2015-03-01から1ヶ月間の記事一覧

グレアム・グリーンのエンターテインメントを読む

グレアム・グリーン全集5『拳銃売ります』と同全集11『第三の男/落ちた偶像/負けた者がみな貰う』(早川書房)を続けて読む。 グリーンは自分の小説を「本格小説」と「娯楽小説」に分けている。前者が『情事の終わり』や『権力と栄光』『事件の核心』など…

『AIの衝撃』がおもしろい

小林雅一『AIの衝撃』(講談社現代新書)がとてもおもしろい。副題が「人工知能は人類の敵か」という少々過激なもの。最近、電王将棋でプロ棋士たちがコンピューターの将棋ソフトに負け続けている。その将棋ソフトが強くなったのはたくさんのデータから機械…

ストライプハウスギャラリーで大坪美穂展「海界」-不在の場から-を見る

東京六本木のストライプハウスギャラリーで大坪美穂展「海界」-不在の場から-が開かれている(3月30日まで)。大坪は1968年に武蔵野美術大学油絵科を卒業している。今まで銀座のシロタ画廊やギャルリ・プスなど各地で個展を開いていて、韓国やインドのグル…

T&Sギャラリーで「検証・斎藤義重の現場へ」を見る

東京品川区のT&Sギャラリーで「検証・斎藤義重の現場へ」が開かれている(4月25日まで)。斎藤は1904年東京生まれ、1978年東京国立近代美術館で大規模な個展開催。ほかにも1984年東京都美術館ほか、1993年横浜美術館ほか、1999年神奈川県立近代美術館で個展…

美人とは何か

美人とは何だろう。絶世の美女が存在する。エリザベス・テイラーとかオードリー・ヘップバーンとか吉永さゆり、夏目雅子、後藤久美子、でもそのような美人ではなく、普通に身近にも美人は存在する。美人とはなんだろう。 職場にも趣味のサークルにもクラスに…

『ナイフと斧の使い方』がおもしろい

ローリー・イネステーラー『ナイフと斧の使い方』(クロスロード)を読む。これがおもしろかった。本書は「父が子に教えるフィールド技術」シリーズの1冊らしい。著者はカナダ生まれ、探検家の父と共にアラスカで少年時代を過ごすとある。1968年に来日して…

旧中川の土手の早春の花

旧中川の土手に早春の花々が咲いている。 ヒメオドリコソウ(姫踊子草)。←おおのさんの指摘で訂正しました。 ホトケノザ(仏の座)。花の中心部に見られる小さな濃い紅色は閉鎖花。開花することなく蕾のままで自花受粉して実をつける。スミレにもしばしば見…

巧い下手って何だろう

巧い下手って何だろう。朝日新聞に連載している林真理子の小説「マイストーリー」の挿絵を三溝某が描いている。その316回目の絵がこれ。 男二人が喫茶店で向かい合って「トーストをがりりと噛んだ」と書かれている文章に付けられた絵だ。トーストを持った男…

アート・フロント・ギャラリーで浅見貴子展「光合成」を見る

東京代官山のアート・フロント・ギャラリーで浅見貴子展「光合成」が開かれている(3月29日まで)。浅見は1964年埼玉県生まれ、1988年に多摩美術大学絵画科日本画専攻を卒業している。1992年に藍画廊で初個展をした後、毎年個展を開いている。またアーティ…

アラン『芸術論20講』を読む

アラン『芸術論20講』(光文社古典新訳文庫)を読む。アランの有名な『幸福論』を読んだのが高校生のときだったから、アランを読むのは50年ぶりくらいになる。こういうユマニストのエッセイにあまり興味がもてなくて、ずっとご無沙汰してきたのだが、本書の…

齊籐翔の個展「REAL|REALITY」を見る

東京千駄木のギャラリーKINGYOで齊籐翔展「REAL|REALITY」が開かれている(3月22日まで)。齊籐は1984年山梨県生まれ、2008年に武蔵野美術大学造形学部彫刻学科を卒業し、2010年に武蔵野美術大学大学院美術研究科彫刻コースを修了している。ギャラリーでの…

桑田忠親『千利休』を読む

桑田忠親『千利休』(中公新書)を読む。副題が「その生涯と芸術的業績」とある。あとがきに桑田は書く。 私は78歳の今日までに、千利休に関しては、著書も論文も、またかと思われるほどに書いたり、書かされたりしてきた。また、他人の書いたものにも残らず…

河津桜と富士桜が満開、スミレやシロバナタンポポも

東京京橋で河津桜が満開だった。 自宅のある墨田区でも富士桜が咲きほこっている。これはソメイヨシノのような交配種ではないので、サクランボが実る。その種を蒔いていま実生数年の苗が鉢植えに5つある。こちらは花はまだで、葉が開き始めている。 ベラン…

イラストレーターの腕

渓流釣りに関する本がある。しばた和 著『中仙道フライ旅 ヤマメ、イワナ宿あり 10水系70河川』(廣済堂出版、平成6年初版)というものだ。埼玉県から始まって、群馬、長野、岐阜、滋賀を流れる河川をたどってフライフィッシングのていねいな現場報告だ。わ…

山本弘のこと

友人から、お前、山本弘さんのことを語るとき、いつも他の人の評価を紹介するけど自分の意見を言わないね、と言われた。そうか、気づかなかった。 友人相手であれ、山本弘について普段話すことはない。話すのは山本の個展の時だけかもしれない。その時、おそ…

