2009-06-01から1ヶ月間の記事一覧

田中克彦「ノモンハン戦争」(岩波新書)

新聞に載っている岩波書店の今月の新刊の広告に、岩波新書で「ノモンハン戦争」というのがあった。あれってノモンハン事件じゃなかったっけ、くらいに思ったがとりたてて読みたいとは思わなかった。でも一応著者を確認したら田中克彦だった。モンゴル語が専…

自然が作ったみごとな石附盆栽

図書館の近くに小さな植物園がある。御衣黄など数種類の桜やこぢんまりした野草園、太い幹のクズやムベ、バラなど、植物の種類は雑多だけれど毎週通っているが飽きないほどだ。植物園の片隅に1メートルに満たない石が据えられている。立てられているという…

小沢信男「通り過ぎた人々」

知人に勧められた小沢信男「通り過ぎた人々」(みすず書房)を読んだ。表4(裏表紙)に印刷されているコピーから。 花田清輝に見いだされ、学生のころから新日本文学会の事務・編集に携わり、2005年の3月まで半世紀にわたって在籍した著者が、そこで出会っ…

今泉忠明「野生ネコの百科」がすばらしい

初版発行が1992年、最新版発行が2004年という今泉忠明「野生ネコの百科」(データハウス)がすばらしい。オールカラーの写真図鑑で世界の野生ネコ40種近くを詳しく紹介している。分布も生態もこれ1冊でよく分かる。 ユキヒョウの体重25〜75kg、イリオモテヤ…

村松画廊の藤澤江里子展、完成された抽象画家

京橋の村松画廊で藤澤江里子展が開かれている(27日まで)。優れた抽象表現主義だ。私は7、8年前、彼女の小品を買っている。今回の個展を見て、自分の審美眼に誤りがなかったことを確信した。抽象作品として完成度が高く、新進抽象画家として最前線を走っ…

日本の三大ママ

野見山暁治は50歳のとき博多のクラブ「みつばち」のママと再婚した。その武富京子は日本3大ママの一人だった。銀座と大坂のミナミ、そして博多の3人のママたちだ。 彼女のどこが「3大ママ」と称される所以なのか。山根基世が野見山暁治にインタビューして…

野見山暁治展@フタバ画廊

銀座1丁目のフタバ画廊が今週いっぱいで42年の歴史を閉じる。最後に画廊主が尊敬する野見山暁治展が22日の月曜日から27日の土曜日まで開かれている。画廊に合わせて小品ばかりだがさすがにすばらしい。 おそらく売りやすいようにと普段は描かないような小品…

お兄さん?

朝の通勤途中、東京駅地下通路で東南アジア国籍らしき若い娘さんから「お兄さん、成田エクスプレス?」と声をかけられた。「成田エクスプレスは……」と言うと、何か違うみたいで「大丸デパート」と言った。そこは大丸デパートのすぐ近くなので、あっちだよと…

松田正平展と祝島、原発反対

銀座5丁目にあるフォルム画廊へ松田正平展を見に行った。会場に署名用紙が置いてあり、山口県上関町の原発設計計画中止を求めるものだった。松田正平は山口県の祝島が気に入って何度も何度も滞在して絵を描いている。上関町の原発は祝島の真向かいに作られ…

山本弘の作品解説(27)「側」

山本弘「側」油彩、F20号(72.7cm×60.5cm) 1977年制作。1977年4月もしくは1978年1月の飯田市立中央公民館での個展で発表されたと思う。題名の「側」は側面のことだろう。モデルはまぎれなく愛子夫人。画面は単純で背景も塗りつぶされている。その背景の色…

志水辰夫の初期短篇集「ラストラン」

志水辰夫の初期短篇集「ラストラン」(徳間書店)を読んだが、これがつまらなかった。1988年から2000年にかけて書かれたもの。うがって言えば、つまらなくて単行本に収録されてこなかったものを徳間書店が志水辰夫を図書目録に加えたくて、あるいは次に新作…

タバコの害虫は存在するか

金井美恵子が「目白雑録3」(朝日新聞出版)で、タバコを食べる虫なんているのだろうかと書いている。 私はそもそも煙草の葉っぱというものにはニコチンという毒があるのだから、虫は食べたりしないので農薬系は必要ないのだとなんとなく思い込んでいたのだ…

名文とは何か

先日、「向日葵の咲かない夏」への不満を書いたが、このミステリが今ベストセラーになっていることを知った。そうするとファンもいるのだろう。この中に私が「会話が下手だし、そもそも年齢による会話の使い分けもできていない。」と書いたことに対して、フ…

山本弘展のDMハガキ

山本弘展のDMハガキをデザインして印刷所へ入稿してきた、作品「箱」の絵の下に書いた文章は次のとおり。 山本弘(1930ー1981)、28年前無名のまま亡くなるが、1994年針生一郎氏が絶賛して劇的な東京デビューを飾る。その後も瀬木慎一氏、ワシオトシヒコ氏の…

