吉岡まさみの「ドクメンタ雑感」から

 銀座のSteps Galleryのオーナー吉岡まさみは作家でもある。昨年は呼ばれてドイツでのグループ展に参加してきた。その折、一緒に行った仲間たちと「ドクメンタ14」を見てきた。それを見た印象をA4判4枚にまとめて画廊の入り口に置いてある。その「ドクメンタ雑感」がおもしろかった。その中からとくにおもしろかった部分を勝手に要約して紹介したい。

 ドクメンタは凄かった! などと言いたいわけではない。作品一つひとつを見ていくと、感動するような逸品というものはなかったような気もするし、絵画という表現が見られなかったから、「絵画は終わった」と言いたいわけでもない(終わっていない)。ただ、「何かが違う」と思ったことを素直に伝えたいだけなのである。「何かが違う」というのは、日本の今の美術というか、作品が「違う」ということなのである。


 では「何かが違う」の「何か」とは何か。そこをもう少し考えてみたい。


 日本の美大の学生やごく若い作家たちを見ていて感じるのは、まず第一に「勉強してないなあ…」という印象である。大学で一所懸命に制作すること、それが勉強だと勘違いしている。勉強とは本を読むことと、他の作家の作品をたくさん見て歩くことである。そしたら作品も変わっていくのになあと思う。


 まるでイラストか、と思うようなちゃらちゃらした「カワイイ」作品や、キャラクターもの、美少女を描いて自己満足している困った人たち。超絶技法か何か知らないが、写真以上! とか言ってその描写力だけを競っている薄っぺらな作品。日本以外の国では見ることのできない絵画コンクールというものに、入選してはしゃいでいる坊ちゃん嬢ちゃん。なんでもいいからただ描き続けていればいいのだと、相も変わらず同じような抽象画を発表し続けるシジフォスみたいな方々。継続は力なり、と勘違いしている御仁。


 どうしてもこれを言わなくては、私は死んでも死に切れない、というものがあるのか。そして、それはあなたにとってだけの宝であるのか、そうではなくて、作品を見た人が衝撃を受けて、その人の人生観を変えてしまうほどのメッセージを秘めているのかと言うことに尽きるとわたしは考えるのだが、どうだろう。

 吉岡のエッセイはまだ続くが、ここまでとしよう。興味があれば画廊へ行けば入手できる。
 吉岡は画廊主であり作家であるが、同時に優れた批評家でもある。それはこの文章からも明らかだろう。その主張は厳しすぎると感じる作家も多いかもしれないが、吉岡の主張は実に真っ当である。ぜひ、この文章を味読してほしい。
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Steps Gallery(ステップス・ギャラリー)
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