マホ クボタ ギャラリーの播磨みどり展を見る

 東京神宮前のマホ クボタ ギャラリーで播磨みどり展「場と印刷」が開かれている(12月23日まで)。播磨みどりは1976年神奈川県生まれ、2000年に女子美術大学芸術学部絵画科版画コースを卒業、2000年にギャラリー銀座フォレストで初個展、その後300日画廊、ギャラリーT.L.A.P.やギャラリーJINで個展を続け、2001年にサンフランシスコに移住、2005年から2017年までニューヨークに滞在した。マホ クボタ ギャラリーでは2017年に続いて2回目となる。

 ギャラリーのホームページから、

印刷メディアの物質性とその暗喩を通じて世界を再解釈し、制作を行う播磨みどりは、2022年に藤沢市アートスペースで「裏側からの越境」と、2023年にニューヨークのThe Shirley Fiterman Art Centerで「This is A Mirror」という2つの連続した個展を開催しています。2つの展覧会は、2001年より16年に渡って居住し制作してきたアメリカからの帰国直後、香港でのアーティストレジデンス滞在を経て神奈川県の湘南にスタジオを構えた播磨の、集大成的な位置付けにある展示であったとともに、今後アーティストが目指してゆく実践の序章を予感させるダイナミックな展開でもありました。

2つの個展とさほど時を隔てることなく計画されたMaho Kubota Galleryでの本展「場と印刷」(英タイトル:Prints/Place)は、近年の播磨の探求をさらに一歩進めた内容となる予定です。本展の中心となるのはプロジェクターで投影される映像作品です。特定性をもたない風景のイメージをシルクスクリーンで刷り、そのプロセスを逆再生することでイメージが繰り返し現れては消えてゆきます。この作品を補完するように8mmカメラで撮影された映像作品がモニターで再生され、ライトボックスの作品が展示されます。ギャラリーの空間は緩やかに繋がり、全体として展覧会は「印刷メディア」を主軸に、インスタレーションの形態をとるように設計される予定です。

播磨の言葉によると「それ自体が独自の時空間でもある」印刷物は、その上に物理的に提供された2次元上の時空間によって日々私たちに世界を追体験させています。2次元に展開される世界のあり方を捉えるには過去の経験やリテラシーが必要であり、限られた情報ではおおよそ再現できるはずもない世界を私たちは自らの記憶や残像で補うかのように無意識に解釈しているとも言えるでしょう。未曾有の情報社会の中で毎日膨大なイメージを消費してゆく中、私たちは世界を見ているようで実は私たちが世界と捉えているフィクション上に自分自身を投影しているに過ぎないのかもしれません。印刷という仕組みを手掛かりとして自らの実体や同一性を追い求める時、どのように世界の解釈やアウトプットを扱ってゆくのか。本展を通じて播磨みどりが提示する命題の行方を私たちも目撃することとなるでしょう。

 



 播磨の住む藤沢の公園に写真が写っているライトボックスを置き、それを撮影したり、ポーランドベラルーシを跨いだヨーロッパ最後の原生林でビャウォヴィエジャの森を撮影した写真を柱状に展示した作品、そして風景写真をシルクスクリーンで印刷する作業を逆回転で上映している。

 播磨は300日画廊などで展示をしていて、今はないその300日画廊のアーカイブにその思い出を寄せている。なお、佐藤さんというのは、300日画廊を主宰していた佐藤洋一氏のこと(懐かしい!)。

 

・300日画廊と佐藤さんのこと

https://300days.jp/about/05.php

 

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播磨みどり展「場と印刷」

2023年11月24日(金)―12月23日(土)

12:00-19:00(日曜・月曜・祝日休廊)

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マホ クボタ ギャラリー

東京都渋谷区神宮前2-4-7

電話03-6434-7716

https://www.mahokubota.com/ja/