2014-10-01から1ヶ月間の記事一覧
倉橋由美子『城の中の城』(新潮文庫)を読む。30年近く前に買っていたのにやっと読んだ。すると、初めの方にこの辺の人間関係は『夢の浮橋』を読んでくれと書かれている。本書は『夢の浮橋』の続編らしい。その本も単行本で買ってあったのに、一度も読まな…
野見山曉冶『とこしえのお嬢さん』(平凡社)を読む。雑誌に連載したエッセイらしい。すべて4〜5ページの短いものだが、そんな短文でありながら深く面白いのは、まさに野見山さんの文章の「芸」なのだろう。名文家であると改めて感嘆した。 副題が「記憶の…
笹木繁男『ドキュメント 戦後美術の断面 作家の足跡から』が発行された。副題が「空爆の焦土から立ち上がった美術―大観、フジタ、龍子、梅原龍三郎から靉光、松本竣介、中村宏までの70名―」というもの。戦前から戦後にかけて活躍した日本の画家・彫刻家70名…
東京京橋のギャラリイKで竹中優香展「near equal not equal」が開かれている(11月8日まで)。竹中は1991年横浜市生まれ。2014年に多摩美術大学彫刻学科を卒業し、現在同大学大学院美術研究科彫刻専攻在学中。個展は今回が初めてになる。 本展は毎年多摩美…
福岡伸一『世界は分けても分からない』(講談社現代新書)に、「未だ実証されない思考実験にすぎないのだけれども」と言いながら、「どこかから密かに見つめられているとき、私たちはその気配をすばやく感受できる」ということについて考えている。カメラの…
地下鉄外苑前駅の改札に続く地下道を歩いているとき、眼の端に一瞬優れた抽象絵画が飛びこんできた。よく見直すと、それは壁に作られたポスターを貼るスペースで、おそらく剥がされたポスターの両面テープの汚れが作る形がそんな風に見えたのだった。その"作…
現代美術を初めて意識的に見たのは、1992年1月の神田の秋山画廊で行われた小山穂太郎展だった。あれからもう23年近くなる。朝日新聞の展評を見て行ったのだった。初めてだったから今でも強く印象に残っている。大きく伸ばしたモノクロ写真に土が塗り付けられ…
朝日新聞の別冊に『GLOBE』という隔週刊のタブロイド判がある。ここに画家堀越千秋のエッセイ「銅像の価値とは?」が掲載された(10月19日)。それを要約する。 スペインのフラメンコ歌手ラファエル・ロメーロは堀越の友人だった。彼の唄(カンテ)は日本に…
東京銀座のコバヤシ画廊で野沢二郎展「Away over the Surface」が開かれている(10月25日まで)。野沢は茨城県生まれ、1982年に筑波大学大学院を修了している。これまで「VOCA展'97」や同年の「バングラディシュ.アジア美術ビエンエーレ」に参加し、銀座の…
青山和夫『マヤ文明』(岩波新書)を読む。2年ほど前の読売新聞の書評で、杉山正明が推薦していた(2012年6月17日)。すぐ買ったのに最近ようやく読んだのだった。 青山が強く批判するように、私も「マヤ・アステカ・インカ」文明をごっちゃにして考えていた…
もう20年近く、毎週日曜日は3つの新聞を手に入れて書評を読んでいる。丸谷才一が自画自賛していたように、3大紙では毎日新聞の書評が最も優れていると思う。少し落ちて朝日新聞、その次が読売新聞の書評だ。一時、日経や東京新聞も買ってみたが、日経は経…
大岡昇平『現代小説作法』(ちくま学芸文庫)を読む。大岡昇平が、小説の書き方について、書き出し、ストオリー、プロット、主人公、描写等々のテーマを立てて書いている。その「文体について」という章がおもしろかった。 谷崎潤一郎の訳した『源氏物語』の…
東京銀座の靖山画廊で、田端麻子のいつもの不思議な絵の個展が開かれている(10月25日まで)。田端は1972年神奈川県藤沢市生まれ、1996年に多摩美術大学油画専攻を卒業している。 田端は自由人のように見える。何でも自在にやってしまっている印象がある。最…
東京京橋のギャルリー東京ユマニテで井上瑞貴展が開かれている(10月18日まで)。1992年熊本県生まれ、現在多摩美術大学美術学部油画専攻に在籍中だ。今回が初個展だという。 ひと目見て、デ・クーニングがウォーホルを描いているみたいと思った。とてもおも…
山根明弘『ねこの秘密』(文春新書)を読む。著者は北九州市自然史・歴史博物館の学芸員で、学生時代からノラネコの研究を続けてきた。動物学者が書いた猫の生態に関する(というと難しそうだが実は)易しい猫の入門書だ。猫好きならとても参考になって楽し…
