ギャラリー川船の山本麻世展「川底でひるね」を見る

 今日から「画廊からの発言−新世代への視点2017」が始まった(8月5日まで)。ギャラリー川船では山本麻世を取り上げている。山本は1980年東京都生まれ、2005年に多摩美術大学大学院美術研究科工芸専攻陶コース博士前期課程を修了している。ついで2008年にオランダアムステルダムの美術学校の陶芸学科を卒業し、2009年にはアムステルダムの別の美術学校のファインアート学科を中退している。その後オランダと韓国に滞在して制作し、内外のアートフェアに参加しているが、多く野外展示とのこと。ギャラリーでの個展は今回が初めてらしい。
 まずメイン展示は赤白の工事用テープと針金で編んだ大きな立体作品。バックの額に入った絵画はギャラリー川船が所蔵する近代絵画。山本はふだん屋外で展示していたが、とくに環境を生かして制作展示してきた。ギャラリーでの今回の展示も、純粋なホワイトキューブではなく、画廊に展示されている絵画をある種の環境とみなして制作した。蛇のような造形が画廊の壁面を覆っている。




 また画廊で使われている釘に絵を吊り下げるための白い紐を編んだ作品。地方のお店でも入手できる安価な床材で制作した作品。額の装飾の隙間に女性の髪留めを挟み込んだ作品など、ほかでは見たことがない作品を並べている。




 山本は多摩美でもオランダの最初の美大でも陶の作品を作っていたらしい。その後ファインアートを学び直したのだろうか。そのように一筋に学んできたのではなく、最初に陶を徹底的に学んだのちファインアートに転じたことが山本の制作に豊かな結果をもたらしているように思う。
 変わったタイトル「川底でひるね」について山本は書く。

このギャラリーはかつて川だったかもしれない。
たぶん違うのだろうけど。
江戸時代、ギャラリーの裏にある高速道路の下は皇居の堀から墨田川をつなぐ人工の川だった。
もし、この場所もかつては川だったとしたら、今私たちがいる場所は人口の石垣に囲まれた川底だ。(後略)

 久しぶりに面白い展示を見た気がする。柱に巻かれた白い紐の作品の向こうに写っている女性が作家の山本麻世。
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山本麻世展「川底でひるね」
2017年7月24日(月)―8月5日(土)
11:00−19:00、日曜・祝日休廊
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ギャラリー川船
東京都中央区京橋3-3-4 フジビルB1F
電話03-3245-8600
http://www.kawafune.jp/