2018-01-01から1ヶ月間の記事一覧

『美しきものの伝説』を見る

宮本研『美しきものの伝説』を文学座アトリエで見る。文学座のホームページから、そのあらすじ。 物語は大正元年、伊藤野枝が社会主義活動家・堺俊彦の売文社を訪ね、 大杉栄や平塚らいてうに出会う場面から始まる。 〈売文社〉〈芸術座〉をめぐって、人々が…

前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』を読む

前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社新書)を読む。アフリカ北西部のモーリタニアへバッタの研究に行った昆虫学者の記録だ。アフリカやアジアにはlocustという恐ろしいバッタが生息する。サバクトビバッタと言うが、時にものすごく大量に…

吉行淳之介『わが文学生活』を読む

吉行淳之介『わが文学生活』(講談社文芸文庫)を読む。吉行淳之介についてはほとんどを読んだとまでは思っていないが、主要な単行本は読んだつもりでいた。しかし、この本のことは知らなかった。昭和40年に『私の文学放浪』が発行されている。本書はその続…

クルト・ヴァイルの歌曲

読売新聞に鈴木幸一による田代櫂『クルト・ヴァイル』(春秋社)の書評が載っている(1月28日)。 ドイツの作曲家クルト・ヴァイル(1900年〜50年)といっても、音楽通ですら、ブレヒトとつくった「三文オペラ」や、米国に亡命後の「セプテンバー・ソング」…

東京国立近代美術館で熊谷守一展を見る

東京国立近代美術館で熊谷守一展が開かれている(3月21日まで)。熊谷は1880年生まれ、1977年に97歳で亡くなっている。高齢まで生きたが、熊谷らしい作品を描くようになったのは60歳くらいからだ。 熊谷ははっきりした輪郭線を描いていて、輪郭線に縁どられ…

安田理央『巨乳の誕生』を読む

安田理央『巨乳の誕生』(太田出版)を読む。副題が「大きなおっぱいはどう呼ばれてきたのか」というもので、巨乳という概念がいつ生まれ、どのように受容されてきたかを、雑誌のグラビアやアダルトビデオを素材に分析している。その名前も、ボイン、デカパ…

高橋順子『夫・車谷長吉』を読む

高橋順子『夫・車谷長吉』(文藝春秋)を読む。3年前に亡くなった作家車谷長吉の思い出を妻の詩人高橋順子が書いている。二人は50歳少し前に結婚した。車谷が高橋の詩を読み、絵手紙を送り続ける。その頃二人ともほとんど無名だった。高橋は自費出版の仕事を…

DIC川村記念美術館、日本画の名品売却

朝日新聞が、佐倉市のDIC川村記念美術館が所蔵する日本画の名品を売却することを決めたと報じている。 長谷川等伯や横山大観の傑作、全て売却へ DIC美術館 印象派や現代アートなど約1千点の幅広いコレクションで知られるDIC川村記念美術館(千葉県佐…

ボルヘス『語るボルヘス』を読む

ボルヘス『語るボルヘス』(岩波文庫)を読む。ボルヘスが1978年にブエノスアイレスのベルグラーノ大学で行った5回の講演を収めたもの。正確には5月24日から6月23日まで、ほぼ1カ月間に行った講演で、極めて密度が高く驚いてしまう。5回のテーマは、「書物」…

沼野允義の書評から

毎日新聞に沼野允義が阿部公彦『史上最悪の英語政策』(ひつじ書房)と鳥飼玖美子『英語教育の危機』(ちくま新書)の書評を書いている(1月21日)。 阿部の本は大学入試の改革に焦点を合わせた緊急提言だという。入試改革ではスピーキング(話す能力)もテ…

平松洋『最後の浮世絵師 月岡芳年』を読む

平松洋『最後の浮世絵師 月岡芳年』(角川新書)を読む。新書だがカラー版で、全200ページのうち、7割強の146ページがカラー図版となっている。その分、文章ページが50ページもないけれど。 芳年は「血みどろ絵」が有名だ。生首から滴る血をすする侍や、人の…

日本橋高島屋6階美術画廊Xの重野克明展を見る

東京日本橋高島屋6階美術画廊Xで重野克明展「ザ・テレビジョン」が開かれている(1月29日まで)。重野は1975年千葉市生まれ、2001年に東京芸術大学油画専攻を卒業し、2003年に同大学大学院版画専攻を修了している。2000年に東京銀座の青樺画廊で初個展、以来…

ギャラリー椿のオークションが始まる

今日から京橋のギャラリー椿で恒例のオークションが始まる。 オークションは1月19日(金)、20日(土)、21日(日)、22日(月)の4日間。誰でも自由に入札できる。400点以上の出品点数だ。ギャラリー椿は銀座・京橋地区でも特に大きなギャラリーだが壁面…

野見山暁治『じわりとアトリエ日記』を読む

野見山暁治『じわりとアトリエ日記』(生活の友社)を読む。2013年11月から2017年2月までの3年4カ月間の野見山さんの日録が収録されている。40カ月分の日録が500ページに収まっている。最初の『アトリエ日記』が2003年9月から始まっているから、もう14年以上…

小谷野敦『文学研究という不幸』を読む

小谷野敦『文学研究という不幸』(ベスト新書)という奇書を読む。人文学の研究者たちの実名を挙げて業績の有無と得られた大学等の地位について詳しく紹介している。人名索引でみると約800人が取り上げられている。それらを小谷野はおよそ容赦なく斬り捨てる…