宇野千代(講談社文芸文庫)を読む。標題作のほか「この白粉入れ」や「水の音」など短篇5篇が収録されている。「雨の音」は中篇といってよいと思うが、本書の半ばを占めている。自伝的要素の色濃い作品だ。主人公の作家吉野一枝が東京会館で「小母さん、」…
国広哲弥『新編 日本語誤用・慣用小辞典』(講談社現代新書)を読む。本書は以前『日本語誤用・慣用小辞典』として同じ新書で発行した正編と続編を併せたものという。全5部から構成されていて、「意味の誤用」「表現の誤用」「語形の誤り」「漢字をめぐる諸…
盆栽のツタの紅葉が見頃になっている。このツタは実生から育てて10年くらいだろうか。早春に強めの剪定をして枝数を少なくしたら、2枚の葉が大きく成長した。木全体に対して相対的に枝数が少ないと、その少ない枝に付いた少数の葉で光合成を行おうとするの…
クリストフ・コッホ/土谷尚嗣・小畑史哉 訳『意識をめぐる冒険』(岩波書店)を読む。大変刺激的な読書だった。コッホはカリフォルニア工科大学生物物理学教授でアレン脳科学研究所所長。本書は脳科学研究における意識についてかなりやさしく語っている。意…
奥村欣央編集・発行の雑誌『あぢと』2014年5号に、7月にギャラリー403で行った山本弘展の展評が掲載された。 mmpoloさんから案内状をもらい奥野ビルへ行く。曽根原さんがいた。初日は柴田和さんが来ていたよ、と聞く。山本弘という画家、こうゆう人があま…
清水勲 編『ビゴー日本素描集』(岩波文庫)を読む。先日続編を読んだので、今回正編を読んだ。ビゴーはフランス人で、明治15年に来日し、18年間の滞日中に数多くの雑誌や画集を出版した。その中に多くの素描を描いている。「東京・神戸間の鉄道」から、 前…
東京銀座のStepsギャラリーで十河雅典展「不特定秘密絵画展」が開かれている(10月18日まで)。十河は1943年、東京都生まれ。1964年に桑沢デザイン研究所に入学し、翌1965年に東京芸術大学美術学部工芸科に入学している。1969年、同大学卒業。はじめ電通に入…
東京銀座のコバヤシ画廊で西成田洋子展「記憶の領域2014」が開かれている(10月11日まで)。西成田は1953年茨城県生まれ、1987年より東京、水戸、ニューヨークなどでもう30回以上も個展を開いている。作品は大きな奇妙な立体で、古着などを縫い合わせて造形…
矢川澄子『アナイス・ニンの少女時代』(河出書房新社)を読む。矢川はアナイス・ニンの日記『ヘンリーとジューン』(杉崎和子 訳:角川文庫)を引用して、これを読んでアナイス・ニン観は180度変ってしまったと書く。アナイスは夫ヒューゴー・ガイラーがあ…
東京京橋のK392ギャラリーで「K392アートマーケットVol.1」が始まる(10月17日まで)。この企画はK'sギャラリーが主催して、作家やコレクターに呼びかけ、現代アートやあまり知られていない作家の作品、また人気作家の作品が手頃な価格で購入できることを目…
清水勲 編『続ビゴー日本素描集』(岩波文庫)を読む。ビゴーはフランス人で、明治15年に来日し、18年間の滞日中に数多くの雑誌や画集を出版した。その中に多くの素描を描いている。ビゴーの描いたものは、日本人とその生活、外国人居留民とその生活、日本と…
井上ひさし『きらめく星座』を先月紀伊国屋サザンシアターで見たが、とても良かった。昔テレビで放映した同じ芝居が録画してあったので、十数年ぶりに見直した。いまではブルーレイにダビングしてある。先日の舞台が3時間だったのに、少し省略してあるとかで…
先月、広瀬正『マイナス・ゼロ』を読んだとき、解説にタイムマシン小説ならハインラインの『時の門』だとあった。それで、ハインライン『時の門――ハインライン傑作集4』(ハヤカワ文庫SF)を読んだ。短篇集で、「時の門」ほか7篇が入っている。 「時の門」…
板橋区立美術館で『種村季弘の眼 迷宮の美術家たち』が開かれている(10月19日まで)。種村は1933年、東京池袋生まれのドイツ文学者。マニエリスムを紹介して、日本のマニエリスムブームの火付け役となったという。10年前に亡くなった種村が関わった内外の美…
中沢新一『バルセロナ、秘数3』(講談社学術文庫)を読む。本書は、1989年に雑誌『マリ・クレール』のために、取材に出かけたスペインバルセロナへの旅行記だ。しかし、あとがきに相当する「postluoi」に中沢が書いているように「風変わりな旅行記」だ。旅…