東京銀座のコバヤシ画廊で野沢二郎展「Grayish Dreams」が始まっている(11月16日まで)。野沢は茨城県生まれ、今年55歳になる。1982年に筑波大学大学院を修了している。これまで「VOCA展'97」や同年の「バングラディシュ.アジア美術ビエンエーレ」に参加し、銀座のコバヤシ画廊では2000年以降毎年個展を開いている。さらに昨年はDIC川村記念美術館の企画展「抽象と形態」にも参加した。
野沢の抽象絵画は塗り重ねられた色面からなっている。その抽象的な色面には何も具体的なものは描かれていない。今回はその静謐な画面に最後に強い色が置かれている。それは縦に太い筆触だったり、横に引かれた帯だったり、アクセントのような色の塊だったりする。それらはさらに具象的な形態とは無関係だ。ただ、帯やアクセントの色塊の背後に続く静謐な色面には不思議な奥行きがある。その奥行きのある空間を見ると、野沢の画面にかすかに具象的なものが感じられる。
10数回開かれてきたコバヤシ画廊の個展を見ていると、毎年わずかにしか変化してこなかったような印象がある。いつも前年と比べて驚くようなことはなかった。しかし、こうして新しい作品を見れば、野沢はゆるやかに、だが確実に変化してきていることが分かる。その変化というのは、洗練とか深化という言葉が相応しいのではないか。
むかし野見山暁治さんが言われた言葉を思い出す。人間50を過ぎるとものがよく見えるようになるんだ、と。
野沢二郎展「Grayish Dreams」
2013年11月11日(月)〜11月16日(土)
11:30〜19:00(最終日は17:00まで)
・
コバヤシ画廊
東京都中央区銀座3-8-12 ヤマトビルB1F
電話03-3561-0515
http://www.gallerykobayashi.jp/