グレアム・グリーン全集5『拳銃売ります』と同全集11『第三の男/落ちた偶像/負けた者がみな貰う』(早川書房)を続けて読む。
グリーンは自分の小説を「本格小説」と「娯楽小説」に分けている。前者が『情事の終わり』や『権力と栄光』『事件の核心』などであり、今回読んだものはすべて後者だ。『拳銃売ります』の訳者である加島祥造が、「あとがき」で、グリーンの娯楽小説を弁護している。
彼(グリーン)のごく文学的な、シリアスの小説には強い娯楽性が、娯楽物には深い真剣さが、まざっているのが、グリーンの作品の特色なのである。
グリーンはエッセイで、娯楽小説はお金を得るために書いたと言っている。だから面白いことを第一に書いている。そこにグリーンの世界観が紛れこんでくることは当然あるだろう。しかし、それを必要以上に重視することはグリーンにとって本意ではあるまい。娯楽小説は楽しめば良いだろう。事実これらの作品は文句なく楽しめるものだ。
とくに『第三の男』はキャロル・リード監督で映画化されている。映画は傑作との折紙付きだ。グリーンは脚本を依頼されたとき、まず小説を書かなければシナリオは書けないと言って、これを書いたとある。小説を書いたあとで、監督と一緒にシナリオを書いている。小説と映画は違っている部分がいくつもある。とくにラストが小説ではハッピーエンドだったのが、映画ではあの有名なシーンで終わっている。
『負けた者がみな貰う』は丸谷才一が訳している。まとめて4つの作品を読んだが、訳者はそれぞれ別の人だった。丸谷の訳した作品の会話は癖が強くて違和感があった。
高校生の頃からグリーンが好きで、シリアスな小説はほとんど読んできた。しかし娯楽物はほんの一部しか読んでいなかった。これからでも少しずつ読んでいこう。
グリーンではやはり何と言っても『情事の終わり』が最高だと思っている。なお、グレアム・グリーンとかG. グリーンとかしつこく名前を書くのは、フランスにジュリアン・グリーンというカソリックの作家がいるからだ。昔その『プシュケ』を読んだことがあった。
・グレアム・グリーン『国境の向こう側』を読んで(2014年6月6日)
・G. グリーン『情事の終り』を読む(2014年5月15日)
・グレアム・グリーン『見えない日本の紳士たち』を読む(2013年6月1日)

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