森洋子『ブリューゲルの世界』を見ている

森洋子『ブリューゲルの世界』(新潮社とんぼの本)を見ている。「野外での農民の婚礼の踊り」という絵がある。キャプションは「目を見張らされるのは農婦たちの多種多様な「頭巾。当時、女性はみな頭巾をかぶっており、巻き方にも各自の工夫があった。……」 …

歌詞を書いた(その5)

歌詞を書いてみた。その第5弾。 不器用な女 目薬をつけるたびに笑われた おまえはほんとに不器用なんだからと そう、私は器用じゃないの あなたを真剣に愛することしかできない お風呂が長いんだねって笑われた いったいどこを洗っているんだいって 言えな…

谷沢永一『運を引き寄せる十の心得』を読む(その2)

谷沢永一『運を引き寄せる十の心得』(ベスト新書)を読む。ここに「中村幸彦先生へのご恩返し」という章がある。中村幸彦は京都大学の国文科出身だったが、戦争中で就職口がなく、初め天理図書館に司書で入った。その後先輩の野間光辰が九州大学の教授に押…

谷沢永一『運を引き寄せる十の心得』を読む

谷沢永一『運を引き寄せる十の心得』(ベスト新書)を読む。Amazonで取りよせて机上に置いておいたら、娘が見て父さんなんでこんな本買ったの? と訊く。自分でもなぜ買ったか忘れてしまった。誰かの書評を読んで取り寄せた記憶はあった。谷沢永一はむかし『…

大江健三郎・古井由吉『文学の淵を渡る』を読む(その1)

大江健三郎・古井由吉『文学の淵を渡る』(新潮文庫)を読む。1993年から2015年までに行われた大江と古井の文学をめぐる6回の対談をまとめたもの。いずれも質が高くすばらしい対談集だ。中に「百年の短篇小説を読む」というのがあり、これは雑誌『新潮』1996…

高井有一『立原正秋』を読む

高井有一『立原正秋』(新潮文庫)を読む。作家立原正秋の伝記だが、高井にとって立原は面倒見の良かった先輩にあたる。 私が高校生のとき、親友が立原を大好きで強く進められて何冊も読んだ。彼はシナリオライターを目指していて、作家では立原が、映画監督…

歌詞を書いた(その4)

歌詞を書いてみた。その第4弾。 私は子どもだった 私は13だった お兄さんが大人に見えた 私のこと好きだって分かった でも私は子どもだった その次会ったとき もう私は子どもじゃなかった お兄さんは彼女を連れていた きれいな人だった あれからずいぶん経…

吉岡まさみの「ドクメンタ雑感」から

銀座のSteps Galleryのオーナー吉岡まさみは作家でもある。昨年は呼ばれてドイツでのグループ展に参加してきた。その折、一緒に行った仲間たちと「ドクメンタ14」を見てきた。それを見た印象をA4判4枚にまとめて画廊の入り口に置いてある。その「ドクメンタ…

岡田暁生『クラシック音楽とは何か』を読む

岡田暁生『クラシック音楽とは何か』(小学館)を読む。さすが岡田暁生だ、とても分かりやすいクラシック音楽の入門書だ。クラシック音楽は3つの時代に分けられると書く。18世紀前半までのバロック、18世紀後半からのウィーン古典派、19世紀のロマン派、こ…

早坂暁『公園通りの猫たち』を読んで

早坂暁『公園通りの猫たち』(ネスコ/講談社)を読む。先月脚本家の早坂暁が亡くなった。『夢千代日記』の脚本が代表作だったが、早坂の映画は見たことがなかったと思う。しかし早坂の猫に関するエッセイはとても優れたものだった。訃報を聞いて『公園通り…

『ジャコメッティ』を見る

映画『ジャコメッティ』を見る。スイスの世界的な彫刻家ジャコメッティを主人公にした映画で監督はスタンリー・トゥッチ。昨日の朝日新聞の夕刊に真魚八重子の映画評が掲載されていた。 彫刻家のジャコメッティは、油彩画やデッサンも多く残した。本作は彼が…

歌詞を書いた(その3)

歌詞を書いてみた。その第3弾。 キウイフルーツ わたしキウイフルーツ大好き 甘いじゃない ちょっと すっぱいじゃない 入ってる種もかわいいし キウイフルーツ大好き わたしキウイフルーツ大好き キウイはコアラが好きなんだ 彼が言うの ばっかみたい コア…

歌詞を書いた(その2)

歌詞を書いてみた。その第2弾。 あんたが一番好きだった あんたはあたしの一番大事な人だった 耳が動かせるって自慢していた でもお釣りの計算ができなかった そんなあんたが好きだった あんたはあたしの一番大事な人だった 何人もの女を泣かせたって自慢し…

歌詞を書いた

歌詞を書いてみた。 あんたはだあれ あんた 口説くの上手ねえ あんなこと言われたの初めてよ 誰にでも同じこと言ってんでしょ あたしだって その気になっちゃうわ あんた上手ねえ ホントよ あんなことされたのあたし初めて 誰に教わったの そのテクニック 可…

玄関の絵を掛け替えた

新年に玄関の絵を掛け替えた。新しい絵は、山本弘「山沼」、油彩、6F。1976年作、山本46歳の作品。飯田市の代表的な山、風越山を後ろに、手前に白く光る沼が描かれ、中景にこれは梨の花だろうか、白い花が咲いている。飯田市の西にある風越山がやや暗く描か…