2013-12-01から1ヶ月間の記事一覧

井上ひさし『十二人の手紙』を読んで

井上ひさし『十二人の手紙』(中公文庫)を読む。すべて手紙で書かれた13篇の短篇集。とにかく巧くて舌を巻く。12の様々な状況が手紙だけでつづられていく。みごとなものだ。 「赤い手」は25通の手紙で構成されているが、うち24通までが公的な手紙となってい…

智美術館の「現代の名碗」展を見る

菊池寛実記念 智美術館の「現代の名碗」展を見る。展覧会のちらしから、 「現代の名碗」展は、近現代の作家たちによる茶碗を通して、そこに映し出される個性、時代性を展望する試みです。川喜多半泥子(1978−1963)の茶碗をはじめ、石黒宗麿(1893−1968)、…

丸谷才一『別れの挨拶』を読む

丸谷才一『別れの挨拶』(集英社)を読む。丸谷は2011年文化勲章を受章し、翌2012年10月に亡くなった。本書は丸谷の死後集英社の編集部が編集して刊行されたエッセイ集だ。 いつもながら丸谷のエッセイは軽妙で洒脱で含蓄がありおもしろい。自己肯定が多少強…

金井美恵子エッセイコレクション2『猫、そのほかの動物』を読んで

金井美恵子エッセイコレクション2『猫、そのほかの動物』(平凡社)を読む。金井の書いてきた膨大なエッセイのなかから4つのテーマに分けて、エッセイコレクションとしてまとめたもの。本書のほかに『夜になっても遊びつづけろ』『小説を読む、ことばを書…

板橋区立美術館の「発信//板橋//2013 ギャップ・ダイナミックス」を見る

東京の板橋区立美術館の「発信//板橋//2013 ギャップ・ダイナミックス」を見る。本展は丸山芳子と丸山常生(夫妻)がコミッショナーを務め、大矢りか、金沢寿美、任田進一、中津川浩章の6名の美術家が参加して開かれた。パンフレットの冒頭に置かれた丸山芳…

鴎座公演『VIVA DEATH』を見た

渋谷駅新南口近くのEDGEというスペースで行われた鴎座公演『VIVA DEATH』を見た。イギリスの劇作家サラ・ケインの戯曲を元にした芝居=ダンス=パフォーマンス作品。演出の川口智子のテキストによれば、 「核の惨劇」をテーマとするこの作品は、初稿こそ完成…

河原宏『日本人の「戦争」』がとても良い

河原宏『日本人の「戦争」』(講談社学術文庫)がとても良い。河原は1928年生まれ、終戦のときは16歳だった。戦争末期に河原が自分自身に問いかけたことは3点、それは国家とは何か、戦争とは何か、天皇とは何か、だった。3つの問いは1つにまとめることが…

メゾンエルメスで『アイルトン・セナ〜音速の彼方へ』を見る

銀座のメゾンエルメスで、『アイルトン・セナ〜音速の彼方へ』を見る。アシフ・カパディア監督のイギリス映画で、2010年制作のドキュメンタリー。アイルトン・セナはブラジル出身のF1レーサーでワールドチャンピオンを3回も獲得したが34歳のとき、レース中…

アートプログラム青梅2013「雲をつかむ作品たち」を見る(その2)

青梅市で開かれているアートプログラム青梅2013「雲をつかむ作品たち」を見てきた(12月8日までだった)。青梅市立美術館、青梅織物工業協同組合、吉川英治記念館などで開かれている。昨日の青梅市立美術館に続いて、 青梅織物工業協同組合の展示を紹介する…

アートプログラム青梅2013「雲をつかむ作品たち」を見る(その1)

青梅市で開かれているアートプログラム青梅2013「雲をつかむ作品たち」を見てきた(12月8日までだった)。青梅市立美術館、青梅織物工業協同組合、吉川英治記念館などで開かれている。これは4つの大学の学生たちの展示「蓋はなくなった」と同時開催の企画…

『食の戦争』を読んで

鈴木宣弘『食の戦争』(文春新書)を読む。副題が「米国の罠に落ちる日本」というもの。カバーの袖の惹句から。 いま、世界で「食の戦争」が進行している−−。遺伝子組換え作物が在来作物を駆逐し、ごく少数の企業が種子の命運を一手に握る。金の論理で「食」…

ギャラリイKの吉田理沙展「虚空を旋回する」が難しい

東京京橋のギャラリイKで吉田理沙展「虚空を旋回する」が開かれている(12月24日まで)。吉田は1985年東京都生まれ、2012年多摩美術大学大学院美術研究科を修了した。2011年に銀座のギャラリー零∞(zero hachi)で初個展、2012年に京橋のギャラリイKで2回目…

山口果林『安部公房とわたし』を読む、なぜ女たちは告白するのか

山口果林『安部公房とわたし』(講談社)を読む。女優山口果林が安部公房との関係を赤裸々に語ったものだ。山口はデビュー早々にNHK朝の連続テレビドラマ『繭子ひとり』の主役に抜擢され、スターに躍り出る。しかし、その時すでに安部公房の子供を身ごもって…

柴田悦子画廊の岩坪賢展を見る

東京銀座1丁目の柴田悦子画廊で岩坪賢展が開かれている(12月21日まで)。 岩坪賢は1980年大阪府生まれ。2006年武蔵野美術大学大学院日本画コース修了。2009年にアートスペース羅針盤で初個展。これがすばらしかった。それで「第28回 損保ジャパン美術財団…

『日本建築集中講義』がすごく面白い!