宮下誠さん逝去

昨日、私の昨年9月5日のエントリーにkoopopさんがコメントをくれて、宮下誠さんがこの5月に亡くなったと書かれている。知らなかった。ネットで検索するとLINDEN日記とMr.Mのブログに宮下誠さんは5月22日か23日に京都のホテルで心不全で亡くなったと書か…

山本弘自画像

これは山本弘38歳の自画像。油彩、F4。きわめて薄塗りだ。上京する私へ餞別にくれたもの。以来必ず部屋の一角に飾ってきた。 さて今日は山本弘の誕生日だ。1930年の6月15日に生まれた。同じ日に生まれた画家に平山郁夫がいる。同じ星の下に生まれて全く違…

車谷長吉の危ない身の上相談

6月13日付けの朝日新聞の「悩みのるつぼ」に「男性高校教師 40代」から身の上相談が寄せられている。回答者はエキセントリックな作家車谷長吉さんだ。 40代の高校教諭。英語を教えて25年になります。自分で言うのも何ですが、学校内で評価され、それなりの…

半藤一利の「昭和史」

半藤一利の「昭和史」シリーズが面白い。この面白さは司馬遼太郎の歴史小説の面白さと共通している。それは何か。 加藤周一が司馬遼太郎の歴史小説について、英雄史観だと批判した。英雄が歴史を作っていくという考え方。それに倣って言えば半藤一利は陰謀史…

「日米同盟の正体」から教えられたこと

「日米同盟の正体」の著者は最近まで防衛大学の教授だった人。長く外務省に勤め、外交官や国際情報局長を歴任している。吉田茂や猪木正道を高く評価している。 孫崎は日本には戦略思考が皆無だと批判する。例えば、「多くの日本人は、(1,000カイリの)シー…

自費出版図書館

昔別れて音信不通になっている友人をGoogleで検索したら、1件ヒットした。詳しく調べてみると「自費出版図書館」の蔵書索引だった。蔵書の1冊に北海道常呂高校図書館部の文集が収蔵されているらしい。昭和39年(1964年)に発行され、友人は『「走れメロス…

塩分摂取に関する娘の講義

父さん、食塩の摂りすぎが良くないことは知ってるよね。大人の男の人で1日標準が10gって言われているけれど、父さんはもう年であまり運動しないから8gを目安にしてね。父さんの朝食はトーストだけだから、お昼と夕飯の2回で8gを摂ると考えると1回4gな…

ダイエット成功

20歳のとき50kgだった体重が30年後に60kgになり、さらに徐々に増えて最近は65kgにまでなった。これって30%増だ。何度かダイエットに挑戦したが、どうも強い動機に欠けているせいか成功したことがなかった。それがこの4カ月間でみごと3kgのダイエットに成功…

つまらない抽象彫刻展

私のブログでは無名の作家(画家、彫刻家など)のつまらなかった個展には一切触れないようにしてきた。批判するのは原則有名作家、世間で評価されている作家に限った。今回その禁を破って無名作家を批判しよう。ただし作家名は匿名とする。 先日ある画廊から…

瀬戸内寂聴の小説「夏の終り」

瀬戸内寂聴の「孤高の人」がとても良かったので彼女の小説も読んでみた。「夏の終り」(新潮文庫)は1963年に女流文学賞を受賞したものだ。妻のいる男と付き合っている女性主人公は別の若い男とも逢い引きを重ねている。男の妻も彼女の存在を知っている。も…

「納棺夫日記」を読んで思うことなど

勧められて話題の青木新門「納棺夫日記」(文春文庫)を読んだ。読んでみたらなかなか面白かった。とは言え、死者・死体に真向かう仕事で恐ろしいばかりの体験もしている。一人暮らしの老人が死んで、何カ月も誰も気づかなかったことがあり、その時の納棺で…

ブログを書いてちょうど1,000日となった

私のブログmmpoloの日記が今日でちょうど1,000日となった。2006年3月14日に「小磯良平と山口長男」を書いて3年ちょっとになる。最初は誰が読んでくれているのやらと心許なく、心覚えのつもりで書いていた。それがある時、横浜逍遙亭(id:taknakayama)の中…

広島への原爆投下が事前に日本に伝わっていた

配布されたばかりの「Tokyo 古田会 News」No. 126 May, 2009 に驚くべきことが書かれている。古田武彦「学問論(第14回)」から。 昭和20年5月、京都大学の工学部冶金学科の学生水田泰次氏は恩師の西村英雄教授から「今度、アメリカで原子爆弾ができた。そ…

デパートの画廊の位置づけ

デパートの画廊担当だった方から話を聞いた。元来デパートは金持ちの客を相手にしていた。それが現在は大衆を相手に商売をするようになった。現在の客、大衆がデパートへ絵を買いに来るのは、空いている壁に掛けるための絵を買いに来る。つまりはインテリア…