山本弘の作品解説(27)「側」


 山本弘「側」油彩、F20号(72.7cm×60.5cm)
 1977年制作。1977年4月もしくは1978年1月の飯田市立中央公民館での個展で発表されたと思う。題名の「側」は側面のことだろう。モデルはまぎれなく愛子夫人。画面は単純で背景も塗りつぶされている。その背景の色調と筆触が美しい。背景の筆触で女の形を浮き立たせ、同時にそれが作品の美しさを形作っている。ジョン・ル・カレ「偽装の棺桶」の、個々のエピソードがすべてラストの伏線になっていたテレビドラマを思い出した。さて、顔と首の白も山本弘の白だ。袖を表す紺色が効いている。この紺色の形も巧いと思う。肩の左上から右下に引かれた濃い褐色の線も。

 先に紹介した「山本弘の作品解説(24)『伐木』」(id:mmpolo:20090518)に対して、

「解像度がきわめて悪いものです。」ということを考慮しても何だか山本弘の今までの作品とは感じが違いますね。

とEmmausさん(id:Emmaus)がおっしゃるので、撮り直してみた。まだ正確ではないが、前の写真よりは良いだろう。