藤森照信×山口晃『日本建築集中講義』(淡交社)がすごく面白い。近代建築史が専門で建築家でもある藤森照信を先生に、画家山口晃が日本の名建築について講義を受けるという本。取り上げられたのは古くは法隆寺から新しいものでは昭和初期に作られた大山崎の…

東京都写真美術館の展示を見て

東京都写真美術館で同時に行われている3つの写真展を見た。 ・「日本の新進作家 vol.12 路上から日本を変えていく」 ・植田正治とジャック・アンリ・ラルティーグ「写真で遊ぶ」 ・高谷史郎「明るい部屋」 最初に「日本の新進作家 vol.12 路上から日本を変…

ギャラリー川船で年末恒例「正札市展」が始まった

東京京橋のギャラリー川船で年末恒例の「正札市展」が始まった(12月21日まで)。画廊の壁面いっぱいに170点近くの作品が並んでいる。価格がびっくりするほど安い。さすがギャラリー川船の年末市! 気になった主な作家は、小山田二郎、長谷川利行、菅創吉、…

『田村画廊ノート』を読む

山岸信郎『田村画廊ノート あるアホの一生』(竹内精美堂)を読む。山岸は30年以上にわたって田村画廊、真木画廊、駒井画廊、田村・真木画廊などを経営していた。1991年真木画廊を真木・田村画廊に名称変更し、その画廊を2001年に閉廊、2008年11月8日に心不…

ギャラリースペースQの「10×10展」がお勧め

東京銀座7丁目のギャラリースペースQで「10×10展」が開かれている(12月14日まで)。そめや まゆみとオバタ クミ2人の銅版画展だ。展覧会のタイトル「10×10展」とは、10cm四方の小品を主体に展示していることによる。小品ということもあって、額なしのシー…

ギャラリー現の井上修策展「日常絵画」って?

東京銀座1丁目のギャラリー現で井上修策展「日常絵画」が開かれている(12月14日まで)。井上が絵を描いたのか? しかも日常絵画なんて分からないものを? 昨年の12月の個展は3万個以上のどんぐりをポリエチレン製の種苗ポットに植え込んで画廊中に張り巡…

Oギャラリーの沓澤貴子展

東京銀座1丁目のOギャラリーで沓澤貴子展が開かれている(12月15日まで)。沓澤貴子は1971年静岡生まれ。武蔵野美術大学大学院美術専攻油絵コースを1998年に修了している。2001年にガレリアラセンで初個展を開き、その後Oギャラリー、かわさきIBM市民文化ギ…

日本では美術批評のクライテリアがない

以前私が書いた岡本太郎に関するエントリーのコメント欄で、「批判の仕方が薄っぺらい。人の意見ばかり借りていないでもう少し自分の主張の根拠を書くべきではないか」と、批判された。岡本太郎のどこが悪いのか根拠を示せと。それが難しい。良いか悪いかは…

制作の背後にはシステムがある

以前、セゾンアートプログラム主催の講演会での美術評論家の峯村敏明さんの発言「制作の背後にはシステムがある」という言葉について、「美術のシステムとは何か」(2008年5月14日)というエントリーを書いた。 ガルリSOLで個展をしている秋山一郎さんと話…

韓国の現代美術を見たい

ギャラリーQから案内をもらって、四谷の韓国文化院へ「チャレンジ・アート・イン・ジャパン2013」を見に行った。副題が「韓国人留学生による現代アート展」。ペッパーズ・ギャラリーで個展を見たパク・ナヒョンや、アートスペース羅針盤で個展を見た兪京辰(…

東京ステーションギャラリーで「生誕100年! 植田正治のつくりかた」を見る

東京ステーションギャラリーで写真展「生誕100年! 植田正治のつくりかた」を見る。植田正治は1913年に生まれて、2000年に亡くなっている。それで今年が生誕100年になる。植田は鳥取の砂丘を舞台に、子どもたちや男女の演出された写真を撮っていた。変わった…

伊集院静『いねむり先生』を読む

伊集院静『いねむり先生』(集英社)を読む。先日テレビ朝日でドラマ化されたものを録画しておいて見た。いねむり先生こと阿佐田哲也、別名色川武大と作家の伊集院静の交流の物語。ドラマを見たあと、原作ではどのように描かれていたかとこれを読んだ。 本書…

ギャラリーテムズの及川伸一展「succession」

東京小金井市のギャラリーテムズで及川伸一展「succession」が開かれている(12月8日まで)。及川は1949年東京生まれ。1980年から1992年まで独立美術に出品していたが、1992年からは個展を主な発表の場所としている。これまでギャラリー汲美、ギャラリーテ…

ギャラリートモスの梅田恭子展『霧と、』を見る

東京日本橋本町のギャラリートモスで梅田恭子展『霧と、』が開かれている(12月13日まで)。梅田は東京都生まれ、1994 年 多摩美術大学美術学部デザイン科グラフィックデザイン専攻を卒業、1996 年 同大学大学院 美術研究科デザイン専攻を修了している。1994…

僕の後ろに道は出来る

高村光太郎の有名な詩「道 程」 僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る ああ、自然よ 父よ 僕を一人立ちにさせた広大な父よ 僕から目を離さないで守る事をせよ 常に父の気魄を僕に充たせよ この遠い道程のため この遠い道程のため

ギャラリイKの本田花菜展「Lycorias」が妖しい

東京京橋のギャラリイKで本田花菜展「Lycorias」が開かれている(12月7日まで)。本展は多摩美術大学大学院彫刻専攻生選抜展と銘打たれている。本田は1988年東京生まれ、2012年に多摩美術大学彫刻学科を卒業し、現在同大学院彫刻専攻に在籍中だ。本展が初個…