東京ステーションギャラリーで「生誕100年! 植田正治のつくりかた」を見る


 東京ステーションギャラリーで写真展「生誕100年! 植田正治のつくりかた」を見る。植田正治は1913年に生まれて、2000年に亡くなっている。それで今年が生誕100年になる。植田は鳥取砂丘を舞台に、子どもたちや男女の演出された写真を撮っていた。変わった写真で、不思議なポーズをした人物たちが写っている。
 私は写真を取り始めた40年前、70年代の半ばころ、雑誌『カメラ毎日』や『アサヒカメラ』で植田の写真をしばしば見ていた。不思議なポーズの写真は強く印象に残り、写真家の名前とともによく憶えている。

 今回東京ステーションギャラリーで写真展「生誕100年! 植田正治のつくりかた」を見た。植田を初めて体系的に見る機会を得た。だが、久しぶりに見る植田は、ほとんど既視の写真という印象だった。最初に見たときは不思議なポーズだったが、40年ぶりに見直したとき、それらの写真はすでに古びていた。吉行淳之介の言葉を思いだす。作品は風俗から古びていく。吉行はそれを父の吉行エイスケの表現について言ったのだった。エイスケは新興芸術派に属していて当時花形の作家だった。しかし戦前エイスケが活躍したころ新しかった表現は、戦後すでに古びてしまっていた。その反省から吉行淳之介は、自分の小説の表現で風俗的なものに手を入れ続ける。軍隊から戻った男の着ている服は、復員服からカーキ色の上着と改められる。
 植田正治の写真もすでに古びていた。中途半端なポーズ=中途半端な演出の写真は、写真の特性である時代を記録することもない。ある時代のある種のモダニズムのかけらを無惨に引きずっているばかりだ。
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生誕100年! 植田正治のつくりかた
2013年10月12日(土)−2014年1月5日(日)
10:00−18:00(1/3を除く金曜日は20:00まで)
月曜日休館(祝日の場合は開館、翌火曜日休館)、12/29−1/1休館
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東京ステーションギャラリー
東京都千代田区丸の内1-9-1
電話03-3212-2485
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/