文化
太平洋戦争研究会『写真が語る敗戦と占領』(ちくま新書)を読む。太平洋戦争研究会は近現代史に関する取材・執筆・編集するグループで、代表は近現代フォトライブラリー主宰の平塚柾緒。ちくま新書からも『写真が語る銃後の暮らし』『写真が語る満州国』を…
木村哲也『宮本常一』(岩波新書)を読む。民俗学者宮本常一の評伝。宮本は『忘れられた日本人』という優れた書の著者であり、「土佐源氏」でも有名だ。宮本は渋沢敬三の教えを受け、渋沢のアチック・ミュージアムの所員をしていた。そして渋沢の「大事なこ…
橋爪大三郎・植木雅俊『ほんとうの法華経』(ちくま文庫)を読む。法華経は最高の経典だという、と「まえがき」で橋爪大三郎が述べている。最澄の天台宗がそう教え、法然の浄土宗も、親鸞の浄土真宗も、日蓮の日蓮宗も天台宗から分かれたものだ。道元も晩年…
H.G.ウェルズ『タイム・マシン』(岩波文庫)を読む。古典的なSFで、私も昔ほぼ60年前に読んでいる。今回読み直したのは今はやりのAIの先取りではないかと考えたからだ。(ネタバレあり)。 『タイム・マシン』は130年前に発表されたが、時間を旅行するとい…
今年も初詣は吾嬬神社と亀戸石井神社に行ってきた。吾嬬神社は墨田区、亀戸石井神社は江東区だけど、おそらく500メートルほどしか離れていない。どちらも縄文時代にさかのぼると思われる関東有数の古い神社だ。亀戸石井神社は先の戦争の東京大空襲で焼き払わ…
米原万里『マイナス50℃の世界』(角川ソフィア文庫)を読む。米原万里が1984~1985年にTBS取材班の一員(通訳)として、当時ソ連のヤクート自治共和国(現サハ共和国)を、200年も前にシベリアに漂着した日本人たちの足跡をたどって横断した記録。 サハ共和…
伊沢正名『うんこになって考える』(農文協=農村漁村文化協会)を読む。副題が「いのちを還す野糞と土葬の実践哲学」で、伊沢自身の野糞の実践と、死んだあとは土葬で葬られることを希望している書。 伊沢正名はきのこの写真家として第一人者だった。さらに…
「国体」とは何かとchatGPTに聞いた 昭和天皇が終戦受諾の際に強くこだわった「国体(こくたい)」とは、 **「天皇を中心とした国家秩序・統治の根本原理」**のことです。 しかし、ここで重要なのは、昭和天皇が言う「国体」は、 「軍国主義」や「神がかった…
原武史、菅孝行、磯前順一、島薗進、大澤真幸、片山杜秀『これからの天皇制』(春秋社)を読む。本書は法華コモンズ仏教学林が主催した特別講座の内容を書籍化したもの。 原武史は大正天皇や昭和天皇、皇后を論じた著書がある政治思想史学者だ。 菅孝行は過…
網野善彦・吉本隆明・川村湊『歴史としての天皇制』(作品社)を読む。最初にそのタイトルの3人の鼎談があり、ついで網野善彦と川村湊の対談「列島と半島の社会史」が収録されている。分量としては後者の対談がほぼ2/3を占める。 吉本隆明が加わった鼎談で…
池谷裕二『すごい科学論文』(新潮社新書)を読む。池谷裕二が世界的学術雑誌に掲載された最新の科学論文から面白い論文を選んでそのエッセンスを紹介している。 老化は徐々に進むのではなく、老化が突如進む加速期とそれほどは進まない停止期が交互に訪れる…
梯久美子『昭和の遺書』(中公文庫)を読む。芥川龍之介から始まり、2・26事件の首謀者磯部浅一、北一輝、太宰治、山本五十六、三島由紀夫、美空ひばりなど、50人以上の遺書を集めている。 2.26事件の首謀者・磯部浅一の遺書 悪臣どもの上奏した事をそのまゝ…
山本七平『一下級将校の見た帝国陸軍』(文春文庫)を読む。山本七平はイザヤ・ベンダサンの名前で『日本人とユダヤ人』を書いた人。青山学院高等商業学部を卒業し、そのため陸軍の幹部候補生として入隊する。下級将校である。 昭和19年6月、輸送船でフィリ…
神崎宣武『旅する神々』(角川選書)を読む。神崎は民俗学者で岡山県宇佐八幡神社宮司。本書では大国主、山幸彦、吉備津彦、倭姫命、倭建命の旅を取り上げている。 神話をやさしく嚙み砕いて紹介している。しかし、いずれも面白くなかった。一般に神話は荒唐…
沼野充義『ロシア文学を学びにアメリカへ?』(中公文庫)を読む。以前『屋根の上のバイリンガル』というタイトルで白水uブックスから出ていたもの。当時から気になっていた。沼野はロシア文学やポーランド文学の専門家。沼野の訳したスタニスワフ・レムなど…
