瀬戸内寂聴の小説「夏の終り」

 瀬戸内寂聴の「孤高の人」がとても良かったので彼女の小説も読んでみた。「夏の終り」(新潮文庫)は1963年に女流文学賞を受賞したものだ。妻のいる男と付き合っている女性主人公は別の若い男とも逢い引きを重ねている。男の妻も彼女の存在を知っている。もう8年越しの付き合いなのだ。
 どうして男と女のこんなどろどろした関係を読まされなくてはならないのか。地を這うような生の関係がつづられている。読んでいて不快だった。まあ、私はアイリス・マードックも苦手だから、瀬戸内寂聴が楽しめるはずがないか。
孤高の人湯浅芳子が瀬戸内に向かって「あんたはつまらん小説書きまくって、あぶく銭かせいでるんだから」と言うのもよく分かった。でもこんな小説が女性読者(おそらく)に支持されているのだろう。何が面白くてこんな小説を読むのだろうか。
 いや男女関係を描いた小説一般が嫌いというのではない。グレアム・グリーンの「情事の終わり」も吉行淳之介も好きだったのだから。

夏の終り (新潮文庫)

夏の終り (新潮文庫)