山口博『戦国北条氏』を読む

 山口博『戦国北条氏』(中公新書)を読む。副題が「関東の覇者、五代100年の軌跡」というもので、北条早雲から始まる戦国時代の北条氏五代の歴史を詳しく書いている。この北条氏は、鎌倉幕府の執権北条氏と区別して戦国北条氏と呼ばれる。

 北条氏は今川氏、武田氏、上杉氏、徳川氏らと領地を巡って争い、戦国時代らしく敵味方が目まぐるしく交代し、裏切りも数限りない。山口博はそれらの争い=戦闘を詳しく紹介する。人名索引はないが、登場人物はおそらく数百人に及ぶだろう。普通に読んでいては登場人物たちが敵なのか見方なのか、混乱してよく分からないくらいだ。

 まるで互角の囲碁の勝負のように陣地を採ったり取られたりする。今川、武田、上杉、徳川と、その時々の形勢に従って敵対し、次には同盟を結んだりしている。

 しかし、豊臣秀吉が政権を取ってから次第に敵対するようになり、ついに秀吉の怒りを買い北条攻めが決定する。豊臣軍は織田、徳川、前田、上杉らを総合して22万人の軍勢となり北条の小田原城を囲む。籠城していた北条一族はついに投降し、北条氏は滅亡する。この北条氏の最後を語る章は劇的な展開をリアルに経時的に語っていて読んでいて飽きさせない。

 それにしても敵味方が入り乱れ、裏切りもその後の和解も度重なると、裏切りがさほど決定的な断絶にならないのが興味深かった。

 本書では数多くの小さな戦いも詳しく記述されていて、一方それが煩わしくもあり、新書という普及書でありながら、ほとんど専門書の相貌を見せているようだった。

 わが友人の先祖である北条氏に仕えた長戸路氏についてはわずか1行しか触れられていなかった。NHKの「ぶらタモリ」では八丈島の代官としてそこそこ紹介されていたのに。