ギャラリーQから案内をもらって、四谷の韓国文化院へ「チャレンジ・アート・イン・ジャパン2013」を見に行った。副題が「韓国人留学生による現代アート展」。ペッパーズ・ギャラリーで個展を見たパク・ナヒョンや、アートスペース羅針盤で個展を見た兪京辰(ユ・キョンジン)、ステップス・ギャラリーで個展を見て強く印象に残った姜善英(カン・ソンヨン)などが出品されていた。
ロビーに展示されていたグループ展を見て帰りかけたとき、玄関を入ってすぐの壁面に大きな作品が設置されているのに気付いた。一見してミニマル・アートの傑作だと分かった。作品の横に貼られているプレートを読むと、「接合 79-21 NO.3, NO.7, NO.2」と題されており、作家は河鐘賢(ハ・ジョンヒョン)とあった。作品は1979年制作、サイズは220cm × 120cmのものが3枚並べられている。技法について、「麻のキャンバスの後ろから前に顔料を押し出す技法」と説明されていた。キャンバスの織り目の間から顔料が滲み出ている。聞いたことのない作家名だった。
(上記作品の部分)
その河鐘賢をネットで検索すると、サムソン美術館リウムのページに作家の略歴が載っていた。
河鐘賢は、1960年代のアンフォルメルから始まり、インスタレーション、コンセプチュアル・アート(概念美術)の実験期を経て、1970年のモノクロム絵画に至るまで、韓国現代美術の中心で活躍した画家である。特に1970年代半ばから今日まで続いている<接合>シリーズを通して、モダニズム絵画の物質性と絵画表面への絶え間ない探求、そして韓国的感性の追求への努力を続けている。
やはり優れた作家の作品だった。ギャラリーQの上田さんに話を聞くと、この作品は時価1億円するという。また韓国には現代美術の優れた作家が大勢いるという。以前、日本に紹介されることもあったが、日本の美術館の学芸員も、日本人の美術愛好家も欧米一辺倒で韓国の作家には見向きもしなかった。美術館の入場者数もきわめて少なかった。それで韓国の作家たちも日本で発表する興味をなくして、欧米で発表することを重視するようになった。
こんなすばらしい作品が隣の韓国にあるなんて、それを見る機会がないなんてとても残念なことだ。冬ソナを見ても、文化交流が隣国との相互理解に大変重要なことは自明のことだろう。振り返れば、私も侯 孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の映画『悲情城市』を見て、それまで全く関心がなかった台湾がいっぺんに好きになった経験がある。
どこぞの公立美術館が、韓国現代美術展を企画してくれることを切に願う。