吉行淳之介『わが文学生活』を読む

 吉行淳之介『わが文学生活』(講談社文芸文庫)を読む。吉行淳之介についてはほとんどを読んだとまでは思っていないが、主要な単行本は読んだつもりでいた。しかし、この本のことは知らなかった。昭和40年に『私の文学放浪』が発行されている。本書はその続編の性格も持っていながら、必ずしもそれにこだわってはいない。昭和58年から2年間、講談社から『吉行淳之介全集』が刊行された。その折りに吉行と講談社の編集者との対談が行われ、それが月報に掲載された。本書はその対談をまとめたもので、単行本は昭和60年に発行され、それが今度初めて文庫化されたものらしい。
 吉行淳之介の対談は面白いと定評があり、対談集もたしか何冊もあって事実おもしろい。本書もその例にもれず面白いのだが、何か格別の発言があるわけでもない。私なんかは吉行ファンだから一人面白がっているけれど、だれが読んでも同じ意見かどうかは保証の限りではない。
 あるいは対談相手が編集者なので、吉行に対するどこか遠慮があって、底が抜けるような面白さにはなっていないのかもしれない。いや、編集者だからこそ、手堅い面白さではあるのだが。
 以前読んだ吉行の対談集にはきわめつけの面白いのがあった。それを紹介したのが下記のものだ。


吉行淳之介全集第11巻『全恐怖対談』を読む(2014年2月15日)

淀川長治と吉行淳之介の対談(2014年2月4日)

纏足の女性との結婚式が興味津々だ(2014年2月20日