ジャレド・ダイアモンド『若い読者のための第三のチンパンジー』(草思社文庫)を読む。副題が「人間という動物の進化と未来」。人間の近縁種はチンパンジー(コモンチンパンジー)とボノボ(ピグミーチンパンジー)であり、人間は第三のチンパンジーだという。チンパンジーと人間の遺伝子の差はわずかに1.6%にしか過ぎない。
わずかな違いしかない類人猿と人間がなぜこんなにも違っているのか。人間は文化を持ち、科学を発展させ、大きな文明を築いた。世界中にちらばり、世界を席巻した。広がった先で動植物に大きな影響を与え、しばしばそれらを絶滅させている。
一方人間自身もジェノサイド(大量虐殺)を行っている。ヒトラーのユダヤ人絶滅が有名だが、オーストラリアの南東に位置するタスマニアの住民も入植してきた白人に絶滅させられた。アフリカのツチ族とフツ族の殺戮も記憶に残る。カンボジアのクメール・ルージュも国民を虐殺した。
ジェノサイドは実は人間の本性ではないのか。仲間以外を敵視する人間が大量殺りく兵器を手に入れたとき、ジェノサイドは特殊なことではないのではないか。
環境破壊と種の絶滅を繰り返す人間、しかも仲間への攻撃=ジェノサイドもその本質とする人間に明るい未来があるのだろうか。
本書を読んで人間の将来に絶望してしまった。こんな人間など滅んでも仕方ない存在ではないのか。
そう言いながら、大変優れた本を読んだと充実した時間だった。