野沢二郎の緩やかな、しかし見過ごせない変化

 東京銀座のコバヤシ画廊で野沢二郎展「Away over the Surface」が開かれている(10月25日まで)。野沢は茨城県生まれ、1982年に筑波大学大学院を修了している。これまで「VOCA展'97」や同年の「バングラディシュ.アジア美術ビエンエーレ」に参加し、銀座のコバヤシ画廊では2000年以降毎年個展を開いている。さらに一昨年はDIC川村記念美術館の企画展「抽象と形態」にも選ばれた。
 野沢は塗り重ねた色面の抽象絵画を作ってきた。ときに画面に水や水面の記憶のようなものが現れることがあったが、基本的に抽象の作家だった。しかし、毎年見続けていると、野沢の画面に緩やかながら変化が生まれてきているのに気づかないわけにはゆかない。とくに今年の作品は、野沢が具象絵画に戻ったと言ってもさほど違和感を感じないかもしれない。画面に現れているのは暗い沼の水面のようなのだ。水はたゆたい深く沈んだ水面に木漏れ日を反射させている。ここには確実に奥行きが描かれている。だがもちろん野沢は写実的な具象を描いているのではない。別の作品では同じように澱んだ沼の水面が直接暗い空に繋がっているように見える。海の水平線から空に繋がっているように、沼の水面から空が始まっている。写実絵画ではありえない風景だ。もちろん写実ではないからこんな空間が可能なのだ。



 野沢はいま興味深い地点に立っているのかもしれない。即物的な抽象画面を追求してきた結果、何かそこに具象的な形態が立ち現れているかのように見えるのだ。おもしろい展開を見せている。ここからどんな風に進んでいくのだろう。
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野沢二郎展「Away over the Surface
2014年10月20日(月)〜10月25日(土)
11:30〜19:00(最終日17:00まで)
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コバヤシ画廊
東京都中央区銀座3-8-12 ヤマトビルB1F
電話03-3561-0515
http://www.gallerykobayashi.jp/