STEPSギャラリーの日影眩展「ニューヨークから東京へ」を見る

 東京銀座のSTEPSギャラリーで日影眩展「ニューヨークから東京へ」が開かれている(3月24日まで)。日影は1936年兵庫県生まれ、1976年に法政大学文学部哲学科を卒業している。1994年から2016年までニューヨーク在住、その後東京に住んでいる。1980年に田村画廊で初個展、以来ニューヨークのギャラリーをはじめ様々な画廊で個展をひらいてきた。STEPSギャラリーでは3回目の個展になる。







 日影は地面近くから見上げる仰視法の作品を描いてきた。今回もその手法の作品が何点か並んでいる。しかし最近は描かれた人物を地の色で切り取るような作品を描いている。今回はその切り取りの手法がさらに極端になっていて、人物像=図柄が画面全体の1割くらいにまでなっているものもある。ゲシュタルト心理学でいう図と地の関係の「地」が進出して図が縮小している。日影は街の新しい風俗を描いてきた。ニューヨークとか東京とかの流行の先端的ファッションを身につけた女性やサラリーマンを描いてきた。ただ正面から描くのではなく、地面近くから仰視するような画角で作品を作ってきた。それが地を表に出すような作風に変化している。この新作は何だろう。
 圧倒的な面積を占める地に侵食されて、風俗的なイメージの図が本来のメッセージ性を奪われつつある。画面はイメージの痕跡のような形態が残されている。もしかしたらここには何か新しい造形の萌芽が生まれつつあるのだろうか。痕跡のような小さな図を伴った圧倒的な地が主体となるような絵画が? 今年82歳を迎えるベテラン画家の今後が面白いのかもしれない。
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日影眩新作展「ニューヨークから東京へ」
2018年3月13日(火)〜3月24日(土)
12:00−19:00(最終日17:00まで)日曜休廊
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Steps Gallery(ステップス・ギャラリー)
東京都中央区銀座4-4-13 琉映ビル5F
電話 03-6228-6195
http://www.stepsgallery.org
東京メトロ銀座駅B1・B2出口より徒歩1分