『コミさんほのぼの路線バスの旅』を読む

田中小実昌『コミさんほのぼの路線バスの旅』(日本交通公社)を読む。田中小実昌が住んでいた東京都世田谷区東玉川からバスに乗り、西へ西へと路線バスを乗り継いで、ほとんど20年かけて鹿児島まで行った記録。20年かかったのは、世田谷から小田原まで行き…

ドナルド・キーン『日本文学史 近代・現代篇一』を読む

ドナルド・キーン『日本文学史 近代・現代篇一』(中公文庫)を読む。本書は文明開化から明治の漢詩文、翻訳文学、政治小説、逍遙と四迷、硯友社、透谷とロマン派、露伴、一葉、鏡花を扱っている。キーンが英文で書いた日本文学史、つまり英米の読者を対象に…

ギャラリーαMの青野文昭展を見る

ギャラリーαMで青野文昭展が開かれている(3月14日まで)。青野は1968年仙台市生まれ。1992年に国立宮城教育大学大学院美術教育科を修了している。各地での個展のほか、愛知トリエンナーレやVOCA展など様々なグループ展に参加している。2013年には、京橋の…

村井康彦『千利休』を読む

村井康彦『千利休』(NHKブックス)を読む。これを読んだのは先週読み終わった赤瀬川原平の『千利休』(岩波新書)が、赤瀬川曰く「 この本は資料としては何の価値もない」という、その通りのものだったので口直しをしたかったからだ。村井を選んだのは、む…

笹木繁男『ドキュメント 戦後美術の断面 作家の足跡から』の正誤表

昨年10月に発行された笹木繁男『ドキュメント 戦後美術の断面 作家の足跡から』が好評でほぼ完売したという。それでいくつか誤りが見つかり、笹木が正誤表ならびに追記・補記を作成した。ここに、それを転載するので、購入された方は参考にしてほしい。 ・笹…

吉岡まさみによる画廊の展示に関するワークショップが開かれる

Steps Gallery代表の吉岡まさみは展示に関するプロだ。吉岡が展示すると、ほかの画廊や作家自身が展示した場合と全く違う。吉岡は展示のノウハウを体系化している。 その吉岡が「Workshop Week 2015」の一環として、「展示の実際」を開催する。それは、展示…

アンドーギャラリーの中沢研展を見る

東京都現代美術館で菅木志雄展を見て、つぎに近くのアンドーギャラリーで開かれている中沢研展を見た。菅はもの派の一人で、もの派の中では現在最も活発に活躍している作家だ。板やコンクリートや石を無造作とも見える形で並べて展示している。アンドーギャ…

『友川カズキ独白録』を読む

『友川カズキ独白録』(白水社)を読む。歌手の友川カズキが編集者の佐々木康陽相手にしゃべったものをまとめたもの。これがすごくおもしろかった。友川について、巻末の紹介に「歌手のほか、詩人、競輪愛好家、酒豪としても知られる」とある。 私は共感とか…

松田哲夫『縁もたけなわ』を読む

松田哲夫『縁もたけなわ』(小学館)を読む。松田はもと筑摩書房の編集者、400冊以上の本を編集し、筑摩書房の専務取締役にまでなっている。途中TBSテレビの「王様のブランチ」で本のコメンテーターを12年半務めた。 本書の副題を「ぼくが編集者人生で出会っ…

赤瀬川原平『千利休 無言の前衛』を読む

赤瀬川原平『千利休 無言の前衛』(岩波新書)を読む。赤瀬川が「あとがき」で書いている。 この本は資料としては何の価値もない。自分なりの利休を書いただけだが、それは利休の思想が現代のこの世に生きているからこそ書けたのだと思う。 赤瀬川はある時突…

トキ・アートスペースの大友一世展が良い

東京渋谷区外苑前のトキ・アートスペースで大友一世展が開かれている(3月8日まで)。これがとても良かった。大友は1982年京都府生まれ、2007年に京都嵯峨芸術大学大学院芸術専攻造形絵画修士課程を修了している。2005年に京都のギャラリーはねうさぎで初…

ゴダールの『アルファビル』を見て

表参道のイメージフォーラムでゴダール監督の映画『アルファビル』を見た。ゴダールのSFで未来社会を描いている。1965年の公開というから50年前の作品だ。未来社会といいながら、「ディストピア的未来都市・アルファヴィルを描写するに当たり、セットやミニ…

ガブリエル・オロスコ展でヘンな自動車を見た

東京都現代美術館でガブリエル・オロスコ展が開かれている(5月10日まで)。オロスコについて東京都現代美術館のホームページでは、 ガブリエル・オロスコ(1962-メキシコ生)は、1990年代前半から現在まで国際的に活躍している現代美術を代表するアーティ…

「新井狼子 没後10年展」が開かれている

東京銀座の銀座煉瓦画廊で「新井狼子 没後10年展」が開かれている(3月5日まで)。新井狼子は1920年埼玉県戸田市生まれ、1949年より抽象絵画に関心を持ち表現活動に入る。1952年前衛書道開始。1961年書のグループ蒼狼社に参加、岡部蒼風・中村忠二に師事。…

『ターバンを巻いた娘』を読んで

マルタ・モラッツォーニ/千種堅・訳『ターバンを巻いた娘』(文藝春秋)を読む。たぶん新聞の書評で評価が高かったので買ったのだろう。買ってから26年振りに初めて読んだのだった。いや、こんな風に買ってあって読んでない本が1,000冊近くある。死ぬまでに…