養老孟司・池田清彦・奥本大三郎『虫捕る子だけが生き残る』(小学館101新書)を読む。養老は解剖学者、池田は生物学者、奥本はフランス文学者、いずれも専門は違うが3人とも昆虫採集がプロ並みの「虫好き」の人たち。特に大きなテーマは設けないで昆虫採集…
関川夏央『昭和時代回想』(中公文庫)を読む。副題が「私説昭和史3」で、これが面白かった。 「平凡パンチ」創刊号は1964年4月だったと関川は書く。 5人の青年がそこにいる。5人のうち4人は立っている。残ったひとりは左ハンドルのスポーツカーに乗って…
青柳いづみこ『青柳瑞穂の生涯』(新潮社)を読む。青柳いづみこはピアニスト、瑞穂はその祖父でフランス文学者。瑞穂はフランス文学の翻訳のほかに骨董にも詳しく、古物商から買い求めた掛け軸が光琳の作で、後日それは国の重要美術品に認定された。乾山の…
司馬遼太郎・井上ひさし『国家・宗教・日本人』(講談社文庫)を読む。二人の4回の対談を収録している。 二人の対談がとても面白い。「よい日本語、悪い日本語」から、 司馬遼太郎 政治家の言葉がいかに世の中の言語に大きく影響するかというと、たとえば最…
読売新聞書評欄に「HOTライン倶楽部 どっち派?」というのがある。2つを比べて読者が投稿するものだ。今回は「大阪」と「東京」(2025年5月25日付け)。 それを読んで、司馬遼太郎のエッセイ「上方についての小さな憂噴」を思い出した。 東京で小さな貿易…
糸のような細い道が家々をつなぎ、畑に通じている 45度の急な斜面を耕す 塚原琢哉『遥かなる遠山郷』(信濃毎日新聞社)を読む(見る)。副題が「60年前の記憶」とある。これは出版時(2017年)の60年前、1958年に写真家塚原琢哉が長野県飯田市(当時は上町…
和田秀樹・池田清彦『オスの本懐』(新潮新書)を読む。高齢者専門の精神科医和田秀樹とユニークな生物学者池田清彦の対談。池田清彦は地球温暖化はデマだ等と過激な主張を繰り返している生物学者で、ダーウィンの進化論も批判している。 結構売れている本の…
司馬遼太郎『歴史と風土』(文春文庫)を読む。『司馬遼太郎全集』の月報のために語り下ろしたものと、『文藝春秋』に連載した談話を編集している。いずれも司馬が語ったもの。 司馬のエッセイも語りもピカイチだと思う。こんな内容なら何冊でも読みたい。面…
暉峻淑子『サンタクロースを探し求めて』(岩波現代文庫)を読む。暉峻は経済学者。昔カミさんの本棚に宇野弘蔵の『経済学原論』(岩波全書)があり、どうして宇野経済学の本があるのだろうと思ったことがあった。大学の授業で使ったからと言われた。カミさ…
里見龍樹『入門講義 現代人類学の冒険』(平凡社新書)を読む。題名通り現代人類学について7日間の講義を綴っている。大学1~2年生向けだと言うがこれが面白かった。 里見は20世紀末の人類学に新しい変化が生じたと言う。里見自身はソロモン諸島のマライタ…
椎根和『銀座Hanako物語』(紀伊國屋書店)を読む。雑誌『Hanako」は1988年に女性向け週刊誌としてマガジンハウスから創刊された。ちょうどバブル経済の真っただ中で、翌年には誌名そのものが,新語・流行語大賞の新語部門銀賞を受賞した。選考理由は、「ハ…
田中優子・松岡正剛『昭和問答』(岩波新書)を読む。江戸文化の専門家田中優子と著名編集者の松岡正剛の昭和をテーマにした対談書。実は本書の前に同じ岩波新書から二人で『日本問答』と『江戸問答』を出版している。そのことは知らなかった。 本書は6つの…
河合隼雄『対談集 あなたが子どもだったころ[完全版]』(中公文庫)を読む。河合隼雄が16人の作家などと対談し、彼らの幼少期の頃のことを話している。鶴見俊輔、谷川俊太郎、武満徹、井上ひさし、大庭みな子、筒井康隆、佐渡裕、安藤忠雄など。 元々2冊…
DICは27日、保有・運営するDIC川村記念美術館(千葉県佐倉市)の運営を見直すと発表した。東京に移転するか運営を中止するかを検討する。年内に結論を出し、2025年1月下旬に休館する。資産効率の観点から運営方法の見直しが必要だと判断した。(日本経済新聞…
末木文美士『日本思想史』(岩波新書)を読む。カバー袖の惹句に、 古代から今にいたるまで、日本人はそれぞれの課題に取り組み、生き方を模索してきた。その軌跡と膨大な集積が日本の思想史をかたちづくっているのだ。〈王権〉と〈神仏〉を二極とする構造と…