置があり、立体作品やインスタレーション、重量のある作品の設置には最適だろう。奥行きも20m近くあり、平面作品の展示も相当数が可能だ。天井高も3mを超えている。
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姫野亜也展「隠沼」
2013年11月4日(月)〜11月16日(土)
11:30〜19:30(最終日16:00まで)全日開廊
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いりや画廊
東京都台東区北上野2-30-2
電話03-6802-8122
http://www7b.biglobe.ne.jp/~gallery_iriya/
東京メトロ日比谷線入谷駅1番出口より徒歩1分