森美術館の「六本木クロッシング」で柳幸典を見る

 六本木の森美術館で「六本木クロッシング〔アウト・オブ・ダウト〕展」が開かれている(2014年1月13日まで)。展覧会のちらしより、

日本のアートシーンを総覧する3年に一度の展覧会シリーズ「六本木クロッシング」。4回目となる本展では、東日本大震災以降明らかに高まっている社会的な意識を反映しつつ、日本の現代アートの「いま」を、歴史やグローバルな視点も参照しながら、問いかけます。
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これまでのあらゆる社会通念や既存の制度に向けられた疑念(ダウト)から、アートを通じてどのような生産的な議論を生み出せるのでしょうか? 1970〜1980年代生まれの若手を中心に、世代の異なるアーティストや在外/日系アーティストも含む29組の芸術的実践を通して、先の見えない日本の次のステージにどのような風景が見えてくるのか、観客のみなさんと一緒に考えたいと思います。

 会場に入ると小林史子の作った椅子の壁が立ちふさがる。100脚以上はあろうかと思えるほどの大量の椅子で壁を作っている。塩田千春の作品、崩壊した東ドイツの画一的な集合住宅の窓枠を積み重ねたインスタレーションを思い出す。毎日新聞に紹介されていた『フリースタイル』23号の鏡明植草甚一について評している言葉「趣味はあるけど、主義主張がないんだよね」を連想する。
 ついで風間サチコの大きな木版画、風間は太平洋戦争や原発木版画で風刺している。同じ部屋に中村宏の戦後のルポルタージュ絵画がある。この優れた仕事を中村は弱冠20代前半で行っている。
 宮脇愛子の作品かと思ったら管木志雄のインスタレーションだった。下の写真が管木志雄の作品。

 柳幸典の大きな作品が見られたのは儲けものだった。柳は着色した砂で世界の国旗を作り、砂の国旗の容器に蟻を入れ、国旗どうしを細いパイプで繋いでいる。蟻は国旗の容器を這い回りトンネルである蟻の道を作り、トンネルを作るために掘った砂を移動させる。国旗は蟻によって筋状の道ができ、最後は国旗の模様がぐじゃぐじゃになってしまう。展示されている作品は、途中で蟻を排除し、砂を固定しているのだろう。ヨーロッパで展示したときは動物虐待だと非難されたこともあったという。




 見終わって、個々の作品にはおもしろいものがあったものの、全体に散漫な印象しか持てなかった。森美術館10周年記念展と謳われている。もう開館して10年も経ったのか。隣でやっていたスヌーピー展はとても盛況で、ロビー階のエレベーター入口には「入場30分待ち」とあった。森美術館は有意義な企画も多く、人気のあるイヴェントと併催することで、入場者数も確保しているのだろう。10周年おめでとう!
 先週通りかかった虎の門では、森ビルが50階建ての超高層ビルを建設していた。その下をマッカーサー道路が通るらしい。愛宕山をはるか眼下に見下ろし、霞ヶ関ビルを低層ビルに変えてしまう超高層ビル、性懲りもなくまたバベルの塔を作りおってとエホバに怒られなきゃいいけど。