「日米同盟の正体」から教えられたこと

「日米同盟の正体」の著者は最近まで防衛大学の教授だった人。長く外務省に勤め、外交官や国際情報局長を歴任している。吉田茂猪木正道を高く評価している。
 孫崎は日本には戦略思考が皆無だと批判する。例えば、「多くの日本人は、(1,000カイリの)シーレーン防衛構想によって対潜水艦哨戒機Pー3Cを保有したのは、石油を主体とする補給海路の確保のためであると理解している。だがそれは間違っている。」
 鈴木善幸総理が1,000カイリのシーレーンの防衛を宣言したとき、鈴木自身はおそらく自分の言った言葉の意味を十分に咀嚼していなかったと孫崎は書く。シーレーン防衛構想というのは、中東に石油を依存する日本の海上補給路がソ連の潜水艦攻撃に襲われる恐れがある、海上補給路を確保するために日本はPー3C対潜水艦哨戒機を大量に保有するという政策だ。この距離はオホーツク海ソ連海軍力を封じ込めるに十分だった。オホーツク海ソ連の潜水艦は核弾頭を搭載しており、米国はそれを封じなければならなかった。日本政府は理解していなかったが、シーレーン防衛構想の真の意図をソ連は十分に理解していた、それで米国の目的は達成できた。理解していなかったのは鈴木総理ばかりではなく、当時の佐久間一統合幕僚会議議長ですら米国の意図を理解できなかった。
 さらに米国は都合の悪い政治家を自由に排除してきた。吉田茂が首相を辞任したのも、細川内閣No.2だった武村官房長官が解任されたのもすべて米国の意図だった。
 これらをはじめとして、本書には驚くべき事柄が満載されている。ぜひ多くの人に読んでもらいたい。

日米同盟の正体~迷走する安全保障 (講談社現代新書)

日米同盟の正体~迷走する安全保障 (講談社現代新書)