金井美恵子『目白雑録Ⅲ』を読む

 金井美恵子『目白雑録Ⅲ』(中公文庫)を読む。朝日新聞出版のPR誌『一冊の本』に連載していたもの。はじめ朝日文庫から刊行されていたが、朝日新聞出版から刊行された「日々のあれこれ 目白雑録4」は朝日文庫にはならず、結局本書は『目白雑録3』(朝日文庫)と『日々のあれこれ 目白雑録4』(朝日新聞出版・単行本)を底本として中公文庫から刊行したもの。

 『一冊の本』の連載も突然中止になったし、朝日文庫ではなく中公文庫から刊行されるようになったのも不思議だ。推測するに、金井美恵子が朝日新聞出版の上層部を怒らせたのではないか。金井の批判はかなり辛辣で、有名な作家や評論家でも遠慮なく俎上に載せることで有名だ。高橋源一郎については、これが作家の文章かとまで言っていた。

 さて、金井美恵子の毒舌の一部を紹介する。

 雑誌『ミセス』にカルティエの高級時計の広告が載っていたことがある。そこにエッセイが載っていて、そのエッセイの作者について、

名前は忘れてしまったけれど、昔、出来る女は家事だったか料理も上手、といったような意味のタイトルのベストセラー本を出した、ライター(というのだろうか)女性で、この人の書いたマリア・フェリクス・モデルの高級腕時計(お値段は200万円クラス)の広告用エッセイは、カルティエから資料として渡されたお得意様向け雑誌で特集を組んでいたマリア・フェリクスについての記事からの短くしかも下手な要約なのだった。原稿料は、多分、同じ10万円だろうが、エージェントが付いていたりすると、もう少し高いかもしれない。林真理子ではちょっと品格の点で問題ありかもしれないし、ほんとは森瑤子がぴったりなのだけれど、まあ、いいのではないかと企画を任されている雑誌編集者は考えたのかもしれない。

 

 「出来る女は家事だったか料理も上手」というのは桐島洋子のことで、「同じ10万円」というのは金井美恵子も同じくカルティエの広告に原稿を載せていて、その時原稿料のほかにカルティエから広告費の一部として10万円支払われたからだ。まあ、私も桐島洋子はいかにも頭悪そうと思っていたのは内緒。

 また北京オリンピックに関して、

 私はもともと偏見が強くて差別的なタイプの人間なので、あの、ガサツで好戦的でガニ股の女子の柔道とかレスリングというのが大嫌いなのだが、しかし、スポーツとしてもサーカス的なショーとしても中途半端で、本当はエロが売り物としか見えないシンクロとかビーチ・バレーも大嫌いだし、マラソンにいたっては女子も男子も、そもそもあんな闘病的な努力が売りのものは他人に見せるものではないという気がする。

 

 いや、こんな毒舌家の金井美恵子が好きなのだから、私も多分同じ羽の鳥なのだろう。

 本書のカバーは金井美恵子の姉の金井久美子の絵を使っている。この絵はとても良い。色が素晴らしい。何度も見てしまうほど。