京橋の村松画廊で藤澤江里子展が開かれている(27日まで)。優れた抽象表現主義だ。私は7、8年前、彼女の小品を買っている。今回の個展を見て、自分の審美眼に誤りがなかったことを確信した。抽象作品として完成度が高く、新進抽象画家として最前線を走っているだろう。
そう書きながら、ここ何日か微かな不満を感じてもいた。何が不満なのか。「破綻がない」という言葉が浮かんだ。破綻がないのは良いことではないか。藤澤の作品は抽象画として完成している。しかし抽象表現主義が生まれてもう40年以上になるだろうか。完成はすばらしいが、そこに安住してはいけないのではないか。そこからの展開をと考えたとき、破綻がほしいと思ったのだ。
どんな展開も既存のものから見たら破綻だろう。印象派もフォーヴィスムも、ピカソのアヴィニョンの娘たちも。赤塚祐二や中津川浩章、母袋俊也など、中堅の抽象作家たちが最近具象に回帰しているのも、単に具象が流行だからというのではなく、そのことと無関係ではないだろう。
藤澤江里子の個展はすばらしい。しかし同時に新しい展開を秘めたほつれ=破綻がほしいと思ったことも事実なのだ。
藤澤江里子展
6月22日(月)ー27日(土)11:00〜19:00(最終日〜17:00)
村松画廊 http://www.muramatsugallery.co.jp/
東京都中央区京橋3-7-4 近代ビル1階
電話03-3567-5665