平松洋『最後の浮世絵師 月岡芳年』を読む


 平松洋『最後の浮世絵師 月岡芳年』(角川新書)を読む。新書だがカラー版で、全200ページのうち、7割強の146ページがカラー図版となっている。その分、文章ページが50ページもないけれど。
 芳年は「血みどろ絵」が有名だ。生首から滴る血をすする侍や、人の頭の皮を削ぐやつや、女を吊るして鮟鱇切りしてるものなど、凄惨な絵で強烈な印象を与えている。しかし、本書によれば、血みどろ絵を描いていたのはわずかな期間で、風俗的な作品、つまり美人画など、また武者絵や妖怪たち等、様々な画題を扱っている。
 『南総里見八犬伝』の一場面を描いた「信乃と見八 大屋根での決闘」など、構図が斬新で驚くばかりだ。
 意外だったのが芳年は江戸の浮世絵師だと思っていたのが、明治25年まで生きていて、その弟子に水野年方がおり、水野の弟子に鏑木清方、鏑木の弟子に伊東深水がいることだ。芳年から京都画壇にまで続いていたのか。


最後の浮世絵師 月岡芳年 (角川新書)

最後の浮世絵師 月岡芳年 (角川新書)